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退職オヤジのひとりごと

退職オヤジが直面する新しい日々…感動か困惑か?
カオスの日々を綴ります

九十歳。何がめでたい

2025年05月03日 03時21分46秒 | 本を読みました

佐藤愛子氏の『 九十歳。何がめでたい 』を読みました。


映画を観たことで原作に興味がありました。

2017年の年間ベストセラー総合第1位とのこと。

この本の内容は、「女性セブン」誌に載せたエッセイをまとめたものです。


一々納得で、遅読の私でも一気に読むことができました。


特に印象に残ったのは、
『若者は夢と未来に向かって前進する。老人の前進は死に向かう。』

人生の最期を我が事として感じられる年齢になったからこそ、余計に響いたのかもしれません。


「グチャグチャ飯」では不覚にも泣いてしまいました。


私の「佐藤愛子作品デビュー」。

映画を観てから原作を読むと、そのイメージのずれから一寸ガッカリすることも多いのですが、この本はとても楽しめました。


検証「地位協定」

2025年04月22日 06時59分02秒 | 本を読みました

琉球新報社・地位協定取材班の『 検証〔地位協定〕日米不平等の源流 』を読みました。


「他策ナカリシヲ・・・」とは違って、腹立たしいことが多く平常心で読むことができないことで、ことのほか時間を使いやっと読み終わりました。

この本の内容は、

はじめに
 Ⅰ 米軍ヘリ墜落事故 「主権なき国家」の実態
 Ⅱ 日米地位協定とは何か
 Ⅲ 米軍優位の「増補版」
  1 検証 日米地位協定の矛盾
  2 解説「日米地位協定の考え方・増補版」のポイント
 Ⅳ 検証 日米不平等の源流
  1 機密
  2 実態
 Ⅴ 識者が読み、語る 機密文書と地位協定
    1 識者が分析する機密文書
  2 焦点インタビュー=地位協定を問う
 Ⅵ 緊急フォーラム「日米地位協定を考える」
日米地位協定関連略年表
あとがき


特に腹立たしかったのは、「Ⅳー2実態」。
機密文書「日米地位協定の考え方」に沿って諸問題の解決にあたっているというのですが、その実態は<米軍に媚びへつらう>そのままのような気がします。

<2実態>では、
〔環境行政の壁〕環境汚染に対し米軍側が配慮しようとしていた「環境に関する協力について」環境庁が公表しなかったので、沖縄県は知るよしもなかった。
〔跡利用の影〕返還が合意された土地の所有者にVRでしか汚染された現状を見せなかった。
〔仮返還の優うつ〕PCB汚染された土地は原状回復されずに返還され、汚染土は島外に出せない。
〔地中のドラム缶〕米軍は使用済みとなったタール状油脂をドラム缶に詰め、地中に埋めた。
〔横須賀基地12号バース〕有害物質を地中に埋め、土をアスファルトで覆っただけで処理。
〔免罪符〕米本国では通用しない有害物質の処理方法で、沖縄は汚染されている。
〔米国の思惑〕あの手この手で「原状回復義務」の回避を狙う。
〔低空飛行〕高度300mの最低高度を無視し小学校上空を高度230mで飛行。(イタリアでは交渉の末実質飛行禁止にした)
〔身柄引き渡し〕米兵強盗事件の犯人は軍が拘束しなかったため、本国に逃げ帰った。
〔都市型戦闘訓練施設〕重さ5㎏の砲弾破片が住宅の屋根床板を貫通した。
〔五分の一の自動車税〕米国人の私有車両にYナンバーが付けられ自動車税が五分の一になる。
〔爆音賠償金未払い〕基地爆音訴訟の賠償金15億4千万円を日本政府が肩代わりしたが、その後地位協定では支払い義務のある米軍は未払いのまま。
〔遺跡破損〕平敷原遺跡を米空軍がレーダー建設のため破壊した。
〔基地従業員〕横田基地で、日本人従業員に人権を無視した異常な労働を強いた。
〔基地従業員ハンドブック〕福利厚生制度などの記載のある小冊子の配布を米軍側は禁止した。
〔思いやり予算〕贅沢な家族住宅で、旅行中も電気代がタダのため冷房を入れ続けろとメイドが指示された。
〔忘れられた島〕「沖縄は大変ですね」と東京・神奈川の米軍基地担当局の職員が発言。同じ基地なのに、その実態は本土と沖縄では大きく違う。

 

いつも思う『国』・・・普通に考えれば私も国の一部なのに、国側の発言と自分の考えとの乖離が甚だしいのは何故だろう・・・と。
『悪法もまた法なり』とも云いますが、法ではなく密約であることに腹が立ちます。


日米安保とアメリカ優位の地位協定を絡めて考えるから矛盾だらけになる気がします。

単純に「兵士の犯罪は国内法で罰せられる」「日本の国土を汚染させることはゆるされない」と考えたら解決への道は開けるのではないだろうか。米本土でダメなことは、日本でもダメだと思うのです。


どうも未だに抜け切れていない「占領下での奉公人根性」と、戦前にあったと思われる「兵隊さんは偉い人」的な感覚を米兵に向けている気がするのです。

 

「日米地位協定の考え方」で運用し続ける「地位協定」です。

日本にとって「安政の五ヶ国条約」にも似たこの協定を見直そうとする岩倉使節団や小村寿太郎のような人が出てきてほしいものです。

この問題を沖縄だけのものにしないためにも、多くの人が読んだ方が良い本だと感じました。


 


福島第一原発事故の「真実」

2025年04月05日 10時22分48秒 | 本を読みました

NHKメルトダウン取材班の『 福島第一原発事故の「真実」ドキュメント編 』を読みました。


3月11日に合わせて読み切ろうと思ったのですが、「他策ナカリシヲ・・・」でことのほか時間を使い、遅れて読み終わりました。

この本の内容は、

プロローグ
第1章 想定外の全電源喪失
第2章 運命のイソコン
第3章 決死隊のベント
第4章 ノーマークの水素爆発
第5章 3号機 水素爆発の恐怖
第6章 加速する連鎖 2号機の危機
第7章 使用済み核燃料の恐怖
第8章 決死への報奨
解説 執筆者一覧


内容は、福島第一原発事故での東電や官邸の対応、現場での仕事ぶりを時系列に事実を挙げたものでした。

印象に残った部分は
『・・・原発事故の際に、国や県が病院の避難を支援する仕組みはなく、県の防災計画では「避難先や搬送方法、連絡手段などは、病院が自ら確保すること」とされていた。・・・』
日本の原発には、2020年時点で全国で1万6千トンあまりの使用済み核燃料が燃料プールにたまっている。・・・六ヶ所村再処理工場は一度も本格稼働はしていない。・・・』
など、その他多くありました。


解説で、加藤陽子東大教授がふれていましたが、取材班の、今後起こるかもしれない事故に絶えられるような体制作りのために後世に記録を残したい、という意思が感じられました。
逆に、その理由が、東電内の意思決定の過程が解る記録にアクセスできない現実があり、政府中枢の原子力災害対策本部会議の議事録等が公文書として作成保存されていないということに、驚かされました。


行政の「隠蔽」だけではなく、都合の悪いことは記録さえせず、「忘却」の彼方へ追いやる体質に情けなくなりました。

あの不幸な経験を人類の財産として後世に残すことは、被害者への補償同様に大切なことだと思います。


引き続き『検証編』も読んでみようと思いました。


なぜ働いていると本が読めなくなるのか

2025年04月02日 21時35分59秒 | 本を読みました

三宅香帆氏の『 なぜ働いていると本が読めなくなるのか 』を読みました。


先日池上彰さんのTV(いま話を聞きたい30人)に著者が出演していて、この本を知りました。

番組の中で『一生かかっても図書館の本全部を読めない・・・』という発言が刺さりました。


私は高二の時、一心不乱に本を読みました。結果は1年間でおよそ100冊。
その時、通っていた街の小さな本屋さんで「自分は一生かかっても、この小さな本屋さんの本ですら読みきれない」とショックを受けた経験があったからです。(ちなみに著者は1年間で365冊読むそうです・・・スゴイ!)

番組では、自分の気持ちを言語化できないモヤモヤが、本を読むことで語彙を得て表現できるようになるとも仰ってました。


この本の内容は、

まえがき 本を読めなかったから、会社をやめました
序 章 労働と読書は両立しない?
第一章  労働を煽る自己啓発書の誕生 - 明治時代
第二章  「教養」が隔てたサラリーマン階級と労働者階級 - 大正時代
第三章  戦前サラリーマンはなぜ「円本」を買ったのか? - 昭和前期・戦中
第四章  「ビジネスマン」に読まれたベストセラー - 1950~60年代
第五章  司馬遼太郎の文庫本を読むサラリーマン - 1970年代
第六章  女たちのカルチャーセンターとミリオンセラー - 1980年代
第七章  行動と経済の時代への転換点 - 1990年代
第八章  仕事がアイデンティティになる社会 - 2000年代
第九章  読書は人生の「ノイズ」なのか? - 2010年代
最終章  「全身全霊」をやめませんか
あとがき 働きながら本を読むコツをお伝えします


いくつか印象に残った部分を挙げると
現代の労働は、労働以外の時間を犠牲にすることで成立している。
石川啄木の詩「飛行機」について・・・『高く飛んでいこうとする日本全体の国の勢いの一方で、貧困にあえぐ若者たちは絶えることはなかった。明治末期の労働者階級の読書の在り方を端的に示した詩である

教養とは、本質的には、自分から離れたところにあるものに触れることなのである。
私が提案している「半身で働く社会」とは、働いていても本が読める社会なのである。
新自由主義は決して外部から人間を強制しようとしない。むしろ競争心を煽ることで、あくまで「自分から」戦いに参加させようとする。』(そのことが燃え尽き症候群から鬱に繋がる)

著者は結論として働きながら本を読めるように半身で働こうとまとめています。

半身でいることで燃え尽きて鬱にならない社会・・・本が読める社会。

そして、ネットなどの「情報」にはない読書で得られる「ノイズ」こそが『教養』なのだとしています。
その、働くこと以外の教養を取り入れる余裕がある・・・それこそが「健全な社会」と云うことです。


私も、退職して初めて健全な社会の末席を汚せたのかもしれません。


他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス

2025年03月30日 08時29分35秒 | 本を読みました

若泉敬氏の『 他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス 』を読みました。


ハードカバー1.1㎏で、上下二段630頁もある厚手の本でした。

図書館で借りたのですが、読むのに1ヶ月かかってしまいました。(先日も記した通り、読書に対する体力が低下し、読み始めるとすぐ睡魔に襲われてしまう私です)


トランプ氏が影響を受けたと云われるニクソン大統領との交渉が中心となっていて、その窓口となったキッシンジャー補佐官とのやりとりが事細かに記されています。


内容は、
鎮魂献詞
宣誓
謝辞
第一章 ”孤独なる闘い”
第二章 「沖縄が還るまで戦後は終わらない」
第三章 隠密のホワイトハウス訪問
第四章 一九六七年日米首脳会談
第五章 幕間の一九六八年
第六章 ニクソン政権への移行期
第七章 総理の”核抜き”裁断
第八章 佐藤総理・岸元首相とニクソン大統領
第九章 ”政治的ホットライン”の開設
第十章 ”西部ホワイトハウス”サンクレメンテへの旅
第十一章 沖縄の核、そして繊維
第十二章 ニクソン大統領の”最後通牒”
第十三章 佐藤総理の対案を携えて
第十四章 ホワイトハウスでの極秘折衝
第十五章 キッシンジャー補佐官との合作した脚本
第十六章 核抜き、本土並み、七二年返還
第十七章 絡みつく繊維
第十八章 「後世史家の批評にまつのみ」
第十九章 歴史の闇の奥深く

読者の皆様へのお願い


「核時代における日本の独立と安全保障」を追求していた著者の、沖縄の理不尽な現状を踏まえた沖縄同胞への熱い思いがここ彼処にちりばめられていました。

印象に残った文章は、ハンス・J・モーゲンソー氏の
国家は自国にとっての死活的でない争点に関してはすすんで妥協しなければならない
と、福田恆存氏の引用で
民主主義とは、最も大事なことを隠すために詰まらぬことを隠さぬやうにする政治制度です。」という一節でした。

著者の「アンビバレントなニクソンにかきまわされて、それこそ世界中がアンビバレントな『分裂症状』を呈してこないよう願うものである。」には現在の世界の騒ぎがダブって見えてきました。


著者は、この本(1994年5月15日第一版)の英語版の完成稿を翻訳協力者に渡した後1996年(平成8年)7月27日、福井県鯖江市の自宅にて逝去(享年67)されました。
自死だったと云われています。

著者が出版社に要請したことに、「印税は永久に公共の利益のために役立てて欲しい」「若い世代の方々に読み継いで欲しいので絶版にしないで欲しい」とありました。


「沖縄本土復帰」という大きな外交実績を裏側で支えつつも、その実現のために密約を取り交わしたことに対する贖罪のだったのでしょうか。

巻頭には、
1945年の春より初夏、凄惨苛烈を窮めた日米沖縄攻防戦において、それぞれの大義を信じて散華した沖縄県民多数を含む彼我二十数万柱の全ての御霊に対し、謹んでご冥福を祈念し、この拙著を捧げる。
とあります。


自らの命を削って示した「記録を後世に残す」という行為に、隠蔽が横行する現在の永田町はどう感じるのでしょうか。考えながら読み進めました。