第四章 マーケット・マーチャンダイジング戦略
一、現在の商品情報では、真の顧客ニーズは捉えられない
現在のチェーンストア、コンビニエンス・チェーンでの商品情報は、自チェーン・自店での範囲内顧客(来店客)から収集し、単品管理、すなわち、部門別単品ABC分析を行い、Aランク商品は売れ筋商品、Bランク商品は死に筋に近い商品、Cランク商品は死に筋商品としている。Bランクにしろ、Cランクにしろ導入日が浅い商品については、売れ筋予備軍として捉えている。
システム上、Cランク商品については、本部バイヤーが残して欲しい商品(商品を導入してから日が浅い)のみシステム担当に申請して残してもらい、後の商品は、自動的にカットされる仕組みになっている。
それは、本来であれば、バイヤーがCランクの続いた商品について、一つ一つ吟味し、カットする商品の対象を判断しなければならないところを、バイヤーの「手間」を省くためだけに二、三ヶ月間Cランクの続いた商品をカット対象として、無条件に、かつ、「自動的」にカットしてしまい、扱い商品を減らしてきたのである。
さらに、バイヤーの判断(顧客ニーズにあった商品)だけで、売れると思った商品が選定され、あるいは、開発して商品が投入されるのである。結果的に売れる商品(Aランク)はたったの1割程度ではあるが、それでも、今までは何とか利益を出すことができた。
しかし、現在の消費不況では、顧客自身、必要最低限の商品、必要量だけに絞って商品を購入しているため、店舗内には在庫が多い。しかも、ほとんどが不良在庫になってしまう。
前に記述した内容からも伺えるように、小売業にとって、基本的な問題点がいくつも内在している。
① バイヤーの手間を省くことが、商品選定上の慎重さを欠いていたのではないか
(省力化優先で、手間をかけなければいけないことまで省力化していたのではないか)
② バイヤーの判断(少ない情報源)だけで、顧客ニーズ商品として良いのか
(商品知識優先、思い入れ商品が優先され、本当に顧客ニーズ商品だったのか)
③ 顧客ニーズの収集に偏りがなかったのか
(来店客のみの単品ABC分析で、商圏ニーズが把握できたのか)
④ 店舗内の在庫過多による利益の圧迫
(新商品の導入抑制と補充・追加発注抑制によるメーカー経営の圧迫)
⑤ 店舗内の不良在庫の処分方法
(値下げしても売れない、不良在庫による他商品への影響)
等が挙げられる。
それでも、以前は、店舗内の改善、あるいは、本部内の改善だけで、何とか利益を圧迫せずに吸収してきたが、現在の経済環境、消費不況下では、いかんともしがたい。抜本的、根本的に、「改革」を行わないと、小売業だけでなく製造業も、ほとんどの企業は自然淘汰されてしまう。
では、何から「改革」していかなければならないのか。焦点は一つ。いかに「死に筋」をなくすかと言うことである。その上流工程は、「売れるであろう商品」ではなく「売れる商品選択であり、売れる商品作り」しかない。
そして、どちらも、商圏内の顧客ニーズを的確に捉え、それに対応した商品をいち早く店頭化(陳列し、訴求)して、販売する仕組みを構築しないと、変化に追従できない。
今までのマーチャンダイジング・サイクルでは、「顧客ニーズを捉える」時に優先されていた情報がPOS分析データ(図表4 ─ 11参照)である。
これは、あくまでもお買上客の情報であり、導入した商品が来店客のニーズに対応しているかどうかの検証用の分析であって、商圏、あるいは、見込客(マーケット)のニーズではない。このことに、チェーンストア側は、気付くのが遅過ぎたし、また、過大な期待をかけ過ぎていた。
お買上客のデータだけで単品ABC分析を続けて行くと、売れ筋商品がだんだん限定(縮小)されてくる。また、同時にニーズの変化によって、売れ筋だった商品も死に筋商品となってしまうこともあり、限られた情報の元での分析では、死に筋商品を増やしてしまう結果になりかねない。
もしかしたら、その中の商品に、見込み客や商圏内顧客のニーズ商品が含まれていた可能性が多分にあり、浮動客を集客できない(何も魅力のない)店舗では、チャンスロスが発生することになる。
商圏、あるいは、見込客(マーケット)のニーズを把握する上では、単品ABC分析のデータは「属性」(素材、色、サイズ、デザイン、量、価格、添加物、機能等)を指すが、これらの「属性」を分析すると言うことは、お買上客の傾向の把握や、商圏、あるいは、見込客(マーケット)のニーズを想定するに過ぎない。
従来は、マーケット・ニーズを把握する役目をメーカー、あるいは、仕入先にお願いしていた(情報の提供)。しかし、これも、自社や自社扱い商品の情報と他チェーンでの動向が中心で、商品情報による売り込み(自社都合が優先)と言ったようなものであり、とてもとてもニーズ情報とは言い難い、偏った情報であった。
たとえば、自社で抱えている在庫品の処分(安く)をすすめたり、他チェーンで売れているのか、いないのか調べもしないで、さも売れているように商談したり、理論武装(素材、機能、ターゲット、流行等)なしに良い商品だからと言って押し込んでみたり、やり方は、いろいろあるが、「情」=ウェットの商売が中心であった。
これからの、営業は、「理」=ドライの商売に変革して行く必要がある。すなわち、データに基き、顧客ニーズ(環境問題等含む)をどう捉え、捉えたニーズをどのように「商品に反映」するのか、その商品の効果等は、どの程度保証できるのか、鮮度維持、使用上における注意点はあるのか、商品の差別化なり価値は何なのか、等を理論的に説明する必要がある。
一方、小売業は、顧客ニーズを的確に捉えるために、正確な情報(現状・先取り)を提供してくれる情報源、すなわち、「仕入先で言えば、営業情報ではなく開発情報の入手」等の整備(多い程良い)とその情報の真贋を見極める機能・判断を持つ必要がある。
判断した結果、開発・導入した場合の販売責任は、当然ながら小売業が全責任(リスク)を負い、製造責任はメーカーが負うことで、各々の責任範囲を明確にする。
そう決めても、売れ残った商品は返品できる。あるいは、返品しても良いという条件は、過渡期には残ってしまうかもしれないが、絶対に無くしていかなければならない。
コンビニのPOSデータを分析してみると、スーパーマーケットの売れ筋商品が如何に偏っているかがわかる、すなわち、コンビニの客層別データの女性の大人(主婦層)とスーパーマーケットの売上データが全く似通っていることが判明した、これは、何を意味するかと言うとスーパーマーケットのデータは、顧客データではなく購買者(主婦層)中心のデータであり、顧客全体のニーズではない。(スーパーマーケットのデータは、価格弾性…低価格や特売商品やタイムセール、訳あり商品等数量が大幅に変化する)
一、現在の商品情報では、真の顧客ニーズは捉えられない
現在のチェーンストア、コンビニエンス・チェーンでの商品情報は、自チェーン・自店での範囲内顧客(来店客)から収集し、単品管理、すなわち、部門別単品ABC分析を行い、Aランク商品は売れ筋商品、Bランク商品は死に筋に近い商品、Cランク商品は死に筋商品としている。Bランクにしろ、Cランクにしろ導入日が浅い商品については、売れ筋予備軍として捉えている。
システム上、Cランク商品については、本部バイヤーが残して欲しい商品(商品を導入してから日が浅い)のみシステム担当に申請して残してもらい、後の商品は、自動的にカットされる仕組みになっている。
それは、本来であれば、バイヤーがCランクの続いた商品について、一つ一つ吟味し、カットする商品の対象を判断しなければならないところを、バイヤーの「手間」を省くためだけに二、三ヶ月間Cランクの続いた商品をカット対象として、無条件に、かつ、「自動的」にカットしてしまい、扱い商品を減らしてきたのである。
さらに、バイヤーの判断(顧客ニーズにあった商品)だけで、売れると思った商品が選定され、あるいは、開発して商品が投入されるのである。結果的に売れる商品(Aランク)はたったの1割程度ではあるが、それでも、今までは何とか利益を出すことができた。
しかし、現在の消費不況では、顧客自身、必要最低限の商品、必要量だけに絞って商品を購入しているため、店舗内には在庫が多い。しかも、ほとんどが不良在庫になってしまう。
前に記述した内容からも伺えるように、小売業にとって、基本的な問題点がいくつも内在している。
① バイヤーの手間を省くことが、商品選定上の慎重さを欠いていたのではないか
(省力化優先で、手間をかけなければいけないことまで省力化していたのではないか)
② バイヤーの判断(少ない情報源)だけで、顧客ニーズ商品として良いのか
(商品知識優先、思い入れ商品が優先され、本当に顧客ニーズ商品だったのか)
③ 顧客ニーズの収集に偏りがなかったのか
(来店客のみの単品ABC分析で、商圏ニーズが把握できたのか)
④ 店舗内の在庫過多による利益の圧迫
(新商品の導入抑制と補充・追加発注抑制によるメーカー経営の圧迫)
⑤ 店舗内の不良在庫の処分方法
(値下げしても売れない、不良在庫による他商品への影響)
等が挙げられる。
それでも、以前は、店舗内の改善、あるいは、本部内の改善だけで、何とか利益を圧迫せずに吸収してきたが、現在の経済環境、消費不況下では、いかんともしがたい。抜本的、根本的に、「改革」を行わないと、小売業だけでなく製造業も、ほとんどの企業は自然淘汰されてしまう。
では、何から「改革」していかなければならないのか。焦点は一つ。いかに「死に筋」をなくすかと言うことである。その上流工程は、「売れるであろう商品」ではなく「売れる商品選択であり、売れる商品作り」しかない。
そして、どちらも、商圏内の顧客ニーズを的確に捉え、それに対応した商品をいち早く店頭化(陳列し、訴求)して、販売する仕組みを構築しないと、変化に追従できない。
今までのマーチャンダイジング・サイクルでは、「顧客ニーズを捉える」時に優先されていた情報がPOS分析データ(図表4 ─ 11参照)である。
これは、あくまでもお買上客の情報であり、導入した商品が来店客のニーズに対応しているかどうかの検証用の分析であって、商圏、あるいは、見込客(マーケット)のニーズではない。このことに、チェーンストア側は、気付くのが遅過ぎたし、また、過大な期待をかけ過ぎていた。
お買上客のデータだけで単品ABC分析を続けて行くと、売れ筋商品がだんだん限定(縮小)されてくる。また、同時にニーズの変化によって、売れ筋だった商品も死に筋商品となってしまうこともあり、限られた情報の元での分析では、死に筋商品を増やしてしまう結果になりかねない。
もしかしたら、その中の商品に、見込み客や商圏内顧客のニーズ商品が含まれていた可能性が多分にあり、浮動客を集客できない(何も魅力のない)店舗では、チャンスロスが発生することになる。
商圏、あるいは、見込客(マーケット)のニーズを把握する上では、単品ABC分析のデータは「属性」(素材、色、サイズ、デザイン、量、価格、添加物、機能等)を指すが、これらの「属性」を分析すると言うことは、お買上客の傾向の把握や、商圏、あるいは、見込客(マーケット)のニーズを想定するに過ぎない。
従来は、マーケット・ニーズを把握する役目をメーカー、あるいは、仕入先にお願いしていた(情報の提供)。しかし、これも、自社や自社扱い商品の情報と他チェーンでの動向が中心で、商品情報による売り込み(自社都合が優先)と言ったようなものであり、とてもとてもニーズ情報とは言い難い、偏った情報であった。
たとえば、自社で抱えている在庫品の処分(安く)をすすめたり、他チェーンで売れているのか、いないのか調べもしないで、さも売れているように商談したり、理論武装(素材、機能、ターゲット、流行等)なしに良い商品だからと言って押し込んでみたり、やり方は、いろいろあるが、「情」=ウェットの商売が中心であった。
これからの、営業は、「理」=ドライの商売に変革して行く必要がある。すなわち、データに基き、顧客ニーズ(環境問題等含む)をどう捉え、捉えたニーズをどのように「商品に反映」するのか、その商品の効果等は、どの程度保証できるのか、鮮度維持、使用上における注意点はあるのか、商品の差別化なり価値は何なのか、等を理論的に説明する必要がある。
一方、小売業は、顧客ニーズを的確に捉えるために、正確な情報(現状・先取り)を提供してくれる情報源、すなわち、「仕入先で言えば、営業情報ではなく開発情報の入手」等の整備(多い程良い)とその情報の真贋を見極める機能・判断を持つ必要がある。
判断した結果、開発・導入した場合の販売責任は、当然ながら小売業が全責任(リスク)を負い、製造責任はメーカーが負うことで、各々の責任範囲を明確にする。
そう決めても、売れ残った商品は返品できる。あるいは、返品しても良いという条件は、過渡期には残ってしまうかもしれないが、絶対に無くしていかなければならない。
コンビニのPOSデータを分析してみると、スーパーマーケットの売れ筋商品が如何に偏っているかがわかる、すなわち、コンビニの客層別データの女性の大人(主婦層)とスーパーマーケットの売上データが全く似通っていることが判明した、これは、何を意味するかと言うとスーパーマーケットのデータは、顧客データではなく購買者(主婦層)中心のデータであり、顧客全体のニーズではない。(スーパーマーケットのデータは、価格弾性…低価格や特売商品やタイムセール、訳あり商品等数量が大幅に変化する)