ベランダ蘭

灼熱と強風のベランダで健気に育つランの観察

2018/09/21 (金): デンファレ Den. Enobi Purple 'Splash' 続

2018-09-21 | デンドロビウム
最近は雨続きです。
うちのベランダは最上階で屋根が無く(ルーフバルコニーとか言えるほど上等ではないですが)、お陰で水やりの必要がないのですが、
ガラス戸を開けたとたんに室内まで雨が降りこむので、観察もしにくく不便です。



Dendrobium Enobi Purple 'Splash' の清楚な方こと、「株A」が咲きました。
詳しくは2018/6/1の記事参照。



派手な方の株Bと並べて撮影。

株AとBの違いはメリクロンによって生じたようですが、
株Bがオーソドックスな周縁キメラ (periclinal chimera) なのに対して、株Aは不完全周縁キメラ (mericlinal chimera) というタイプなのでしょうか?
不完全と言っても、株Aは去年と同様の花を咲かせたので、不安定なわけではないのかも。
フウランでも、同じ様に不完全周縁キメラと思われる「耳摺り(みみずり)覆輪」タイプの斑はかなり安定に仔株に伝わりますし、
不思議です。

2018/08/09 (木): Dockrillia linguiformis

2018-08-09 | デンドロビウム
前日8/8のベランダの日中最高温度は不明(25℃くらい?)、夜間最低21℃
台風13号は当地をかすめて通り、特に被害なしで済んだ。

屋内に取り込んでいた植物を、元の配置に戻す。

Dockrillia linguiformis は前回から2ヶ月半。
台風前の取り込みの時に発覚したが、一つの枝が腐って落葉してしまった。



コルクに新根が着生しやすいようにと、ちょっと無理な力をかけて密着させていた箇所だったので、
熱せられたコルクの高温が直に伝わったか、空気の流れが悪くなってしまったのかもしれない。



緑:落葉痕。
橙:茎をコルクに密着させるために、狭い窪みに押し込んだリードバルブの葉。これも基部から腐っている。
紫:せっかく意図どおりにコルクに着生したものの、高温で腐ったらしい根。



他の枝は、新しい葉も根も出て順調そう。

強すぎる日射から守ろうと、屋外より高温の室内に置いて蒸らしてしまった Paph. delenatii 然り、
新芽の伸長方向を「尊重」して、鉢の縁に潜りこむような形になって腐ったクスクスラン然り、
良かれと思って、優先条件を間違えて失敗することが重なっている。勉強が足りないなあ。

2018/08/02 (木): Den. Angel Baby 'Green Ai' など

2018-08-02 | デンドロビウム
前日8/1のベランダの日中最高39℃、夜間最低29.5℃
今日も破壊的と言える猛暑。

春に咲かなかった Dendrobium Angel Baby 'Green Ai' が今になって狂い咲き。



しかし開花した途端に花弁が萎れてしまっている。暑すぎるのだろうな。

Dendrobium loddigesii 白中透けの新葉が緑色で出るようになってきた。



昨年も、春は天冴えで夏は後冴えだったので、とりあえず再現性のある現象のようだ。
温度感受性変異、それも温度が高いほど正常に機能してクロロフィルを合成できるタイプの斑なのだろうか。
秋になって気温が低下すると、再び異常が現れて斑が冴えてくるとか?

Luisanda Rumrill (フウラン Vanda falcata x ボウラン Luisia teres 交配) の素焼き鉢に、シダの前葉体がたくさん出ていた。



おそらくミヤマムギラン鉢のイノモトソウから胞子が飛んだものだろう。
鉢の通気性が悪くなるだけなので、洗い落とすけども。ちょっと面白かったので撮影。

Paphiopedilum delenatii の新芽が茶色く腐って回復は難しそう。今夏2株目の昇天。



日焼けをおそれて室内に入れていたが、エアコン無しでは屋外よりも高温になっていたから当然か。
優先順位を間違えていた・・・

Dendrobium Rainbow Dance の高芽も、元々小さくて弱いのが2つほど枯れた。

乾燥でハダニ Tetranychidae sp. が発生してきた。
薄い葉のデンドロビウムやシンビジウムやアマナランなどについている。



普通ハダニは動きが遅いものだけど、この種は結構すばやく歩き回っている。つまり広がりやすいということ。
急いで殺ダニ剤を購入する。

いくつかの植物の病班にダコニール塗った。
余りは希釈して適当にスプレー。



============================

公園の方面から、クマゼミ Cryptotympana facialis の鳴き声が聞こえていた。
関西に住んでいた時は当たり前だったけれど、関東では珍しい。
逆にミンミンゼミ Hyalessa maculaticollis は関西では少ない(沢が流れるような自然な森にしかいない)一方で、関東では街中のどこにでもいる。
生息地の選好性が地域分化しているのだろうか?

デンドロビウム プラティガストリウム (Dendrobium platygastrium)

2018-07-27 | デンドロビウム
デンドロビウム属の原種、Dendrobium platygastriumです(orchidspecies.comの解説
2017年2月の世界らん展にて、台湾の吳祚雄蘭園(Joseph Wu Orchids)から購入。

 2018/5/13撮影

ニューギニア原産で高温性の種類とのことですが、割とうまく作上がりして大きなバルブが育ちました。
今春、つぼみがついてここまで大きくなったのですが、

 2018/5/13撮影

この数日後にはしけて(枯れて)しまいました。
葉の病班の近くにあったのが良くなくて感染してしまったのでしょうか。残念・・・

 2017/11/9撮影

種小名のplatygastriumは、ラテン語で platy(板状の)gastrium(お腹)という意味らしいです。
正面から見ると典型的なデンドロビウムのバルブですが(左)、90度横向きから見ると、ペッタリと平板のようです。
なぜ「お腹」なのかは分かりませんが。
近縁種の Den. platycaulon(板状の茎)は、もっと分かりやすいネーミングですね。

通常の植物の茎は多くが放射相称で、断面が円形や多角形なのですが、
クジャクサボテンやカンキチクのように、平板な茎がいくつかの系統で見られ、何回か独立に進化したことが推察されます。
どのような適応的意義があるのか、いつか自生しているところを見てみたいものです。
そしてまた発生生物学的にも興味深い題材です。茎頂分裂組織はどうなっているのでしょうか?



根は表面が細かなイボイボ、ザラザラで覆われています。
私はこの質感を見てスズメガの幼虫の尾角(びかく:体の後端にある角)を連想してしまいます。モモスズメとか。
虫好きな人は画像検索でもしてみてください。



現在は、今年の新芽が伸長中です。
来年こそは開花を見たいです。

7/26のベランダの日中最高32.5℃、夜間最低24.5℃。ついに夜温が25℃を切りました。
この数週間で体がかなり高温に慣れてしまい、エアコンなしで非常に快適です。
しかし明日には台風12号が来る予定。

デンドロビウム フィンブリアタム 斑入り (Dendrobium fimbriatum variegated)

2018-07-19 | デンドロビウム
デンドロビウム属の原種、Dendrobium fimbriatum の白覆輪です。
2017年6月、ヤフオクで趣味家の出品を落札して購入。

 2018/7/2撮影

シャープな葉型に、切れの良い白覆輪が入ります。

 2018/7/2撮影

シュートの先端部において、節が伸びるよりも前に葉が次々と形成されています。
Den. nobileなどのように順繰りに、前の葉の節が伸びてから次の葉が形成されるのとは性質が異なるようで、新鮮です。
この種は Holochrysa節 (Section) に属し、Den. nobileなどを含む Dendrobium節とは属内の分類が違うためかもしれません。

 2018/5/19撮影

この斑入り個体は、春の芽出しの一時期だけ白覆輪にアントシアニン(古典園芸用語で紅隈)を乗せ、とても美しいです。

 2018/5/19撮影

入手から一年ちょっとしか経っていないのはともかく、今春は開花しなかったのが残念なところです。
しかし先日の第58回蘭友会らん展(@池袋)にて、Den. fimbriatum の開花株を見て、その理由を察しました。

 2018/5/17撮影
Den. fimbriatum 'Gina' やまはる園芸出品

でかい。
天井につっかえるほど、でかい。高さ2メートル超と推測されます。
比較的短いバルブにも花はついていますが、これも1メートルくらいはありそうです。これが開花サイズなのでしょうか?
うちの斑入り個体は高さ40センチくらいなので、株が成熟するまで、まだ時間がかかりそうです。

7/18のベランダの日中最高38.5℃、夜間最低30℃。
葉焼けや腐りの兆候がいくつか出てきています。
せめて特に大事な株を守るように、さらに植物の配置を入れ替え。
この暑さが来週以降も続くのでしょうか。

デンドロビウム ハーベイアナム (Dendrobium harveyanum)

2018-07-11 | デンドロビウム
デンドロビウム属の原種、Dendrobium harveyanum です(系統は 'Super Moon' x sib.)
2017年2月にワカヤマオーキッドから購入。

 2017/3/31撮影

この写真の花は購入時に出ていた花芽が伸長して開花しただけで、まだ私の栽培によるとは言えません。

 2017/3/31撮影

唇弁と側花弁の周縁が、糸のように細かく枝分かれして伸長しています。
なんと精緻な構造でしょう。
これと同じく精密なカラスウリの花弁も不思議ですが、一体どのような昆虫を呼びよせるために進化したのでしょうか?

 2018/7/11撮影

これまでharveyanumは栽培がやや難しいとされていましたが、この実生系統は今までのharveyanumとは段違いに丈夫な性質だそうで
新芽の上からビシャビシャ水をかけても、40℃に達するベランダでも、少なくとも1年半は問題なく生存して作上がりしつつあります。
ただし植え替えを嫌うそうで、まだ当面は植え替えないようにと購入時にワカヤマオーキッドさんから言われました。
黒いプラ鉢に、ガッチリと固く詰めたミズゴケ植えで、乾燥しにくく過湿にもなりにくい植え方です。

 2018/7/11撮影

底穴から根が伸びてきたので、素焼き鉢にはめて底上げし、空間を作っています。

 2018/7/11撮影

上の写真で開花していたのが中央の小さなバルブ(2016年成長→2017年開花)。
そこから作上がりして、より大きなバルブができたのですが(2017年成長分)残念ながら今春は咲きませんでした。
開花を誘導するには、もっと冬季の寒さと乾燥にさらす必要があったのでしょうか。それなりに遅くまで屋外に置いていたのですが。
ともあれ、今年はもっと大きなバルブになってくれそうです(2018年成長分)。
来春こそは初めての自力開花に成功したいものです。

キバナノセッコク (Dendrobium catenatum)

2018-07-03 | デンドロビウム
日本産デンドロビウム属(セッコク属)の原種、キバナノセッコク Dendrobium catenatum です。
2015年5月、伴園芸から購入。四国(高知?)産からの増殖株とのこと。

 2018/5/27撮影

以前まで、牧野富太郎が土佐にちなんで1891年に学名記載したDendrobium tosaense(デンドロビウム・トサエンセ)として知られていました。
ところが、それより前の1830年に記載された中国産のcatenatumと同種であったとして、最近ではそちらに統合されたようです。
実際にどのような相違があるのかについて、分類の詳細は不勉強で、私にはこれ以上コメントできません。
もう一つの近縁種(またはこれも同種?)が、中国産の鉄皮セッコク Dendrobium officinaleです。こちらは1936年記載。

 2017/6/16撮影

豪華な花付きです。
3~7花をつけた花茎をバルブの各節から出します。
また2年以上前の古いバルブでも、それまでに咲かなかった節の花芽が休眠から覚めて咲くことがよくあり、経年するごとに豪華になります。



現在は花も終わって新芽が成長中です。今年はたった2本。
本当は前年のバルブ3本からそれぞれ1本ずつ出てくるはずだったのですが、1つの芽が冬越し中にダメになったらしく、減りました。
購入時から3本立ちで、頑なに毎年1本ずつだけバルブ更新してきたので、今年の2芽への減少は痛いところです。

ブログ「蘭の国から」さんにおいて、このキバナノセッコクの増殖のテクニック(矢伏せ法)が紹介されていました。
非常に有効そうな手段ですが、私としては鉢数を増やしたい訳ではないので、使うことはないかと考えていました。
できれば1鉢のまま大株にしたい、と思っていた訳なのですが、どうやら私の栽培技術+環境では過ぎた願いだったようで
2芽しかない現状では、なりふり構っていられません。
矢伏せ法によって少しでも増殖し、絶種を回避しようと考え直しています(ということを決心したばかりで、まだ行ってないのですが)。

デンドロビウム カシオープ 斑入り (Dendrobium Cassiope, variegated)

2018-06-29 | デンドロビウム
デンドロビウム カシオープ (Dendrobium Cassiope) の斑入りです。
Den. Cassiopeとは、ノビレ Den. nobile とセッコク Den. moniliforme の交配種だということで、原種ではありません。
2016年10月に高橋洋ラン園から購入。
ちなみに高橋さんは以前、『自然と野生ラン』誌で斑入り洋蘭の紹介記事を連載されていました。



左の葉から右の葉までの最大幅(リーフスパン)が14.5 cm。葉幅は1.8 cm。
セッコク(長生蘭)では有り得ない大きな葉に、深い紺覆輪と白中透けのコントラストが鮮烈です。
葉幅が広すぎないのも、切れ味の良さととらえることが出来て、それもまた良いです。
私の育てている植物の中で、秀麗という言葉が最も似あう品種であり、現実離れした美しさがあると思います。
例えるならば、宝塚歌劇の男装スターのよう。(私は宝塚を実際に観たことが無いので、想像上のイメージですが)



去年のバルブの葉(先端を切っている)では中透けが薄緑色にくすんでおり、後暗みの性質があることがわかります。
私が購入するまで年にバルブ1本で更新していたようですが、去年作上がりし、今年ついに奴芽(やっこめ:2本の新芽)で出てきました。



後暗みはバルブについても同様で、初年度は橙黄色に透けた飴矢(あめや)、2年目で緑色が薄く乗りだし、3年目以降では濃い赤褐色です。
キバナノセッコク系の交配種(三冠王など)と異なり、バルブは下垂せずにしっかり直立します。

斑の後暗みを、惜しい欠点ととらえることもできると思います。
長生蘭でも、人気品種と言えば斑が長く残るもので、後暗みの品種はそれらと比べると一段劣る印象です。
しかし私はあえて、この色の変化こそが、このCassiopeの魅力をさらに増しているのではないかと主張したいです。
自然な成熟に身をまかせることで、若い美しさがかえって際立つと思うのです。
何だかもう、べた褒めですね。

唯一残念なのは、花が咲きにくいのかまだ開花を見ていません。
まだ一年半しか育てていないので、これから。

デンドロビウム ワーディアナム (Dendrobium wardianum)

2018-06-25 | デンドロビウム
デンドロビウム属の原種、Dendrobium wardianumです。
2017年2月に国際園芸から購入。

 2018/3/31撮影

ラベルには単にsiblingと書かれ、選別系統とかではありませんが、私にとっては十分にきれいです。
そもそもはネットで見たwardianumの写真に惹かれ、深く考えずに(実物を見ずに)世界らん展での購入予約をしたのですが・・・

 2018/4/3撮影

うちのベランダでは未経験の大きさでした。
大きさを表現する写真に慣れておらず、全体を写そうとしてこんな変なアングルに。
購入した時点で高さ60センチくらいで、予想以上に大きいなと思っていたのですが、
そこから1年目に伸びた新バルブは1メートル越え(写真で花が咲いているバルブ:緑色の支柱が90センチ)。
左手前の斑入りが、うちでは大きな部類のDen nobile 'Sakura'です。
右奥にごちゃごちゃと固まっているのが、2.5号鉢の富貴蘭など。これらがうちの「通常サイズ」と言えます。

6月現在、2年目で出たバルブ2芽はすでに大きい方が90センチ、小さい方が40センチくらいに達しています。
これは秋までに、あと30センチくらいは確実に伸びるでしょう。もしかしたら1.5メートルに届くかも。
強風で倒れると周りの植物を巻き込む被害が出るので、素焼き鉢や駄温鉢を3重に重ねてようやく安定させています。

 2018/6/23撮影

先日のサンシャイン蘭展にて、国際園芸さんに「wardianumってどれだけ大きくなるんですか?」と訊いたところ、
2メートルくらいにはなります、とのこと。(それくらいは珍しくないでしょうという空気を感じた)
野生本来の姿に近づけるならば、2メートルを直立でなく吊って下垂させて育てるので、どれだけの高さがいるのやら・・・
温室とベランダ園芸とのスケールの違いを実感する種類となりました。

同じミズゴケに植えて同じように水やりしているのに、なぜこのように成長スピードが種間で違うのでしょう?
大きい種類の成長能力が単純に高いのか、小さい種類がわざと成長を抑えているのか。
理屈で考えれば後者ですが、大きい種類(=小さくなる必要がない種類)での本気を出した成長は、植物の生命力を再認識させてくれます。
ベランダのミニサイズの植物ばかり見慣れてしまって、それらの成長が普通のスピードだと錯覚していたかもしれません。

小学校でヒマワリを育てた気持ちを思い出して、Arundina属、Sobralia属、Thunia属とかを育ててみましょうか。

秋葉原駅前にデンドロビウム入り化粧品の広告!? (Cosmetics with Dendrobium extract ?)

2018-06-21 | デンドロビウム
東京の秋葉原駅前(電気街口)にいくつか設置してある円柱形の広告に、蘭好きとして見逃せないポスターが貼られていました。
「セッコク蘭仙草」とやらを使った化粧品の広告!



鉄皮セッコク (Dendrobium officinale) でしょうね。
何でまだ開花する段階じゃない新芽の写真と花を組み合わせてるんだ、というツッコミどころはともかく、
左下の花は素心のように見えます。ずい柱に点があるから準素心か?



アンチエイジングの効能をうたっている製品でしょうか?
右奥にAKB48カフェがちらっと見えています。



このブランドは、化粧品メーカーと中国科学院の昆明植物研究所がコラボしたものとのこと。
しかし「植物ドクタ研究センター」の訳がなあ・・・ あちらの研究者の人が自力でかっこよく日本語訳しようとしたのかしら。
昆明植物研究所そのままで良いと思うのですが。