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シャープ、経営戦略を発表 鴻海頼みで業績回復狙う

2012-06-10 |  シャープ
 

 シャープは8日、資本提携する台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業グループとの協業を柱とする今後の経営戦略を発表した。

 液晶パネルの主力拠点、堺工場(堺市)から鴻海へのパネル供給の開始時期を7月に前倒しし、2014年3月期から中国向けスマートフォン事業を共同展開する。

 鴻海頼みで業績回復を狙う姿勢が鮮明になった。


稼働率9割に

 6月末に鴻海との共同運営に切り替える液晶パネルの堺工場は、当初計画では10月から生産量の5割を鴻海が買い取るとしていたが、これを7月に前倒しする。

 これにより、テレビの販売不振で現在約5割にとどまる稼働率を9割まで引き上げる。

 また、堺工場の運営会社シャープディスプレイプロダクト(SDP)に7月、現在はシャープ本体にある大型液晶パネルの事業部門を移管する。

 同部門の従業員のほぼ全員にあたる約1300人を移す。中国での携帯電話事業は、シャープブランドのスマートフォンを共同で開発した上で生産を鴻海に委託する。

 低コスト生産のノウハウを持つ鴻海と組むことで、コスト競争力を高める。

 1000-4500元(約1万3000-5万6000円)の価格帯を狙い、市場開拓で先行する韓国サムスン電子などを追い上げる。

 中国事業では、シャープは鴻海が中国・成都に計画中の中小型液晶パネルの工場に、最先端技術を供与することも最終調鑿している。


新たな事業モデル

 都内で記者会見した奥田隆司社長は「テレビや携帯電話などデジタル商品は、もはや技術だけで勝てる分野ではない」と指摘。

 そのうえで「生産量と調達力に優れた鴻海と新たな事業モデルをつくる」と話した。

 また、鴻海からシャープ本体への約9.9%の出資時期については、「最終段階にあり、(近く)予定通り払い込まれる」との見通しを示した。

 メーカーにとって成長の糧である設備投資額を今期は前期比16%減の1000億円まで抑制、約1兆1500億円まで膨らんだ有利子負債の削減を優先する。

 鴻海との協業で当面は収益を底上げしてしのぐ。

 シャープは前期の連結最終損益が過去最悪の3760億円の赤字に落ち込み、今期も同300億円の赤字を見込む。

 「積極果敢に挑む」と会見で何度も繰り返した奥田社長だが、単独での事業展開については多くを語らなかった。

 鴻海の傘下企業の中国工場では4日夜に従業員の暴動が発生している。「鴻海頼み」にもリスクがあり、シャープ単独の事業でも成果を上げることが求められそう。




【記事引用】 「日経産業新聞/2012年6月9日(土)/9面」