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ベランダ蘭

灼熱と強風のベランダで健気に育つランの観察

2018/08/11 (土): カシノキラン 素心

2018-08-11 | 単茎性着生ラン
前日8/10のベランダの日中最高38℃、夜間最低28℃
今日は晴れたり曇ったり小雨が降ったり。



カシノキラン Gastrochilus japonicus の素心品種、福娘(ふくむすめ)が満開。
2018年5月に春秋園から購入。



ミズゴケ植えで購入したのでそのまま育てているが、下垂性なので花がミズゴケについてしまうのが惜しいところ。



カシノキランは湿気を好むそうなので、着生にするとベランダでは乾きすぎて弱りそうだし、
ミズゴケ植えのまま、鉢ごと傾けるのがいいのかな?



この方が自然な姿っぽい気がする。
ただし、傾けただけでは鉢底穴から水が抜けにくくなるので、別の穴を開けるか、穴あき鉢を使わないと。



株元からは仔芽が一つ出てきた。



同じ花を正面、斜め、真横から撮影。
花の唇弁は、ポッカリと口を開けた袋状で面白い形態。
花粉を運ぶ訪花昆虫は、どういう形ではまり込むのだろうか?

コチョウラン原種 (象鼻蘭) x ボウラン 交配 (Phal. zhejiangensis x Luisia teres)

2018-07-25 | 単茎性着生ラン
象鼻蘭 x ボウランの交配(Phalaenopsis zhajiangensis x Luisia teres)です。
2017年6月に有限会社石井から購入。



象鼻蘭とは、中国の浙江省(Zhejiang province)に分布するコチョウラン属の小型原種のようです(orchidspecies.comの解説)。
Nothodoritis属やDoritis属に分類されたこともありましたが、今はPhalaenopsisに統合されています。
ボウラン属 Luisia との交配により、Luinopsis属ということになりますが、サンダースリストには未登録のようです。
有限会社石井さんの説明によると、彼の後輩にあたる人が交配作出したものだとか。

象鼻蘭はその名の通り、ずい柱の先端が象の鼻(あるいは昆虫の吻:ふん)のようにピョロッと伸びた、ユニークな花形態をもちます。
電脳中年Aさんのブログ「怠け者の散歩道」の象鼻蘭の記事の写真が分かりやすいです。



この交配種では、その表現型はだいぶ弱まっているものの、少し伸長したずい柱を見ることができます(白の矢じり)。
葯帽(白の点線)は、伸びているわけではないようです。



ボウランと言えばやはり棒状の葉身が特徴ですが、この交配種も一見するとボウランのような棒状の葉型をしています。
ボウランとフウランの交配である Luisanda Rumrill や、ボウランとナゴランの交配である Luinopsis Furusei でも同様です。
葉幅を細くするという性質に関して、ボウランの遺伝的な影響が強いことが窺えます。



しかし良く観察すると、ボウランとはやはり別物だということが分かります。
ボウランの葉身が完全に棒状で、葉裏側だけで構成された、単面葉(たんめんよう)と呼ばれる形態なのに対して、
この交配種の葉身には、葉表側に対応する明らかな溝があります。これもまた、上記の他のボウラン交配種と同じです。
葉の表側と裏側を持つ(通常の大多数の)形態は、両面葉(りょうめんよう)と呼ばれます。

葉幅のコントロール(ボウラン優性)と、単面葉の形成(ボウラン劣性?)は、少なくともF1世代では異なる遺伝様式を示すと言え、
複数の遺伝子が、ボウランと通常のランとの葉型の違いを作りだしていると推測されます。
このLuinopsisのセルフ実生をして、F2世代でどのような表現型が分離するかを観察すれば、さらに面白そうです。
(ただし異なる属に分類されるほど系統的に類縁が離れているので、染色体数が違ったりしたらややこしいことになりそう)



根はザラザラとした表面で、ボウランの性質が強く表れています。

7/24のベランダの日中最高39℃、夜間最低27℃。
幸いにも夜に集中的な雨雲に当たり、久しぶりの降雨でだいぶ涼しくなりました。
早くもツクツクボウシ Meimuna opalifera の初鳴きを確認。夏休みも終わりですね(違う)。

猛暑の影響2つ(Ame. philippinensis 枯死 & Van. Pinky ルビー根?)

2018-07-23 | 単茎性着生ラン
アメシエラ フィリピネンシス Amesiella philipplinensis です。
前回から2ヶ月。

 2018/7/21撮影

連日の猛暑に耐えられず(そして私の対処不足で)、枯らしてしまいました。

 2018/7/19撮影

数日前までは緑色だった(円内)証拠写真もあり、さらに言うと当日朝も異変には気付かなかったのですが、
日中に一気に限界を迎えてしまったようです。かわいそうなことをしました。

 2018/7/22撮影

根もしなびているので、脇芽を吹くのも難しそうです。
昨年はベランダの同じ位置で無事に夏越しできたので、今年もと楽観していましたが、今回の暑さには無理があったようです。

高温の指標となるVandachostylis Pinky 'New Star'の根先の色はと言うと、



一週間前よりさらに色が冴えて、濡れるような透明感すらあります。もはやルビー根?
それでも元気いっぱいに伸びてはいるのですが、Pinkyの根先がこうなったら、他の弱い蘭にとっては危険信号ということでしょう。
あー、悔しいなあ。

7/22のベランダの日中最高39.5℃、夜間最低29.5℃。

バンダコスティリス ピンキー ニュースター (Vandachostylis Pinky 'New Star')

2018-07-17 | 単茎性着生ラン
フウラン Vanda falcata と東南アジア産の Rhynchostylis gigantea の交配種、Vandachostylis Pinky 'New Star' です。
2015年1月に大場蘭園から購入。

 2018年3月31日撮影

片親のRhy. giganteaは高温要求性ですが、フウランとの交配によって耐寒性を獲得し、室内であれば無加温(最低5~10℃)でも十分に越冬します。
丈夫で花付きの良い品種です。



成長期には釣り下げて育てています。



その理由がこの奔放に伸びる根で、飛び出した根をスリットに誘引しているものの、もはや平面に置いて安定させるのは難しいです。



Van. Pinkyの一般的性質なのか、この個体だけなのかわかりませんが、根先の色が季節によって変化します。
通常(左)はフウランで言う濃い泥根(クロロフィルの緑、カロテノイドの黄、アントシアニンの赤紫の混合した茶色)ですが、
最近のように極度の高温期(右)には赤みが冴えます。緑色のクロロフィルが減少しているためと考えられます。



根先の変化と対応するように、高温期には、新葉も少し曙虎斑芸っぽくクロロフィルが抜けて伸びます。
フウランだったならば、こんな変化でも珍重されることでしょう。
実際にいくつかのルビー根品種や建国系の中には、真夏に芸が冴えるものがいくつか知られているようです。

このような季節的な変化はどうして生じるのでしょうか?
私の予想では、クロロフィル合成に関わるタンパク質の何かに、アミノ酸配列をわずかに変えるような突然変異が入っていると考えます。
それでも通常の気温ならば正常に機能できるものの、温度が高くなるとタンパク質の構造が不安定化してしまい、
クロロフィル合成の効率が落ちてしまうとか、そういったメカニズムがあるのではないかと推測できます。
このような「温度感受性」の突然変異は、モデル生物を用いた遺伝学でも頻出する、重要な研究材料です。

7/16のベランダの日中最高36℃、夜間最低29℃。
Phal. Arakaki World Dreamの葉が日焼けし始めていることに気付きました。危ない危ない!
7/17朝に大幅に鉢の配置を転換し、とにかく強光に弱いものを日陰へ移しました。

エランギス ファスツオサ (Aerangis fastuosa)

2018-07-13 | 単茎性着生ラン
マダガスカル原産の単茎性着生ラン、Aerangis fastuosa です。
2017年1月に中藤洋蘭園から購入。

 2018/3/22撮影

白く清楚な花です。
少し老化が始まっていますが、花弁の縁から局所的に褐変し始める点は、他の蘭の花が全体的に萎れるのと違っています。
欠点を言えば、花茎や花柄(子房)があまり伸びないため、株元で固まって、傾いて咲くので写真が撮りにくいです。
もっと素直に伸びる系統もあるのでしょうか?

 2018/3/22撮影

夜に香る純白花で長い距を持つ点は、フウランやAngraecumと同じように、スズメガ媒に適応した送粉シンドロームと予想されます。
ただし上記の花茎が伸びにくい性質のため、距の先端が行き場を失ってクネクネと折れ曲がってしまうのが悩みです。
Aer.fastuosaの花の香りは、芳香と言われていますが、可もなく不可もなくという感想です。フウランの香りの方が好みです。



アフリカ系のランを真面目に育てるのは初めてで、多少慣れているアジア系のランとの違いに、色々と驚かされています。
(真面目というのは真剣に観察してフィードバック調節するという意味で、不真面目にやって枯らしたことなら、過去に数株の前科が…)

現在の様子ですが、上部と下部の葉で大きさが異なっています。
上部の、後に出た葉ほど小さく、要は現在の生育環境では十分に大きくなれないことを意味します。
しかし小さくなり続ける訳ではなく、小さいサイズで安定しているようなので、注意深く推移を見守っているところです。



購入時と比べると、わずか1年半で5枚の新葉が出ていることが分かりました。ナゴランと比べると成長が早いようです。



葉の表面の質感も驚きでした。
新葉はツヤツヤとした平滑な表面ですが、3枚目以降になると葉の表面がシワシワ、ザラザラになります。
最初は水が足りないのかと慌てて湿度を保つ工夫などしてみましたが、どうやらこれが普通のようです。ナゴランの常識が通用しません。



極めつけが根。(あー、ダンゴムシが写っている…)
なんと黒くて細いのです。購入時にギョッとして、思わず「これ根が腐ってないですか?」と業者さんに質問してしまったくらい異様。
着生ランの根は、ベラーメン層が発達して白く太いのが当たり前だと思っていただけに、こんなのがあるのかと大変驚きました。
とは言っても、アフリカ系の着生ランにも白くて太い根を持つ種類もありますし、Aer.fastuosaの特徴だけで一般化できません。
ラン科植物の多様性は、一種類ずつ地道に知ることで分かってくるのですね。

ナゴラン (Phalaenopsis japonica)

2018-07-05 | 単茎性着生ラン
ナゴラン (Phalaenopsis japonica) です。
かつてはAerides属に分類され、独立してSedirea属になり(Aeridesの逆書き)、近年にPhalaenopsis属(コチョウラン属)に統合されました。
日本に自生する唯一かつ世界北限のコチョウラン属であり、日本海側の福井県や、島根県の隠岐島が北限だそうです。
2015年5月、中山植物園から購入。実生苗なので産地は不明。

 2018/4/28撮影

淡い黄緑の地に、赤紫のストライプとスポットが入り、清楚さと華やかさをあわせもつ魅力的な花です。
中学生の時にネジバナを出発点に蘭に入りこみ、図書館で片っ端から野生蘭の本を読む中で、特にナゴランとセッコクに惹かれたのを覚えています。
(そう言えばその頃は、ナゴランと比べると地味なフウランの花には魅力を感じていなかったなあ)
しかし学生の時に買ったナゴランは割とすぐ枯らし、これは久々に入手した2代目です。今のところ4年連続開花。
以前に紹介した素心ナゴランと合わせて、大事にしていきたいです。



昨年ごろから、上で新しく出る葉ほど小さめになってきて、少し心配しています。



その原因はこの仔芽かもしれません。こっちに栄養をとられているのでしょう。

通常、ナゴランは滅多に仔芽を出さないことが知られていて、実生苗が大量生産されるまでは増殖困難でした。
栽培上手な方のブログを見ていると、たくさん仔芽を出した大株のナゴランの写真を見ることができますが、その秘訣は不明です。
初めて出たこの仔芽の成長を、興味深く見守っていきたいと思います。

アメシエラ フィリピネンシス (Amesiella philippinensis)

2018-05-24 | 単茎性着生ラン
Amesiella philippinensisです。
2017年1月に国際園芸から購入しました。

 2018/2/11撮影

原産地はフィリピンのルソン島。
同属には、より高標高に分布するAmesiella monticolaがあり、純白でとても距が長く、香りのある花を咲かせることが知られています。
今回紹介している私の株、実はmonticolaとして購入したものなのですが、花が咲いてみたらphilippinensisでした。
(その名残りでラベルにはmonticolaと書かれています)
philippinensisは唇弁内側の左右に黄色のスポットが入り、距がやや短く、香りは感じられません。

希望すれば返品交換もできたのですが、いわゆるクール種(暑さに弱い)のmonticolaを私のベランダで育てられるのか
不安になり、まずはAmesiella属を知るために、そのままphilippinensisを育て続けることにしました。
無事に夏越しして、二回目の開花を迎えたのが写真です。フウランより若干暗めのナゴランと同じ管理で大丈夫でした。

 2017/12/5撮影

秋からは室内の私の机の上に置き、普通の読書用の卓上用LEDライトを就寝時以外はずっと点灯して特別扱いしていました。
そうしたら3本も花茎が出てきてしまい、株の体力温存のために1本に絞りました。

 2018/2/11撮影

比較的monticolaより短いとは言っても、十分に存在感のある距です。
分類の異なるフウラン(Vanda属)やAngraecum属、Aerangis属の花に、一見すると似ています。
光を反射する白い花、長い距、甘い香りが共通しています。

 2018/2/11撮影

推測ですが、Amesiellaもまたおそらく、夜行性で口吻(ストロー)が長いスズメガのような花粉媒介昆虫に適応しており、
収斂進化によって「送粉シンドローム」と呼ばれる、多岐にわたる花の形質が似てきたのでしょう。

ただし、monticolaに関してはそれで説明できそうだとしても、philippinensisはどうでしょう?
香りの喪失と唇弁の黄色いスポットは、夜間の嗅覚でなく、日中の視覚にもとづいた昆虫の誘引をしているのかもしれません。
対するスズメガにも、ホウジャク類やオオスカシバなど昼行性の種類がいることから、そういった種類が送粉しているのでしょうか?
ダーウィンを気取ってみたくなる、Amesiella philippinensisです。

ナゴラン素心 (Phalaenopsis (syn. Sedirea) japonica fma. alba)

2018-05-18 | 単茎性着生ラン
育てている植物が多くなりすぎたので、経過観察のためにブログにしてみます。



ナゴラン (Phalaenopsis japonica) の素心です。 素心というのは東洋蘭の用語で、花からアントシアニン色素が抜けたものです。

通常のナゴランは、右のように萼片と唇弁に模様が入ります。
こうやって並べてみると、唇弁のフリルの大きさも違いますね。



素心は要するに突然変異なので、通常のナゴランと比べると数が少なくて入手機会も限られています。
葉が黄色い曙芸の素心ナゴランは多少出回っていますが、青葉の素心ナゴランはプロの業者も驚くほど、本当に珍しい。
確か私が初めて知ったのは、中学生の時に読んだ『野生蘭の栽培と増殖』という本の写真でした。
それから長いこと経ちましたが、2年前にヤフオクで実生の子苗を落札して購入。
極小の苗にすでに花芽がついていましたが、葉の成長を優先させるために切除。その翌年に出た花芽も切除。

今年はなんと花芽が2本も出てきました。とにかくやたらに咲きたがる性質があるようです。
そこで花茎1本を残し、さらに途中で折って、2花だけ咲かせました。
まだ小さい葉が3枚しかなく、どうにか花より株を大きく充実させたいものです。(写真を撮った後、速攻で花は切り取りました)

こんな感じでうちの植物を観察していきます。
しかし飽きっぽいのであまり更新しないかもしれません。