夜明けの曳航

銀行総合職一期生、外交官配偶者等を経て大学の法学教員(ニューヨーク州弁護士でもある)に。古都の暮らしをエンジョイ中。

テクストと身体 京都芸術造形大学

2011年02月20日 | 演劇
京都に住んでいるメリットの一つとして、こういうイベントに参加しやすい(東京でもやっているだろうが、希望者が多すぎて参加しにくいだろう)ということがある。

一昨年、勤務校からも近い京都芸術造形大学で、渡邊守章の企画する「テキストと身体」という無料セミナーのシリーズがあり、参加した。渡邊氏が演習した演劇作品の映像を(全部は無理なので一部になるが)見てから、ゲストとともにトークするというもので、かなり面白かった。

下記、HPにある紹介文から。

「テクストの演出」の新しいアプローチとして、〈台詞〉と〈身体〉と〈舞台空間〉の関係を実験的に追及してきた渡邊守章の舞台は、自身の翻訳台本を作成しつつ独自の世界を切り拓いてきました。このシリーズでは、渡邊守章演出作品の記録映像を見ながら、毎回ゲストを招き「テクストと身体」のかかわりや「身体性のある言語」の創出のプロセスを追い、それらの議論を通じて舞台芸術の映像化の問題を考えていきます
[日時]


10月6日(火)18時開演
マルグリット・デュラス作『アガタ』
ゲスト:小林康夫(哲学者、東京大学大学院教授)

美術:丸田道夫、照明:服部基、衣装:渡辺園子
出演:高橋由美子、他
1998年・青山円形劇場

10月27日(火)18時開演
泉 鏡花作『天守物語』
ゲスト:佐伯順子(比較文化論、同志社大学教授)

美術:丸田道夫、照明:田中喜久夫、衣装:渡辺園子+松竹衣装(中山信弥)
出演:後藤加代、平栗あつみ、有田安理、石井英明、大谷朗、他
空中庭園制作、1998年・パリ日本文化会館

11月17日(火)18時開演
ポール・クローデル作『内濠十二景』
ゲスト:松岡心平(能楽研究、東京大学大学院教授)

照明:服部基
出演:観世榮夫、梅若晋矢、野村萬斎、河村和重、他
空中庭園制作、2003年・京都芸術劇場 春秋座

12月8日(火)18時開演
ポール・クローデル作『真昼に分かつ』
ゲスト:松浦寿輝(詩人・小説家、東京大学大学院教授)

美術:丸田道夫、照明:田中喜久夫、衣装:西村和子
出演:後藤加代、佐古雅誉、勝部演之、有川博、
演劇集団円制作、1993年・PARCO-PART3


[会場]
映像ホール(京都造形芸術大学 人間館地下1F)

[料金]
無料 要事前申し込み

□京都芸術劇場チケットセンター
  TEL 075-791-8240(平日10:00~17:00)

お問合せ 京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター
TEL 075-791-9437

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○アガタ
高橋由美子の舞台女優としての才能を改めて感じた。

○天守物語
玉三郎版は堤真一の(馬の足だが)初舞台作品である。
このとき玉三郎に「役者の才能があるから続けなさい」といわれたことが、JACで真田広之の付き人をしていた堤が本格的に役者を続けるきっかけになったそうだ。

三島由紀夫の名前も出たので、質問コーナーで、「渡邊先生はフョードルの翻訳/演出がご専門ですが、三島由紀夫がそれを翻案した『燈台』などを演出するというプランは全くなかったですか?」と質問した。

渡邊氏は、「三島由紀夫は、『歌舞伎は新劇ぽく演じるな』といいながら、歌右衛門が新劇ぽく演じると絶賛したりする人だった」という裏話を教えてくれた。

佐伯さんとは初対面だったが、共通の知り合いである文筆家の私小説のモデルではないかと疑われて困っている、という話をしていた。

○真昼に分かつ
最後の回だったので、センター長の浅田彰が来ていた。

30年近く前に会ったときとあまり変わっていないので驚いた。
そのときは、私は大学2年生、八王子セミナーハウスで当時はやりの記号論のセミナーがあり、参加した私は、浅田・中沢新一のセッションと井上ひさしのセッションに参加した。

『構造と力』に三島の『春の雪』が引用され、「皇族との婚約が決まったとたん恋人への執着が高まる」ということへの否定的評価が書いてあり、そのことで質問した。あまりはかばかしい答えは得られなかったが、非常に印象に残ったのは、浅田氏がそのとき、肉眼では見えないようなジャンパーについたゴミを下を向いてずーっと取る作業をしていたことだ。よほど潔癖症なのだとそのとき思った。

中沢氏は、かわいい女子学生だけを露骨に贔屓するのが品性を疑われる感じがした。

井上ひさし氏とも、作品でいつも弱者や差別される側に立つことについてすばらしいですと話させてもらった。

(昨年井上氏が亡くなったのはまことに残念である)

私が法学部に進学し、樋口陽一先生のゼミに入って、井上氏と親友であること、『青葉繁れる』に出てくる秀才のモデルは樋口先生であることを知るのはもう少し先のことである。

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