夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

東大生の京大生に対するコンプレックス

2007年04月13日 | 読書
夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
森見 登美彦
角川グループパブリッシング



の正体がわかった。
どうも、東大生は上昇志向がべたに出ているようで、京大生に対して妙なコンプレックスがあったのだが…。

同時に、これほど京都で生まれ育ち、京大を卒業した夫をうらやましいと思ったことはない。

森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』を読んだからだ。

驚くのは、20年前の話としても十分通用する普遍性だ。
妙なカタカナ言葉や流行言葉が出てこないことや、携帯電話やパソコンが出てこないことなどが全く違和感がない。

ああ、いいな、京大生、先斗町、糺の森、鴨川、高野川が舞台になる朴訥でバンカラな青春、東大では絶対成立しない。1300年の歴史と400年の歴史の違いをまざまざと思い知らされる。
(そういえば東大が舞台になった小説ってあまりないな、『三四郎』とか『されど我らが日々』くらいか?)

ただし、人間が空を飛ぶとか、ファンタジーの要素を出してしまうのは惜しい。現実に起こりうることだけでもこの面白さは出せただろうに。
それと、作者が理系のせいか、せっかくの京都の由緒ある神社仏閣自体があまり出てこないのがもったいない。
登場人物に空を飛ばせるなら、南禅寺の山門に降り立つとか、銀閣寺の月台(あれって硬くてちょっとやそっとの雨風では崩れないらしい)の上とか金閣寺の究竟頂に着地するとかにすれば良かったのに。

しかし、法学部の廊下で滑って転んで林檎を中庭にばら撒いた教授は誰だろう(知り合いが何人かいるので、想像してくすっとしてしまう)。

夫は上記のHPで作者と対談している大森望氏と同じ京大SF研出身。
結婚したとき、在京のOBでお祝い会を開いてくれたとき大森氏も来てくれた。
SF研の先輩でも農学部卒でファンタジーノベル大賞を受賞された方がいるので森見氏もSF研かもしれないと思ったが違うようだ。

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