ネグロ・カサスを久々に観た(2010/5)。時々来日していたらしいのだが観る機会を逸していた。もう50歳だという。若々しい。現在メキシコのCMLL世界ミドル級の王者に君臨しているが、ルチャ・リブレに詳しくないのでミドルやウェルターという階級のことはよくわからない。
カサスはラ・マヒストラル(横回転式腕極めエビ固め)の使い手として知られるが(ネグロ・カサスの親父ペペ・カサスが元祖だから正統な後継者)、ライガーとの試合の中でラ・マヒストラルはもちろんのこと、セントーンを二発放った。これもネグロ・カサスの得意技である。
一発目はロープ中段からのダイビング・セントーン。そして次は場外に向けてエプロンからセントーン・アトミコ。いずれも決まった。
このセントーンについて書きたいのだが、その前に自らの知ったかぶりを正しておこうかと思う。セントーン"アトミコ"とはどういう技を指すのだろうか。通常ではグレート・サスケの必殺技だったコーナートップからの前転式セントーンを指す。ただ、それ以外でもアトミコを冠する場合はあるような。
「アトミコ」とはつまり「アトミック」である。原子力、原爆。だから、広義に解釈すればセントーンの中で最も威力のあるものということか。だからエプロンから場外へのセントーンもこれに値すると考えていいのでは、とお茶を濁しておく。
「アトミコ」にこだわっているわけにはいかない。そもそも「セントーン」とはどういう意味か。当方スペイン語など全くわからないので困る。そのために図書館に行くわけにもいかないので検索してみると「尻もち」の意味だという回答が多かった。なるほど。
ただ、セントーンという技を「尻もち」と言われると実にピンとこない。
この技の元祖が誰であったのかは知らない。ネーミングからしてルチャの技だとは思うが。どこまで歴史的に遡れるのかはわからないが、僕が知っているセントーンの使い手としてまず浮かぶのは、ペーロ・アグアヨである。
メキシカンはミル・マスカラスに代表されるように華麗な空中殺法を得意とする。軽量級が多い、という事情もあるだろう。飛んだり跳ねたり、昔はよく「サーカスプロレス」と言われた。その中でペーロ・アグアヨはラフ殺法を得意とした異色レスラーだった。同様にメキシコレスラーはマスクマンばかりだったが彼は素顔で、それも実に気性が荒そうな面構え。グラン浜田のライバルとしてよく来日していた。そのペーロ・アグアヨの切り札がセントーンだった。
ラフファイトで相手のダメージを蓄積させマットに倒れて動けない状態をつくり、そしてダイブ、背中から相手の腹部に向かって落下する。本当に恐ろしい技だと思った。
自らの体重を相手に浴びせかけてダメージを奪う技は、他にボディプレス、ヒップドロップがある。だが、いずれも完全に体重を相手にあずけているか、と言われればどうか。まずは、足がマットにつく。ムーンサルトプレスにせよ雷電ドロップにせよ、完全に体重全てが相手に浴びせかかるか、といわれればそうとも思えない。だいたい、100kgにもならんとするレスラーの体重全てが自由落下の法則により威力を増してのしかかってくれば危険である。
ところがセントーンは背面から落ちてくる。手足は普通上方に向くので、決まれば完全に体重は相手に100%ドスンと乗る。相当に怖い。このように自らの体重を完全に相手に浴びせるのは、あとはフットスタンプくらいしか思い浮かばない。
だから「尻もち」と言われると多少違和感がある。多くは背中から、また肩口から落ちてくる場合も見受けられる。その衝撃は分散されず全て相手に与えられる。我々がこれを受ければ肋骨骨折、腹腔破裂だろう。寝転がっている上から100kgのものを落とされるのだ。
だから、この技が軽量級の多いメキシコマットでよく見られるのはわかる。チャボ・ゲレロのセントーンも印象に残る。このくらいの体重でないと危険なのであって、アンドレがセントーンをやれば死人が出る。
ヘビー級ではやはり使用者は少ない。その中でも三沢光晴はよくやっていたが、基本的にはその場でジャンプして落とす。それでもダメージがこちらに伝わってくるようなエグさがある。超ヘビー級では吉江豊が使用していたが、吉江はダイビングセントーンも放つものの(この体重では脅威だ)、うまく体重を外に逃がしていたような。ただ、尻もちをつくような形になればやはり少し美しくない。
セントーンと言えばやはりヒロ斉藤。こちらはそのフォームが美しい。あのゴムまりのような体躯がふわっと浮き上がり、背中から相手の腹に「ボムッ」と落ちる。全体重乗せて落としましたよ、こちらのダメージは全て下の相手に吸収してもらいましたよ、という感じがよく伝わる。巧い。
セントーンとどっちが先に開発されたのかよく知らないので「派生技」と言っていいのかどうかわからないが、サンセットフリップという技がある。またの名をサマーソルトドロップ。いずれもネーミングの由来はわからない。セントーンと類似した技だ。
セントーンはその場でジャンプ、またロープやコーナーなどから飛び降りる場合も含めて、足を突き出すようにジャンプして背面から落下するような形にする。サンセットフリップは、頭からくるりと前転ジャンプして背面から落下していく。決まった形は同じ。だが、回転するアクションが加わるぶんセントーンより派手に見える。
これは元祖がはっきりしていて、エドワード・カーペンティアだと言われる。体操選手からサーカスを経てレスラーになった異色の選手で、その跳躍力を生かし空中殺法の元祖とされる。アクロバット・プロレスとも言われた。
残念ながらカーペンティアを実際に見たことはない。僕の世代では既に伝説で「アンドレをスカウトした男」として知っていたくらいだ(寺西勇は和製カーペンティアと言われていたな)。だからカーペンティアのサマーソルトドロップは知らない。僕がまずこの技で思い浮かぶのはマイティ井上である。
井上のサンセットフリップは派手だった。まず聞き取れない雄叫びをあげ(わわわぅわとしか聞こえなかったが)足踏み鳴らし腕をバタバタと回しジャンプ一番、くるっと回転して相手に落ちる。その派手な動きから「うわ、出た!」といつも僕は口に出てしまった。これを連発することも多く、やられるほうにとってはたまらない。
もうひとりの使い手として思い出すのは初代タイガーマスクで、こちらはスピードはあるものの実に淡々と、相手のダメージを蓄積させるために放っていた。連続技の一環、という位置づけであったような。
セントーンとサンセットフリップ(サマーソルトドロップ)、どちらも同じ背面落下技であるが、好みとすればやはりセントーンに軍配を上げたい気持ちがある。それは、まず虚飾を排しているという部分もあるだろう。そして、上からそのままズドンと落ちてくる感のあるセントーンの方がダメージがありそうな感じがする。
サンセットフリップも背中から体重を浴びせる点では同じなのだが、回転を伴う分ベクトルがずれるような気がしてしまうのだ。サンセットフリップは回転の勢いがついているので、相手の腹部に背中から着地してもすぐに相手の向こう側のマットに尻が着き上体が起き上がり、立ち上がることも可能。腹の上をローラーが転がるのとローラーが落ちてくるのでは、落ちてきたほうがキツかろう。そういう印象だけのことである。
もちろんサンセットフリップも落下してくるわけで同じである、とも言えるが、たとえばオットー・ワンツのスチームローラーという、落下しないサンセットフリップみたいな技もある。
オットーワンツと言えば僕などはIWGPの最初のリーグ戦でのヨーロッパ代表としての印象が深いが、吉江より重いかな、と思えるくらいの巨漢レスラーである。この巨体が、つまり「でんぐり返し」をして相手に圧しかかる。まさに腹の上をローラーが転がる様相だ。ジャンプしないので技としては別物とも言えるが、サンセットフリップもこの延長線上にある、という見方もしようと思えば出来る。タイガースープレックスとオースイスープレックスほどの違いがある、との意見もあるだろうけれども。
そしてもう一点は、あくまで僕の印象において、であるが、セントーンがフォールに結びつく技であるのに対しサンセットフリップは繋ぎ技であるように思えてしまうのである。これは初代タイガーのイメージもあるかとは思うのだが。マイティ井上はサンセットフリップでフォールを奪っていた記憶もあるけれども、それは何度も連発した上でのことで、一発で決まる印象はあまり、ない。
こうして僕はセントーンに軍配を上げていたのだが、サンセットフリップは知らない間にどんどん進化を遂げていた。しばらく観ぬ間に…である。
この間もTVマッチで内藤哲也がサンセットフリップを放っていたが、その場ジャンプであるのにとても高さがあり、飛び上がってまず空中で一度ピンと伸身して(なので一瞬ボディプレスにいくのかと思う)、その後前転して落下。なんであんなことが出来るのだ。運動神経が半端ではない。
さらに。
最初にグレートサスケの「セントーン・アトミコ」について少しだけ言及したが、これはつまり、セントーンと言いつつサンセットフリップではないのか。
足を前に飛んで背中から落下がセントーン。頭を前に飛んで前方回転して背中から落ちるのがサンセットフリップ。サスケのセントーン・アトミコはコーナートップから、空中で前方に回転して背面から落ちる。ならこの技はサンセットフリップに分類されるはず。
しかし、そう理屈をこねてみるものの、もはやこれはサンセットフリップとは言い難いか。
コーナーから飛ぶために、そのジャンプの高さがサンセットフリップと一線を画してしまうのだ。滞空時間があるためにいくら空中で回転しようとも、その威力のベクトルはどうしても真下へ向かって伸びる。回転によるダメージの分散などなくなる。そうなれば、もはやセントーンとしか呼べなくなってくる。
ローリングセントーンもそうだ。これには捻りが入るぶんさらにややこしい。バルキリー・スプラッシュはさらに高角度になる。引退したミラノコレクションA.T.のアルマニッシュ・エクスチェンジになると、もうパッと見ただけでは何をやってるのかわからない(何度もスロー再生してしまった)が、決まった形はセントーン。
しかし、こうしてセントーンがその場ジャンプからコーナーあるいはロープ上段に上って放たれることには、危惧も覚えるのである。
セントーンは前述したように体重が全て相手に浴びせられる危険な技。ダイビングして、ともなれば相当の負荷が相手レスラーに圧し掛かる。多少のことはしょうがないとも思うが、度を過ぎればそれは危ない。ネグロ・カサスはライト級で、しかもロープ中段やエプロンからだった。それでも「アトミコ」つまり危険度が高い技には間違いないだろう。
ジェフ・ハーディーのスワントーン・ボム。形態はサスケのセントーンアトミコと同じだと思うが、いったいなんだあれは。
ジェフがランディ・オートンに場外で放ったスワントーン・ボムを動画サイトで見たが、何だかライティングの鉄枠をよじ登って(少なくとも7、8mはあったんじゃないか)そこから飛び降りてセントーンやってたぞ。もう無茶苦茶としか言いようが無い。今のアメプロとはこういうもんか。絶句である。コーナー最上段だって危険なのに。子供が真似してマンションから飛び降りて死んだそうじゃないか。
少なくとも僕が観たいプロレスとはこういうものじゃないなあ。そんな複雑な思いもまたしてくるのである。
カサスはラ・マヒストラル(横回転式腕極めエビ固め)の使い手として知られるが(ネグロ・カサスの親父ペペ・カサスが元祖だから正統な後継者)、ライガーとの試合の中でラ・マヒストラルはもちろんのこと、セントーンを二発放った。これもネグロ・カサスの得意技である。
一発目はロープ中段からのダイビング・セントーン。そして次は場外に向けてエプロンからセントーン・アトミコ。いずれも決まった。
このセントーンについて書きたいのだが、その前に自らの知ったかぶりを正しておこうかと思う。セントーン"アトミコ"とはどういう技を指すのだろうか。通常ではグレート・サスケの必殺技だったコーナートップからの前転式セントーンを指す。ただ、それ以外でもアトミコを冠する場合はあるような。
「アトミコ」とはつまり「アトミック」である。原子力、原爆。だから、広義に解釈すればセントーンの中で最も威力のあるものということか。だからエプロンから場外へのセントーンもこれに値すると考えていいのでは、とお茶を濁しておく。
「アトミコ」にこだわっているわけにはいかない。そもそも「セントーン」とはどういう意味か。当方スペイン語など全くわからないので困る。そのために図書館に行くわけにもいかないので検索してみると「尻もち」の意味だという回答が多かった。なるほど。
ただ、セントーンという技を「尻もち」と言われると実にピンとこない。
この技の元祖が誰であったのかは知らない。ネーミングからしてルチャの技だとは思うが。どこまで歴史的に遡れるのかはわからないが、僕が知っているセントーンの使い手としてまず浮かぶのは、ペーロ・アグアヨである。
メキシカンはミル・マスカラスに代表されるように華麗な空中殺法を得意とする。軽量級が多い、という事情もあるだろう。飛んだり跳ねたり、昔はよく「サーカスプロレス」と言われた。その中でペーロ・アグアヨはラフ殺法を得意とした異色レスラーだった。同様にメキシコレスラーはマスクマンばかりだったが彼は素顔で、それも実に気性が荒そうな面構え。グラン浜田のライバルとしてよく来日していた。そのペーロ・アグアヨの切り札がセントーンだった。
ラフファイトで相手のダメージを蓄積させマットに倒れて動けない状態をつくり、そしてダイブ、背中から相手の腹部に向かって落下する。本当に恐ろしい技だと思った。
自らの体重を相手に浴びせかけてダメージを奪う技は、他にボディプレス、ヒップドロップがある。だが、いずれも完全に体重を相手にあずけているか、と言われればどうか。まずは、足がマットにつく。ムーンサルトプレスにせよ雷電ドロップにせよ、完全に体重全てが相手に浴びせかかるか、といわれればそうとも思えない。だいたい、100kgにもならんとするレスラーの体重全てが自由落下の法則により威力を増してのしかかってくれば危険である。
ところがセントーンは背面から落ちてくる。手足は普通上方に向くので、決まれば完全に体重は相手に100%ドスンと乗る。相当に怖い。このように自らの体重を完全に相手に浴びせるのは、あとはフットスタンプくらいしか思い浮かばない。
だから「尻もち」と言われると多少違和感がある。多くは背中から、また肩口から落ちてくる場合も見受けられる。その衝撃は分散されず全て相手に与えられる。我々がこれを受ければ肋骨骨折、腹腔破裂だろう。寝転がっている上から100kgのものを落とされるのだ。
だから、この技が軽量級の多いメキシコマットでよく見られるのはわかる。チャボ・ゲレロのセントーンも印象に残る。このくらいの体重でないと危険なのであって、アンドレがセントーンをやれば死人が出る。
ヘビー級ではやはり使用者は少ない。その中でも三沢光晴はよくやっていたが、基本的にはその場でジャンプして落とす。それでもダメージがこちらに伝わってくるようなエグさがある。超ヘビー級では吉江豊が使用していたが、吉江はダイビングセントーンも放つものの(この体重では脅威だ)、うまく体重を外に逃がしていたような。ただ、尻もちをつくような形になればやはり少し美しくない。
セントーンと言えばやはりヒロ斉藤。こちらはそのフォームが美しい。あのゴムまりのような体躯がふわっと浮き上がり、背中から相手の腹に「ボムッ」と落ちる。全体重乗せて落としましたよ、こちらのダメージは全て下の相手に吸収してもらいましたよ、という感じがよく伝わる。巧い。
セントーンとどっちが先に開発されたのかよく知らないので「派生技」と言っていいのかどうかわからないが、サンセットフリップという技がある。またの名をサマーソルトドロップ。いずれもネーミングの由来はわからない。セントーンと類似した技だ。
セントーンはその場でジャンプ、またロープやコーナーなどから飛び降りる場合も含めて、足を突き出すようにジャンプして背面から落下するような形にする。サンセットフリップは、頭からくるりと前転ジャンプして背面から落下していく。決まった形は同じ。だが、回転するアクションが加わるぶんセントーンより派手に見える。
これは元祖がはっきりしていて、エドワード・カーペンティアだと言われる。体操選手からサーカスを経てレスラーになった異色の選手で、その跳躍力を生かし空中殺法の元祖とされる。アクロバット・プロレスとも言われた。
残念ながらカーペンティアを実際に見たことはない。僕の世代では既に伝説で「アンドレをスカウトした男」として知っていたくらいだ(寺西勇は和製カーペンティアと言われていたな)。だからカーペンティアのサマーソルトドロップは知らない。僕がまずこの技で思い浮かぶのはマイティ井上である。
井上のサンセットフリップは派手だった。まず聞き取れない雄叫びをあげ(わわわぅわとしか聞こえなかったが)足踏み鳴らし腕をバタバタと回しジャンプ一番、くるっと回転して相手に落ちる。その派手な動きから「うわ、出た!」といつも僕は口に出てしまった。これを連発することも多く、やられるほうにとってはたまらない。
もうひとりの使い手として思い出すのは初代タイガーマスクで、こちらはスピードはあるものの実に淡々と、相手のダメージを蓄積させるために放っていた。連続技の一環、という位置づけであったような。
セントーンとサンセットフリップ(サマーソルトドロップ)、どちらも同じ背面落下技であるが、好みとすればやはりセントーンに軍配を上げたい気持ちがある。それは、まず虚飾を排しているという部分もあるだろう。そして、上からそのままズドンと落ちてくる感のあるセントーンの方がダメージがありそうな感じがする。
サンセットフリップも背中から体重を浴びせる点では同じなのだが、回転を伴う分ベクトルがずれるような気がしてしまうのだ。サンセットフリップは回転の勢いがついているので、相手の腹部に背中から着地してもすぐに相手の向こう側のマットに尻が着き上体が起き上がり、立ち上がることも可能。腹の上をローラーが転がるのとローラーが落ちてくるのでは、落ちてきたほうがキツかろう。そういう印象だけのことである。
もちろんサンセットフリップも落下してくるわけで同じである、とも言えるが、たとえばオットー・ワンツのスチームローラーという、落下しないサンセットフリップみたいな技もある。
オットーワンツと言えば僕などはIWGPの最初のリーグ戦でのヨーロッパ代表としての印象が深いが、吉江より重いかな、と思えるくらいの巨漢レスラーである。この巨体が、つまり「でんぐり返し」をして相手に圧しかかる。まさに腹の上をローラーが転がる様相だ。ジャンプしないので技としては別物とも言えるが、サンセットフリップもこの延長線上にある、という見方もしようと思えば出来る。タイガースープレックスとオースイスープレックスほどの違いがある、との意見もあるだろうけれども。
そしてもう一点は、あくまで僕の印象において、であるが、セントーンがフォールに結びつく技であるのに対しサンセットフリップは繋ぎ技であるように思えてしまうのである。これは初代タイガーのイメージもあるかとは思うのだが。マイティ井上はサンセットフリップでフォールを奪っていた記憶もあるけれども、それは何度も連発した上でのことで、一発で決まる印象はあまり、ない。
こうして僕はセントーンに軍配を上げていたのだが、サンセットフリップは知らない間にどんどん進化を遂げていた。しばらく観ぬ間に…である。
この間もTVマッチで内藤哲也がサンセットフリップを放っていたが、その場ジャンプであるのにとても高さがあり、飛び上がってまず空中で一度ピンと伸身して(なので一瞬ボディプレスにいくのかと思う)、その後前転して落下。なんであんなことが出来るのだ。運動神経が半端ではない。
さらに。
最初にグレートサスケの「セントーン・アトミコ」について少しだけ言及したが、これはつまり、セントーンと言いつつサンセットフリップではないのか。
足を前に飛んで背中から落下がセントーン。頭を前に飛んで前方回転して背中から落ちるのがサンセットフリップ。サスケのセントーン・アトミコはコーナートップから、空中で前方に回転して背面から落ちる。ならこの技はサンセットフリップに分類されるはず。
しかし、そう理屈をこねてみるものの、もはやこれはサンセットフリップとは言い難いか。
コーナーから飛ぶために、そのジャンプの高さがサンセットフリップと一線を画してしまうのだ。滞空時間があるためにいくら空中で回転しようとも、その威力のベクトルはどうしても真下へ向かって伸びる。回転によるダメージの分散などなくなる。そうなれば、もはやセントーンとしか呼べなくなってくる。
ローリングセントーンもそうだ。これには捻りが入るぶんさらにややこしい。バルキリー・スプラッシュはさらに高角度になる。引退したミラノコレクションA.T.のアルマニッシュ・エクスチェンジになると、もうパッと見ただけでは何をやってるのかわからない(何度もスロー再生してしまった)が、決まった形はセントーン。
しかし、こうしてセントーンがその場ジャンプからコーナーあるいはロープ上段に上って放たれることには、危惧も覚えるのである。
セントーンは前述したように体重が全て相手に浴びせられる危険な技。ダイビングして、ともなれば相当の負荷が相手レスラーに圧し掛かる。多少のことはしょうがないとも思うが、度を過ぎればそれは危ない。ネグロ・カサスはライト級で、しかもロープ中段やエプロンからだった。それでも「アトミコ」つまり危険度が高い技には間違いないだろう。
ジェフ・ハーディーのスワントーン・ボム。形態はサスケのセントーンアトミコと同じだと思うが、いったいなんだあれは。
ジェフがランディ・オートンに場外で放ったスワントーン・ボムを動画サイトで見たが、何だかライティングの鉄枠をよじ登って(少なくとも7、8mはあったんじゃないか)そこから飛び降りてセントーンやってたぞ。もう無茶苦茶としか言いようが無い。今のアメプロとはこういうもんか。絶句である。コーナー最上段だって危険なのに。子供が真似してマンションから飛び降りて死んだそうじゃないか。
少なくとも僕が観たいプロレスとはこういうものじゃないなあ。そんな複雑な思いもまたしてくるのである。
プロレス技って、エスカレートすればいくらでもしてしまえるものなのですね。しかし、リングから離れるのは僕は邪道であると本音では思っています。場外乱闘も実はさほど好きではない。
ジェフハーディーのようなことは…あれを至上のものとするのが今のプロレス観であるなら、僕は昭和に引きこもりたいと(汗)。
内藤はその場で勢いつけて飛んでました。ああいう技は、しっかりとしていていい。リングの中で外的要因に頼らず自らの肉体をもって技を出す。それが、本道だと思っています。
最近プロレス技の記事が書きたくてしょうがないんです(笑)。でもなかなかなぁ…。歳とって月にひと記事以上なかなか書けんぞな(汗)。
新日の内藤、良いですね。個人的に、期待してます。遠征前は裕次郎のほうが印象あったんですが・・・(苦笑)。
ジェフ・ハーディのスワントーンは私も言葉を失いましたね・・・実はカラダボロボロなんじゃないか、そしてだから今は実は試合に出られない状態なんじゃないかとか思ってしまいます。
最近気になる技としては、石森太二がスワントーンにかなり近い飛び方をしますね。
何にしても、一年前の一件から、ああいう飛び技は事故が起こらないかとドキドキしてしまうようになってしまいました・・・。