サイコキネシスは足軽が最も得意としてる力だ。実際、足軽の力の源泉ともいえるかもしれない。なにせ一番最初に起こった超常が体が浮くという事だった。
あれは今思えば夢だったみたいにも思える。けど確かにあれがきっかけだった。それは確実だ。そして小さな小さな力を強くしていった。それを考えたら……
「今の世界で目覚めてる力ってなんかずるくね?」
そうふとつぶやいてしまった。だって……だ。だって野々野足軽は苦労したのだ。いやもちろん強力な力に目覚めて制御できないととんでもない事件を起こしてしまってそれがトラウマになってしまう……という事も起こってる。
足軽やアース、それに天使っ子や悪魔っ子が奔走することでそれをなんとか少なくしてるが、ゼロに出来てるわけじゃない。それもこれもいきなり強力な力が目覚めてるのが悪いだろう。
それこそ最初期の足軽の力みたいに、めっちゃ弱かったらトラウマレベルの事件なんて起こしようもなかった。最初の足軽のサイコキネシスなんてせいぜいテッシュを一枚引き寄せることにさえ「ひいひい」と言ってたのだ。
なのに今目覚めてる力はどうだ? いきなり周囲を焼き尽くすような炎を体から発露したり、いきなり音速を超えるスピードを出せたり……いきなり若返ったり……どれもこれも強力だ。若返るとか、今の足軽にだってできないことだ。
そんな力をいきなり発現してるのだ。ここからさらに成長するとなると、一体どうなるのか……恐ろしくもある。
「があああああ!」
「うがあああああああ!!」
空中に縫い留めてるサルがその凶器のような牙をむき出しにして足軽に唾を飛ばしてくる。いや、本当なら食い殺そうとしてるんだろう。いやその前段階の食いつこうとしてる。
でもできない。足軽のサイコキネシスをどうやってもぬけだせないからだ。単純な力……筋力とかでいうなら、人間よりもデカいサルである彼らの方が強いだろう。
それこそこのサルたちは乗用車くらいなら簡単に持ち上げて投げるくらいできそうなサイズをしてる。もちろんそんなのはただの高校生の力ではできない。
けど筋力では圧倒的に負けてたとしても、超能力では負けない。その自負がある足軽だ。
「お前たちが何者かとか、そんなのは興味なんてないんだけど……このまま俺たちにちょっかいをかけ続けるのなら……」
足軽は月を背にしてる。そしてその身からあふれる異様なほどの力の本流。それをこのサルたちは感じられるだろう。なにせ野生としての感覚がある。それは人間という社会に染まった存在よりも彼らは鋭敏に持ってるはずだ。
「殺す」
サイコキネシスで縛ってるはずなのに歯を鳴らしてガクガクしだすサルたち。そして二匹くらいはそのまま白目をむいてしまった。