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今月の売れ筋商品(試食感想等)・流通革新レポート

PosBankシニアアナリストの村上が、座長を務めます。(尚、POSBANKは、商標登録済みです)

二、ますます、厳しさが増す小売業

2010年06月17日 | 流通革新             
二、ますます、厳しさが増す小売業

つい数年前まで、「小売業は、簡単に儲かっていいですね」とか「小売業は、楽でいいですよね」等と言われ、「何故ですか」と聞き返すと、

① 売れている物を安く仕入れて、高く売れば良い
(客は、高ければ値打ちがあると思っているのだから)
② もし売れなければ、値下げして売れば、大半は売れる
(店は、もう、十分儲けているのだから、もっと安くしてよ)
③ 売れ残りは、メーカーに返品すれば良い
(メーカーが絶対売れると言ったけれど、やはり、売れ残ったので返す)

等と言う答えが返ってくる。現在の状況が、嘘のようである。
現在、どの小売業も「業務改革」、「業務の再構築」、「B・P・R」に取り組んでいるが、子会社等からの撤退、部署を廃部、新入社員の削減、高年齢者の早期退職勧奨等、人員削減、人件費削減と言ったことが中心で、実質的な「業務改革」自体は、はかどっていないのが現状である。
業務改革がはかどらない上に、現在の消費不況では、物が売れない、店頭の過剰在庫、利益の低下、資産の目減りと言う、八方塞りの状態に於いてはどうすることもできない。会社が、何も変わらなければ、最悪の状況が訪れることは間違いないだろう。
そこで、業務改革が先行している数社を参考しながら、マーチャンダイジング・サイクル(図表4 ─ 21、4 ─ 22参照)の変革方向の手順を挙げてみると、

① 意識改革(方針・考え方の意思統一)
・ 「お客の立場」で、考え、判断する(会社の立場は二の次)
・ リスクを安易なやり方で回避しない(他社に押し付けない)
・ 与えられた役割は責任を持って遂行する(当たり前のことを当たり前にする)
・ 行動は実行計画を立て、結果を検証する(プロセスも重要・失敗を次に生かす)
・ 地域(商圏)に密着した、品揃えをする(全国統一ではない)

② 業務改革(業務遂行上の矛盾・慣習等の問題点抽出と改善)…顧客と店の関係
・ 売上が伸びなくても、利益を上げる体質
・ 顧客ニーズの先取りではなく、追従して素早く対応
・ 商品経営(お客様中心・売れ筋、死に筋)
・ 業務分担(役割)の明確化(業務分析)
・ 情報の集中化と共有化
③ 組織改革(論理的業務の遂行、業務内容の見直し)…店と本部の関係
・ 業務内容の明確化(業務分析)
・ チーム、リスク、グループ、マーチャンダイジング(量から質へ)
・ 顧客ニーズの対応(情報源を幅広く求める…バイヤーはコーディネイター)
・ 商品経営の深耕(個店対応…スーパーバイザー機能の強化)
・ 単品管理の徹底(本部割付から店発注・販売、売れ筋・死に筋管理)

である。
しかし、意識、業務、組織を改革しても、基本は、顧客ニーズに対応した商品を「売る」のではなく、「売れる商品」を選択するのである。あるいは、開発し、販売すると言うことである。そして、それぞれの業務を牽制する仕組みを目指す必要がある。
ある特定の店舗や特定の部門の業績が悪いと、店舗の担当者がバイヤーに泣きついて数字(リベート等)を操作したり、売上を上げるために店舗で勝手に、安い商品を仕入れたり、決められた範囲外の値下げを行ないながら、管理資料等に計上している。また、月末の仕入を翌月に計上したり、棚卸の時には、シーズン終了後の売れ残り商品(翌年には売れない不良在庫)を正常在庫として処理し、粉飾利益を出す等、店舗、バイヤー間で馴れ合いの部分が多く残っている。
このように、店舗の数値を粉飾した場合、本部では、店舗の実態が見えないので、販売面でのサポート(不振店対策)ができない等の弊害が発生する。その後、実態が判明した時にはもう既に手が着けられず、スクラップ&ビルドもできない状態で放置され、全体の数値に影響を及ぼすようになってから始めて、対策が練られる。しかし、この段階ではほとんど手後れという状態になっている(ガンの発見とその処置と同様である)。
業績を粉飾する原因の一つが、馴れ合いである。そのため、I社グループでは、業績管理(店別部門別損益、部門別店別損益等の金額管理)のために、企画部所属でコントローラーと呼ばれる計数管理者が各部(店舗では、統括マネージャーが代行)に張りついて数値等を管理する制度が従前からあり、各部が相互監視(それ程大袈裟ではないにしても)できる体制を整えていたため、ある意味では不正防止(数値改ざん等)が図られていた。
ただし、このコントローラー制度には、各部部長をサポートする機能やシステム(仕組み)を円滑に運用する、あるいは、予算の作成、その他各種の問題を部門間で調整する役割を持っている。
この仕組みで、経営管理面(ダラー・コントロール)での運用は、効率的に行われていたが、問題は、単品管理面(ユニット・コントロール)にあった。
小売業の商品部組織及び役割を簡単に要約すると、ほとんどの企業が米国の小売業の影響を受けて、職務分担、職責名等も同様に使われている。基本的に商品政策、商品計画(開発)、仕入・納品、販売指導まで一貫して行う人をマーチャンダイザーと呼び、商品について最初から最後までマーチャンダイジング・サイクル全体の面倒をみている。
ただし、店舗への安定供給(配荷)管理を行っている人をディストリビュータと呼び、物流センターに常駐して、店別単品データを分析して、商品を店別に振り分けている。
日本の場合も基本的には、同様で、マーチャンダイザー(MD)、あるいは、バイヤー(BY)と呼んでいる。そして、店舗の発注数を管理し、店に商品を安定供給(ルーチンワーク)する役割を担っている人をディストリビュータ(DB)と呼び、本部、あるいは、地区別に配置され、本部集中管理でマーチャンダイジングを行っている。
商品が売れている時であれば、この組織において大した問題はなかったが、現在のように商品が売れない、利益が上がらない、しかも、急激な環境の変化が起こっている中では、数々の問題が発生している。
21世紀に入り、初めの10年が過ぎようとしていますが、新たの言葉としてファスト・ファションという言葉が生まれた、20世紀には、マクドナルドのハンバーガーをはじめとしたファスト・フードの対抗として衣料の分野に出てきた。
今や、ユニクロ、H&M、そしてフォエバー21と続々とファスト・ファション企業が名乗りをあげている、これらの企業の特長は、製造機能付き小売業である。
21世紀は、製造業と小売業がドッキングして、製造から販売迄、一貫した企業形態になるだろうし、業務改革の手順①まず、改善②そして、価値の追求③さらに、無駄や不要なものを省いた改革というステップになる。


第四章  マーケット・マーチャンダイジング戦略 一、現在の商品情報では、真の顧客ニーズは捉えられない

2010年06月07日 | 流通革新             
第四章  マーケット・マーチャンダイジング戦略

一、現在の商品情報では、真の顧客ニーズは捉えられない

現在のチェーンストア、コンビニエンス・チェーンでの商品情報は、自チェーン・自店での範囲内顧客(来店客)から収集し、単品管理、すなわち、部門別単品ABC分析を行い、Aランク商品は売れ筋商品、Bランク商品は死に筋に近い商品、Cランク商品は死に筋商品としている。Bランクにしろ、Cランクにしろ導入日が浅い商品については、売れ筋予備軍として捉えている。
システム上、Cランク商品については、本部バイヤーが残して欲しい商品(商品を導入してから日が浅い)のみシステム担当に申請して残してもらい、後の商品は、自動的にカットされる仕組みになっている。
それは、本来であれば、バイヤーがCランクの続いた商品について、一つ一つ吟味し、カットする商品の対象を判断しなければならないところを、バイヤーの「手間」を省くためだけに二、三ヶ月間Cランクの続いた商品をカット対象として、無条件に、かつ、「自動的」にカットしてしまい、扱い商品を減らしてきたのである。
さらに、バイヤーの判断(顧客ニーズにあった商品)だけで、売れると思った商品が選定され、あるいは、開発して商品が投入されるのである。結果的に売れる商品(Aランク)はたったの1割程度ではあるが、それでも、今までは何とか利益を出すことができた。
しかし、現在の消費不況では、顧客自身、必要最低限の商品、必要量だけに絞って商品を購入しているため、店舗内には在庫が多い。しかも、ほとんどが不良在庫になってしまう。
前に記述した内容からも伺えるように、小売業にとって、基本的な問題点がいくつも内在している。

① バイヤーの手間を省くことが、商品選定上の慎重さを欠いていたのではないか
(省力化優先で、手間をかけなければいけないことまで省力化していたのではないか)
② バイヤーの判断(少ない情報源)だけで、顧客ニーズ商品として良いのか
(商品知識優先、思い入れ商品が優先され、本当に顧客ニーズ商品だったのか)
③ 顧客ニーズの収集に偏りがなかったのか
(来店客のみの単品ABC分析で、商圏ニーズが把握できたのか)
④ 店舗内の在庫過多による利益の圧迫
(新商品の導入抑制と補充・追加発注抑制によるメーカー経営の圧迫)
⑤ 店舗内の不良在庫の処分方法
(値下げしても売れない、不良在庫による他商品への影響)

等が挙げられる。
それでも、以前は、店舗内の改善、あるいは、本部内の改善だけで、何とか利益を圧迫せずに吸収してきたが、現在の経済環境、消費不況下では、いかんともしがたい。抜本的、根本的に、「改革」を行わないと、小売業だけでなく製造業も、ほとんどの企業は自然淘汰されてしまう。
では、何から「改革」していかなければならないのか。焦点は一つ。いかに「死に筋」をなくすかと言うことである。その上流工程は、「売れるであろう商品」ではなく「売れる商品選択であり、売れる商品作り」しかない。
そして、どちらも、商圏内の顧客ニーズを的確に捉え、それに対応した商品をいち早く店頭化(陳列し、訴求)して、販売する仕組みを構築しないと、変化に追従できない。
今までのマーチャンダイジング・サイクルでは、「顧客ニーズを捉える」時に優先されていた情報がPOS分析データ(図表4 ─ 11参照)である。
これは、あくまでもお買上客の情報であり、導入した商品が来店客のニーズに対応しているかどうかの検証用の分析であって、商圏、あるいは、見込客(マーケット)のニーズではない。このことに、チェーンストア側は、気付くのが遅過ぎたし、また、過大な期待をかけ過ぎていた。
お買上客のデータだけで単品ABC分析を続けて行くと、売れ筋商品がだんだん限定(縮小)されてくる。また、同時にニーズの変化によって、売れ筋だった商品も死に筋商品となってしまうこともあり、限られた情報の元での分析では、死に筋商品を増やしてしまう結果になりかねない。
もしかしたら、その中の商品に、見込み客や商圏内顧客のニーズ商品が含まれていた可能性が多分にあり、浮動客を集客できない(何も魅力のない)店舗では、チャンスロスが発生することになる。
商圏、あるいは、見込客(マーケット)のニーズを把握する上では、単品ABC分析のデータは「属性」(素材、色、サイズ、デザイン、量、価格、添加物、機能等)を指すが、これらの「属性」を分析すると言うことは、お買上客の傾向の把握や、商圏、あるいは、見込客(マーケット)のニーズを想定するに過ぎない。
従来は、マーケット・ニーズを把握する役目をメーカー、あるいは、仕入先にお願いしていた(情報の提供)。しかし、これも、自社や自社扱い商品の情報と他チェーンでの動向が中心で、商品情報による売り込み(自社都合が優先)と言ったようなものであり、とてもとてもニーズ情報とは言い難い、偏った情報であった。
たとえば、自社で抱えている在庫品の処分(安く)をすすめたり、他チェーンで売れているのか、いないのか調べもしないで、さも売れているように商談したり、理論武装(素材、機能、ターゲット、流行等)なしに良い商品だからと言って押し込んでみたり、やり方は、いろいろあるが、「情」=ウェットの商売が中心であった。
これからの、営業は、「理」=ドライの商売に変革して行く必要がある。すなわち、データに基き、顧客ニーズ(環境問題等含む)をどう捉え、捉えたニーズをどのように「商品に反映」するのか、その商品の効果等は、どの程度保証できるのか、鮮度維持、使用上における注意点はあるのか、商品の差別化なり価値は何なのか、等を理論的に説明する必要がある。
一方、小売業は、顧客ニーズを的確に捉えるために、正確な情報(現状・先取り)を提供してくれる情報源、すなわち、「仕入先で言えば、営業情報ではなく開発情報の入手」等の整備(多い程良い)とその情報の真贋を見極める機能・判断を持つ必要がある。
判断した結果、開発・導入した場合の販売責任は、当然ながら小売業が全責任(リスク)を負い、製造責任はメーカーが負うことで、各々の責任範囲を明確にする。
そう決めても、売れ残った商品は返品できる。あるいは、返品しても良いという条件は、過渡期には残ってしまうかもしれないが、絶対に無くしていかなければならない。
コンビニのPOSデータを分析してみると、スーパーマーケットの売れ筋商品が如何に偏っているかがわかる、すなわち、コンビニの客層別データの女性の大人(主婦層)とスーパーマーケットの売上データが全く似通っていることが判明した、これは、何を意味するかと言うとスーパーマーケットのデータは、顧客データではなく購買者(主婦層)中心のデータであり、顧客全体のニーズではない。(スーパーマーケットのデータは、価格弾性…低価格や特売商品やタイムセール、訳あり商品等数量が大幅に変化する)

六、POSデータ(商品の売上)から簡単に経営診断ができる

2010年05月25日 | 流通革新             
六、POSデータ(商品の売上)から簡単に経営診断ができる

小売業の経営は、即ち、商売がうまくいくかどうかは、全面的に経営者の体力・気力・感性・人間味・企画力・先見性にかかっている。
理想的な経営者とは、これらをすべて兼ね備えていると言う事になるが、現実には、それ程の経営者は少ないし、繁盛店であれ、大企業であれ、多くの弱点を持ち合わせている。
しかし、繁盛店の経営者に共通して言える事は、自主性、積極性を持って、目的・目標に向かっていく行動力がある反面、細かい計数管理はちょっと苦手で、他人任せにしている事も少なくない。
経営者であれば、誰もが今日の売上や月間の売上、利益が気になり、毎日、全体売上を確認しているに過ぎない。そして、予算に達したら、『よく頑張ってくれました』、逆に、予算に達しない場合は、『もう少し、頑張って下さい』という感想で終わってしまう。
従業員は、何を頑張れば良いのか、さっぱり分からない。これでは、店は、何も変わらないし、刻々と変化するニーズには対応できない。繁盛店が、いつの間にか不振店になっていることもある。
チェーン本部のFC(経営相談員)から、いろいろと『経営指導』を受けているが、経営というよりも商品、或いは、店舗運営の事が中心で、それに、週2回来て、店舗の状態をチェックし、新商品等の説明をした後、1、2時間程度で帰ってしまう。その為、正直言うと、『あまり頼りにならない。しかも、若く、経営経験も少ない上、喋る内容はマニュアル通り』と言う事である。
繁盛している店のオーナーに秘訣を聞いたら、
『弁当、おにぎり、サンドイッチといった一日で売り切らなければならない商品の売上・廃棄だけを毎日ノートにメモをして、前週の同一曜日と比べたり、前月の売上と比べて分析した結果で、従業員に必ず作業指示を書いたメモを渡してシフト・チェンジを行っている。また、従業員にも、作業結果のチェックと気が付いた事をメモさせている。たったこれだけの事をずっと続けてきただけですよ』と言う。
更に、続けて、『この方法は、現在は契約更改で辞めてしまったオーナーから教えて頂いて、その通り実行しているだけです』と言う。
その方法とは、(図3 ─ 61参照)看板商品群の商品売上及び、推移、傾向を判断して、作業を指示するだけの事なので、誰でもできる。
この看板商品が売れていて、廃棄ロスが少ない場合は、店舗運営面(発注、補充、クリンネス、鮮度管理等)全般に渡って、商品管理(発注・補充・鮮度維持・接客等)が上手く行われていると判断できる。メモには、

【フレンドリー・クリンリネス】を心掛けよう
① お客様に対して関心を持って下さい
・ 進んでお客様に声をかける
・ お客様の顔や名前を覚える
・ 常連のお客様が買う商品を覚える
② 商品に対して関心を持って下さい
・ 新商品を味見して、感想をメモに書いて下さい
・ 新商品を使って、感想をメモに書いて下さい
・ 陳列場所を覚えて下さい
③ 気持ちの良い応対を心掛けて下さい
・ 接客用語を必ず使って下さい
・ 笑顔を忘れずにして下さい
・ スピーディな応対を心掛けて下さい
④ お客様が入り易いように、店頭・周辺・ごみ箱を奇麗にして下さい
⑤ 買い易く・清潔な売り場にして下さい
・ ゴミが落ちていたら拾って下さい
・ 清潔なユニフォームにして下さい(取り替えて下さい)

等の中で、少し乱れている項目だけを書き、必ずチェック印を付けて貰う。
反対に、売上が落ちたり、廃棄ロスが多い時は、発注上の注意点やロス原因を調査するように指示し、陳列状況を小まめに見て、整理整頓や鮮度チェックと温度管理の指示、或いは、商品入替情報、発注上の注意点(天候・行事等)、ストコン上の単品データの把握等、気が付いた事を書き(書かせたり)、情報を共有して、コミニュケーションを図る。これを毎日継続することで意識が一致し、一ヶ月もすると、提案や要望がメモで書かれているようになる。
従業員意識を高める為に、予算を決め、それが達成されたら、5000円を積み立ていき、一定期間働いた学生アルバイトには、退職時に退職金(就職祝いも含めて)代わりとして、5万円位の背広等プレゼントしている。
これが、好評で、アルバイト学生は自分が辞めた後、次の質の良いアルバイト(後輩)を紹介してくれるので、従業員には困らない。
一方、食品スーパーにも、看板商品として『精肉・鮮魚・惣菜』が該当するので、これらの売上、値下、廃棄の金額を管理(推移、傾向含む)して自店の経営診断を行うと、顧客からの評価(支持率)が分かり、何を改善すれば良いのか直ぐに判断できる。
食品スーパーの場合でも、最低10部門位あるが、店長をはじめとして管理職員は、その中で一、または、二部門しか担当しなかった人が多く、当然ながら、全商品の商品知識を把握しきれていない。
このような状況下で、商品を顧客(消費者)に買ってもらうのは、いささか難しい事である。当然ではあるが、店舗で扱っている商品について、(商品)知識を身につけなければ、販売面での強化を行うにもなかなか困難な時代(顧客の方が商品知識があると言う皮肉な現象も出ている)になったと言える。
NB商品は、どこの店舗でも取り扱いがあり、品揃えも似たり寄ったりで、店舗としての特長を出すのに、苦労しているが、繁盛店は、販売員の対応で成功している、その理由は、前述の商品知識は勿論のこととして、毎週のPOSデータを分析し、売れ筋・死に筋の把握とその理由を検証・確認して、接客に活用しているので、説得力が違う、単なる棚札でのお勧め商品や売上何位等のPOPだけでは、消費者は、なかなか商品を購入しなくなっている。

五、販売時点情報から視えるもの

2010年05月12日 | 流通革新             
五、販売時点情報から視えるもの

コンビニチェーンでは、若者をターゲットとした商品の品揃えが中心であり、その検証の為に、『客層』をデータとして取り込み、客層別に売れ筋商品と死に筋商品を明確にする事が可能となった。死に筋商品を早期に処分して、売れ筋商品のみを増やす事に力が入れられ、ストア・ロイヤリティを上げる事に成功した。
当初、店員はレジの精算時に、客層(男女別に大人・若者・子供等)を入力する事に不安を抱いていたが、客層を6から10分類に絞り込み、精算キーの代わりに直感で客層が分類されたボタンを押す事で、大した手間もかからず入力できる事から、他チェーンも次々に導入するようになり、客層別に単品を把握する事が可能となり、単品の動向管理に効果を上げた。
例えば、おにぎりが午後3時から4時頃に、首都圏で子供達に売れている事に気が付き、この原因を調査してみると、小、中学生が塾に行く前におやつとして買ったり、或いは、塾の休憩時間に食べる為に、購入している事が分かった。
従来、おにぎりの具は、『梅、しゃけ、おかか』が売れ筋であり、米や炊き方、海苔にこだわり、或いは、この具の品質(梅であれば、紀州梅を使用)を高めて、品切れを起こさなければ良かったが、午後3時から4時という中途半端な時間に、子供達がおやつ代わりに副食として購入している実態が、データで浮き彫りになった。
通常、午後の3時から4時頃と言うのはコンビニ店にとって暇な時間帯であり、その時間帯におにぎりを購入してくれる子供達は、良い顧客であり(顧客ニーズ)、早速、子供達が好む具材等、対応策を検討する事にした。検討の末、『マヨネーズ・ツナ』等の新商品が開発される運びとなった。
その後、具材だけでなく、おにぎりに巻く『海苔』にしても、パリパリ感と直巻きのしっとり感、更には、女性向けのプチおにぎりセットなど、年代、時間帯に合わせた商品が続々と開発されている。
惣菜関係についても同様である。当初のメイン・ターゲットは、独身男女と主婦(サブターゲット)の昼食のおかずとして導入したのだが、実際には、昼時には惣菜の売上は余り上がらなかった。
その原因を追求していくと、

① 量の問題と価格であり、昼食に主婦がお金を出して、わざわざ買い求める事が少なく、殆どが前日の残りものや有り合わせで済ませる
② 主婦の来店数が少ない
③ 惣菜の種類が少ない

等であり、
① については、直ぐに、少量の個食パックとして改善され、独身男女には好評だったが、
  主婦層の一人のおかずとしては、量も多いし、価格(今までは、有り合わせのおかず
  なのでタダ)も高い。
 主婦の来店数が少ない事については、公共料金の収納サービスとの抱き合わせで集客する。
② については、多種類の商品を陳列できる惣菜専用の陳列棚を用意し、鮮度維持を徹底
  する。

等の対応策を図り、主婦層の取り込みにも成功している。
このような、鮮度が要求される商品群(ファーストフード類)については、メイン・ターゲットだけでは、売れ残りや廃棄が多く発生する為、商品に手間を掛けて、サブ・ターゲットを『買い物客』にする必要がある。現在では、大多数の主婦が、コンビニ店に抵抗なく買い物をしている。
ただ単に、ある商品を売るだけでなく、心を込めて、美味しい物を提供する努力(裏方)が顧客にも伝わり、それが、売上の増加に繋がれば、或いは『美味しい』、『ありがとう』とお褒めの言葉を頂ければ、『やりがい』も生まれ、商品に手間を掛ける事など手間でなくなる。
飽和状態と言われる程増え続けているコンビニ店では、今までの商品の品質や鮮度、或いは、マニュアル販売、宣伝(基本の徹底)だけでは、他店との競争には勝てない。
商品を億劫がらずに手間を掛け、販売の仕事を楽しくやっている。或いは、顧客に対し、徹底したサービス(付加価値と応用の実践)を追求している店舗だけが生き残り、応用を実践していない店舗は、自然に淘汰されていく。
ほんのちょっとしたアイデアでも、店の特徴を出し、集客力を高めることも可能である。例えば、髪止めのゴムとリボンを色とりどり取り揃え、若い女性の来店頻度を上げたコンビニ店もある。
これなどは、コンビニに来店する女性客が少ない為、何とか数を増やしたいと言う事で、単価を低く、それ自体の売上は期待できなくても、ついでに、他の商品を買って行く頻度が増え、結果として、売上を順調に伸ばしていった例である。
蛇足ながら、『基本原則の策定』と『付加価値の創造』と『応用の実践の紹介』がチェーン本部の役割で、『基本の徹底』と『応用の実践』は加盟店の役割である。現在、多発している紛争は、どちらかが、契約書の内容に記載されている役割を果たしていない場合である。『売上予測』でトラブルになり、係争するのは戴けない。何故なら、『売上予測』は、あくまでも予想であって、100%の確率で当たるものではない。話半分程度の確率の『予想』であると思った方が良い。はずれる確率をチェーン本部では『最低荒利保証』制度でリスクしていると考えた方が良い。更に、売上や純利益は勿論の事、POSデータの活用等は、加盟店の腕次第であると思った方が、オーナーとして、経営者としての力量が充分発揮できる。
大多数のコンビニ店、チェーンストアでは、POSシステムが導入され、販売時点でのデータをもとに単品管理情報が出力されている。その活用(ソフトメリット)に、各社各様でしのぎを削っているが、客層と時間帯ベースにシステム化したコンビニエンス・チェーンの方が単品管理のきめ細やかさと言った点から一日の長がある。
業態の違いによる差もあるだろうが、コンビニエンス・チェーンの場合は、誰が(客層)、何時何分に(時間帯)、何を購入したか(単品)と言ったデータの捉え方をしているのに対して、チェーンストアの場合には、何時何分に何を購入したかと言ったデータの捉え方しかできていない。この誰が(客層)と言う情報が取り入れられれば、情報の性格に大変な変化が生まれ、活用の仕方が広範囲に拡大するのだが、現状では、なかなか難しい。キャシュレス(属性との組み合わせで)が普及すれば、新たな展開もまた考えられる。
現状ではコンビニエンス・チェーンの方が、顧客ニーズをより反映されたデータが得られるし、チェーンストアの場合は、家族のニーズ(より主婦の)になり、少しターゲットがぶれている。

四、豊富な在庫は鮮度を悪くする原因になる

2010年05月06日 | 流通革新             
四、豊富な在庫は鮮度を悪くする原因になる

今まで商品が、豊富にある事が購買意欲を高め、衝動買いを喚起させると盛んに言われ続けてきている。また、実際豊富な商品を店頭に並べる事を競い合ってきた。豊富なと言う意味には商品の品目数、属性(色、サイズの組み合せ)、量等があるが、売れ筋はその中でもほんの一握りのアイテムであり、それ以外の殆どは売れ行きの鈍い商品である。
豊富さと言う殻を破ったのがコンビニ店であり、売れ筋商品のみを集めて品揃えする事により、商品の回転率を高め、利益を追求してきた。
顧客は、売れ筋商品だけを集める事により、売り場の新鮮なイメージと何か新しい商品があると言う『発見の場』的イメージで店舗を捕らえ、在庫を減少させ、売上げと利益を上げるよう貢献している事は周知の通りである。
コンビニでは、今や商品回転率が年間50回転以上するとも言われ、即ち、在庫金額が400万から500万円の間で、年間売上げが2億円(日販約55万以上)以上と言うのが目標になっている。しかし、チェーンストアでは、商品回転率を重視する政策よりも、品揃えの豊富さと言う点を追い求めている。
その原因の一つとして、多様化した顧客ニーズに対応すると言う政策が掲げられる中、門戸が広がり過ぎてしまった事が要因となっている。
マーケット・マーチャンダイジング(商圏内における多数を占めるニーズを絞り込み、それに対応する)に立ち返ることで、効率経営(ローコスト・オペレーション)を実現しなければ、二十一世紀には生き残れない。
過剰在庫は、

① 在庫商品は、仕入資金がかさみ、在庫金利と共に圧迫する
② 在庫商品の中身は、これから売れる商品ではなく、長く売れ残っている商品が多い
③ 鮮度の悪い商品が陳列され、売上におけるチャンスロスが発生する
④ 在庫商品が多いとキズものになり易く、売れ残り品のイメージを店全体に与える
⑤ 多過ぎる在庫商品は、作業効率を悪くし、単品の動きが把握しにくい
⑥ 発注がルーズになり、死に筋商品が増加し、処分対応により利益を圧迫する
⑦ 売れ筋商品が見つかりにくく、チャンスロスが発生する

といったような弊害ばかりである。豊富さと言う意味を明確にし、合理的に在庫商品を減しながら、売上と利益を上げる必要があるが、多くのチェーンストアでは、一律に10%削減と言う無謀なやり方が行われている。
確かにショック療法としての効果は望めるが、継続的な在庫削減と言った観点からは、有効な方法とは言えない。
では、合理的に在庫商品を減らした結果、どのような問題点と対応が必要になってくるのかと言う事を考える上で次の例を紹介する。
例えば、ワイシャツ売り場でお客様が、自分のサイズを一生懸命探している光景をよく見かけるが、どうにも見つからない時は、仕方なくそのまま帰っている(機会ロス)。また、或いは、売り場の店員に商品の有無を確認している。この時、自分が求めているサイズのものが、売り場に陳列されていない時の店員の対応が、各々まちまちである。

① 扱っていない商品を『特殊サイズなので扱っておりません』と言って対応する。
② 扱っていない商品を『ただ今、品切れしております』と言って対応する。
③ 扱っていない商品を『あいにく当店では、そのサイズは置いておりません』と対応する。

① の問題は、お客様が気分を悪くするような応対と言える。お客様にして見れば、自分のサイズ『36 ─ 76』は特殊サイズではないと思っている。サイズが置いてない上、特殊扱いされた事でこのお客様は、二度と来店する事はないだろう。
② の問題は、再度来店した時の対応と同様になる為、2回、3回と来店してみても結果が同じならば、結局、最終的には信用を無くすことになってしまう。
③ の問題は、扱っていないと言う事を売り場に表示していない為、お客様が探した時間が無駄になる。
対応の仕方によって、このような事が発生し、ストアロイヤリティーを落とす結果となる。
在庫を削減する場合、品揃えの絞り込みを行う訳だが、

① より多くの生地、色、サイズを揃えるか(死に筋が多く発生する)
② 売れ筋サイズを中心に揃えるか
③ 生地や色等を絞り込みサイズを優先させた品揃えとするか

①、②、③の選択肢においても、明解な答えを出す事は困難であり、在庫削減と品揃えの難しさと言えよう。
更に、商品を絞り込む場合の考慮すべき点として重要な事は、全店計でABC分析を行うが、全店ベースではCランクに位置付けられている商品(カット対象商品)が、店別ABC分析では、Aランクに位置付けられている事が希にあり、こういった商品をカットしてしまうと、店から見れば売れ筋商品のカットとなる訳で、店と本部(バイヤー)のトラブルにもなり兼ねない。だからこそ、マーケット・マーチャンダイジングの重要性を再認識し、加えてデータに裏付けられた在庫削減を実施する必要がある。
店舗での在庫過多要因の一つに、消費期限や賞味期限の問題がある、複数の消費期限や賞味期限があると、消費者は先の長い日付の商品を購入する為、古い商品は不良在庫として残り、店舗のイメージを悪くしている。
そこで、卸売り店やディスカウント店では、消費期限や賞味期限の迫っている商品を定価の10%から20%で投売りをして好評を得ている、特に食品関係はこのような仕組みを持っていないと廃棄ロスが多大になり、利益を圧迫する。