カリフォルニア便り ーFROM OQ STUDIOー

~南カリフォルニアから~
陶芸家の器と料理、時々王様の日々

扇形のピアス

2011年10月31日 | Fashion

私が扇形のピアスの魅力に注目致しましたのは、この夏のクルーズでのことです。

その夜はフォーマルディナーでした。

フォーマルと申しましても、ドレスコードはブラックタイでは有りませんでしたので、

男性はネクタイ、女性はカクテルドレス程度の、比較的気楽なものです。

同席したその見知らぬ女性は、黒いレースのカクテルドレスをお召しになり、

黒い髪は後ろで一つにまとめられ、低い位置で小さなシニヨンに結われていました。

顔周りの髪はきちんとまとめられていながら、うなじには後れ毛が無造作に残り、

そのバランスが、彼女の首筋をより魅力的に印象づけていました。

そして耳には繊細な金細工の扇形のピアスが揺れていたのです。

お食事のテーブルでは、上半身だけが見えることになりますので、

手元、首筋、耳元。。。やはりジュエリーに目がいくことになります。

その夜のドレスコードからも、貴石のちりばめられたジュエリーを着けておられる方が多い中、

彼女の扇形のピアスが私の目を引いたのは、その美しいシェイプでした。

船上ディナーの席では特に、その扇形がとてもエキゾチックでセクシーに感じられました。

デコルテが大きく開いたドレスにも関わらず、ネックレスはお着けにならず、

アクセサリーはそのピアス一つだけだったことも、私には好ましく感じられました。

彼女の話すヨーロッパアクセントのチャーミングな英語とともに、

扇形の美しさが私の心に深く刻み付けられた、旅のワンシーンです。


 

つい最近、ちょっとしたきっかけがあって、私も扇形のピアスを手に致しました。

水牛の角で出来ています。

水牛の角は、強さと粘性を兼ね備えた加工に適した素材ですが、

角の芯の部分を使用しないとひび割れなどが起こり易い、デリケートな一面も有ります。

こちらの細かな細工を見ても、上質な素材が使われていることが判ります。

ちなみに写真の黒い背景は、バーテンダーが書斎で使っている漆塗りのデスクボードです。

漆黒の艶に、水牛の角の柔らかな光沢と美しい扇形のシェープが映えていて、

中々良い写真だと自己満足です。


 

 

この繊細な細工は、肌を透かして見せてくれるので、大振りながら軽やかな印象です。

そしてこの透かし彫りのもう一つの魅力は、首筋に映し出される影です。

これは残念ながら、どうしても写真に映し出すことが出来ませんでしたが、

光の加減でデコルテから首筋に掛けて、影絵のように幾何学模様が浮かび上がるのです。


 

私の髪はあごのラインの前下がりのボブで、

ピアスのデザインによっては正面からですとほとんど見えないことも有るのですが、

こちらの下がり具合ですと、髪やシャツの襟に邪魔されることもなく、

末広がりのおおらかな形が、存在を静かに主張してくれると思います。

サイドから見ますと、このように扇形に流れるシャープなラインが強調されます。

基本はベージュですが、所々に入ったナチュラルな黒が、洗練された印象を与え、

更に素材の面白みであるリズムや味わいを感じさせてくれます。

・・・・・と、ここで思い出しました。

ピアスに限らず、水牛の角で出来た製品は乾燥に弱いという弱点がございます。

時々、椿油などを少量塗り込んで磨くと、保護になりますし、艶も増します。

 

私にとって、初めて手にした扇形のピアスがこちらの素材でしたのでご紹介しましたが、

素材を問わず、扇形は女性の首筋や横顔を、エレガントに見せてくれるシェイプです。

どこかでこの様な形のピアスを見つけられましたら、

是非お試しになってみてはいかがかと思います。

 

それにしても・・・・・

自分で自分の写真を撮るというのは大変難しいものでございますね。

では






バスローブとナイトガウン

2011年10月29日 | Articles

” 私ね、昼間どんなに嫌な事があっても、夜お風呂にゆっくりはいると全部忘れちゃうんです。

悲しいこととか、悔しいこととか、心にこびりついたネガティブな汚れが洗い流されて、

明日も頑張ろう!って思えるんですよね "

 

昔、私のアシスタントとして働いてくれていた女の子が言っていました。

凄く昔のことなのに、その言葉がいつまでも心に残っていて、

バスルームで時々思い出したりします。

格言というほど重々しい言葉でもありませんし、

考えたこともなかった!という程衝撃的な一言でもないのにね。

多分私は、彼女の言葉の中に「一生懸命生きている」を感じたのだと思います。

華やかな世界の裏には、肉体的なハードさとか、女性同士の重々しい心の戦いとか、

夢やあこがれだけで生きて行くには、タフ過ぎる現実も有ったのですが、

それを他人のせいにしないで「ネガティブな心の汚れ」と言い切って、

お風呂の中で洗い流せる強さが好きだったのかな?と今改めて思います。

 

彼女の言葉を思い出した夜は、何だか懐かしくて、

バスローブにくるまったまま、しばらくぼんやりと過ごしたりします。


 

リビングルームに置いてあったラタンの椅子。

長椅子を購入したのでバスルームの入り口にお引っ越し。

私のリラックスタイムはこの場所で。



 

シャワーの後、部屋着やパジャマに着替える間の僅かなトランジッションタイムに、

私はバスローブを愛用しています。

ホテルに備えられている様な、分厚くて重くて、

着ているだけで身長が縮みそうなタオル地のものではなく、

軽くてサラッとした、オーガニックワッフルコットンの短めの丈のものです。

これは長年のお気に入りが有って、産地に出掛けると必ず何枚か買い込んできます。


 

もともとバスローブ愛用者だったのはバーテンダー。

案外いいものだから試してみたら?と贈っていただき、その魅力を知りました。

シャワーの余韻をほんのしばらく楽しむ為だけですが、私には欠かせないものです。

お気に入りのアロマに包まれながら、お肌の手入れをしたり、髪を乾かしたり・・・・・

毎日のローテーションの作業でも、一つ一つ丁寧にしておりますと、

今日も一日が無事に終わって行く幸せを感じます。



その後登場するのがナイトガウン。

こちらも誰もが絶対に必要なアイテムではないかも知れません。

でも何となく、必需品でないからこその魅力が有る様な気が致します。

夏はサテンのひらひらとした真っ白なものを愛用しています。

プールサイドに夕涼みに出たり、バーで冷たい飲み物を飲んだり。

ベッドに入るまでのひと時を少し特別なものにしてくれます。


 

冬は、もっと暖かいモコモコ素材のものに取り替えます。


 

モコモコ素材のナイトガウンは、パステル調の色柄が多いのですが、

私には少しキュート過ぎるので、優しいグレートーンのゼブラ柄を選びました。

暖炉の火を眺めながらのんびりとした時間を過ごすのに、

モコモコと肌触りの良いナイトガウンと王様 は、私の最高のパートナーです。


ぱーとなーデス


リラックスタイムの足元は、柔らかいタオル地のルームシューズ。

 

素足に履くものですから、マメにお洗濯出来るものを選びます。

夏場は同じ素材でもトングタイプで涼しく、

寒い季節は足をすっぽり覆ってくれるローファータイプを愛用しています。

 

リラクゼーションタイムに身につけるものは、こちらの洗剤で洗っています。

 

大手メーカーの洗剤や柔軟剤よりも、奥深い香りで、香りの持続性も高いと思います。

こちらの洗剤は、旅先にも持参します。

下着や小物などを洗っていますと、ホテルのお部屋全体に香りが広がって、

旅気分が上がります。

 

バスローブもナイトガウンも、活動的な衣服とは言えません。

お行儀よくしていなければ、直ぐに前がはだけてだらしないことになってしまいます。

もっとスポーティーなスウェットやパーカーで充分代替えの効くものです。

でも私、家の中にヒラヒラしたものを身にまとった女性が存在していることは、

素敵なことなのではないかと思ったりするのです。

一日の終わりのひと時をエレガントで安らぎの有るものにするのは、

女性ならではの、大切な役割なのかもしれません。



 

ネガティブな心の汚れを洗い流して、素敵な夜を過ごしましょ。

 

Have a beautiful weekend everybody !

 


ステーキを煮込む?!

2011年10月27日 | Food

引き続き滋養ダイエット中の我が家です。

が!

ジム通いが趣味のバーテンダーから、最近あまりにも草食過ぎて、

今まで軽々と上がっていたウェートが上がらなくなったので、何とかして頂きたい。

と、申し入れが有りました。

 

話しは少し逸れますが、私にとってステーキでゲストを招くことは、

ある意味ギャンブル。

ステーキは、こちらではおもてなしの定番と申せましょう。

人数分のステーキ肉を用意し、それぞれご自慢のスパイスで調味し、火で焼く!

極めてシンプルなステップで、ゴージャスなディナーとなります。

しかも焼くのは男の仕事と相場は決まっておりますので、

何時間もキッチンに立って悪戦苦闘する必要も無い、女性に優しいディナーのはず。

ですが、ステーキの成功を握る鍵は味付けでも、焼き加減でもなく、肉選び。

これを失敗しますと、惨憺たる結果になります。

正しい肉選びが出来ていたか?結果が出るのは焼き上がって、口に入れた瞬間。

その時失敗に気付いても、もう手の施し様が有りません。

ですのでステーキでお客様をおもてなしするのは、と~っても怖いのです。

必ず成功する秘訣は試食、これに付きます。

同じ部位でもその時によって肉質や味が異なるナマモノですから、

まずは少し買って、合格ならもっと買うという訳には行きません。

試食の際は人数分買うしか無いのです。

そのようないきさつで、我が家の冷凍庫には、

時々ステーキとしては不合格なお肉が眠っています。

本日はバーテンダーの為にそれを煮込みます。 

 

いくらでもある、分厚いニューヨークステーキを、

三等分にしてきつめの塩こしょうを致します。

フライパンで両面にしっかりと焼き色を付けます。

このとき中まで火を通す必要は有りませんので、強火です。

焼けたお肉を煮込み鍋で待機させます。

フライパンには旨味の成分がしっかり残っておりますので、

そこに赤ワイン、バルサミコをどぼどぼと注いで、

沸騰して来たら、フライパンの底をこそげるようにしながら煮込み様のソースを作ります。

そこに、以前ご紹介した私のお宝、ソフリットを投入。

ビーフブロスを少々加えまして、煮込み様ソースの完成です。

ステーキを待機させておいたお鍋にソースを入れます。

肉を覆うように、ニンジンとマッシュルームを乗せます。

これが、落としぶたの変わりをしてくれますので、混ぜたりしません。

ローリエを3枚程入れまして、

蓋をして、鍋の中がはしゃがない程度の火加減でひたすら煮込みます。

この日は2時間煮込みました。

その間にサイドディッシュのジャガイモの香味焼きの準備。

一口大のジャガイモを電子レンジにて1分半程加熱した後、

オリーブオイル、ニンニクのみじん切り、塩こしょう、タイムをまぶします。

トップにローズマリーを乗せてオーブンへ。

こんがりと焼きます。

こちらはチェバタブレッド。

バゲットより、更に気泡が大きく、ソースを絡めて頂きたい時にはこちら。

バターを薄く塗って、ガーリックパウダーを少々。


こんがり焼きます。

煮込みステーキの完成です

堅くてどうしようもなかったステーキが、

フォークでほろほろ崩れます。

うまし!

翌日は、お肉をほぐし、少し手を加えてハヤシライスとして登場。

付け合わせだったポテトの香味焼きは、

マヨネーズとヨーグルトのソースで和えて、サラダに。

 


箸にも棒にも掛からなかった、悲しみのステーキが、

美味しすぎて笑いの止まらない、2日間楽しめる煮込み料理となりました~。

 

さ、明日からはまた、滋養ダイエットに戻りますぞ。

 

では。

 



エレガンス ~フェイクファーに胸を張る~

2011年10月23日 | Fashion

昨夜は、ご贔屓のオーケストラの定期演奏会に出掛けておりました。

このオーケストラが私を惹き付ける理由は、

ひとえにコンサートマスターの素晴らしさでございます。

フルオーケストラの中に有って尚、彼のバイオリンは、ストレートに私の耳に響いて参ります。

澄み渡る音色は、感情に流されることなく完璧にコントロールされていて、

深い経験に裏打ちされた知性を感じるのです。

昨夜は、昼間スタジオにて作陶中に考えておりました、

”エレガンス”というキーワードを引きずっての鑑賞となったのですが、

真のエレガンスとは、知性にコントロールされた美意識とその表現だと、

彼の音色が教えてくれた気がしております。

これは当然ファッションにも相通じるものがございます。


私はファッションに寛大な人であると自負しております。

ファッションは自己表現。私の好みに合うかどうかが基準ではなく、

表現しよう!という心意気が有るかどうかが重要でございます。

例えば原宿で、パステルカラーの車幅2倍も有ろうかと思われるワンピースを着て、

全身にぬいぐるみをちりばめたファッションで歩くお嬢様を見かけたとして、

私は心で拍手を贈ることは有っても、眉をひそめたりすることはございません。

若い頃は、あらゆることにおいてチャレンジと失敗を繰り返すのが仕事の様なものです。

恐らく多くの人に批判的な目で見られるであろうファッションに挑む彼女達を否定するのは、

未来のエレガンスの可能性を否定する様なものでございます。

抑制の効いたエレガンスの為には、一度感情を爆発させてみることも必要です。

他人から浮かない無難な着こなしと、抑制の利いたエレガンスは別物です。

自己を程よく表現出来る大人になる為のステップとして、

手痛い失敗もいとわない、爆発Boys & ぶっ飛びGirlsが、私は好きです。

真の自己表現が何かを知らないないまま人が大人になると、どういうことが起こるかは、

多くの皆様が既に痛い程ご承知と思いますので、申し上げないでおきます。

 

かく言う私も、失敗だらけのファッション人生でございまして、

タイムスリップ出来るなら、「ここにお座り!」と呼びつけて、

お小言の一つも言ってやりたい自分が居たりします。

ファッション上、あらゆることにチャレンジした私が、

一つだけ、ただの一度も身につけたことがなく、今後も身につける可能性ゼロの素材。

それは毛皮、及びそれらが使われたあらゆる小物です。  

ファッションは自己表現と申し上げましたが、私にとりましては、

好きなものを好きなように着ることも、特定の何かを決して身に付けないことも、

どちらも重要な自己表現でございます。

毛皮については、私なりの強い思いが有ったりもするのですが、

強い思い程、人様には伝わり難い場合もございますので、

ここでは、王様の柔らかく暖かいフワフワした毛皮を撫でながら考えまするに、

これを横取りしたくない、少なくとも私には不要なものだ・・・・・

とだけ申し上げることに致します。

そんな私のファーバッグ。 もちろんフェイクファーです。

アニマルプリントでも、恐ろしげになったりワイルドになったりすることのない、

やさしい雰囲気のあるバッグを探しておりまして、こちらを見つけました。

ベージュから焦げ茶へのグラデーションで、

ハンドルが薄いベージュと濃いベージュのエナメル。

おリボン過ぎないハンドルの結び目も気に入りました。

こういった素材のものは、寒空の下で抱えておりますと、何とも安心感が有ります。

カフェの椅子に置いて、何となく撫でてみたりネ。。。。。

何分にもフェイクですので、チープな印象を与えない為に、

ハンドルと同素材のエナメルのフラットをコーディネート。

チープな印象を与えないとは申しましても、フェイクであることに私は胸を張ります。

私の年齢なりのコーディネートで、この愛らしいバッグの魅力を、

最大限に発揮させてあげたいのです。

光ったものを合わせたら、その光を少し控えめにする為に天然素材を重ねます。

明るい生成りの、コットンウールの大判ストールです。

カシミア他、最近話題の希少価値の高い材質などを合わせてしまいますと、

フェイクファーはそれらの引き立て役に回らねばなりません。

今日はあくまでも、主役はフェイクファーのコーディネートを目指します。

素材・色・手触り・艶。

私好みのコーディネートが完成致しました。

深いVネックのマスタードイエローのハイゲージニットと、ベージュのスリムパンツなどで、

さりげなく、ぬくもりと女性らしさのある着こなしをしようと思います。

 

では





贅沢な明かり

2011年10月21日 | Ceramics

家族の誰か、はたまたその一族全体の仕事や趣味ゆえに、

生活のある部分だけが突出して贅沢ということがございます。

例えば前回お話しした親族、ニワトリ研究家の家族は、

一つのお値段が普通の15倍もするかという地卵を、

娘がホットケーキを作る時にさえ使っております。

それ以外はごく普通の、まる子ちゃん家や磯野家の様な一家ですが。

 

私の母の子供時代は戦後の食糧難でございました。

ですが母の実家が呉服屋だったため、その洗い張りの糊に使う為や着物の代金の変わりに、

あちこちから白米が持ち込まれ、米びつが空だった記憶は無いのだそうです。

周囲の子供達が皆、お芋や大根などが入った雑穀米のお弁当を持って来る中、

一人、輝く白米一色のお弁当を持参させられ、肩身が狭く隠れて食べたそうです。

ですが白米ばかり有っても、おかずが有る訳でもなく、貧しさは同じこと。

同じ白いならお砂糖の方が良いもん!」等と罰当たりなことを考えていたそうです。

 

その娘、私も子供の頃は大変罰当たりな日々を送っておりました。

私の父は地方には数多く生息する山菜採りの名人の一人。

さすがの父も、今では毎年探すのに悪戦苦闘しておりますが、

私が子供の頃、秋の我が家は松茸のオンパレードでございました。

もうね、飽きるんでございます、松茸。

その頃でも都市部では高値で取引されていることに変わりは有りませんでしたから、

確かに人様に差し上げれば、大変喜んで頂けました。

我が家の女達の秋のひと仕事と言えば、松茸のギフトラッピング。

竹の籠に杉の葉を敷き、松茸を並べ、それを幾つも作って廊下に並べます。

私はその様子を美しいな、と思いました。秋の匂いが廊下に広がっていました。

「人様にものを差し上げる時には、心も一緒に贈らなければね。」

隣に座っている役に立たない妹とともに、そう教えられて育ちました。

そして住所を書いた送り状をそれぞれの籠の上に並べて行く。

ご家族の人数に合わせて、松茸の本数が違いますので間違えない為です。

やっと終わったと思っても、まだい~っぱい残ってるんです。

そして明日になればまた父は山に行く。。。。

初物こそ、有り難がって土瓶蒸しなど頂いてみる我が家族も、

もういい加減にしてくれ!と、贅沢甚だしいことを言い出します。

途方に暮れた母は、目先の変わった料理を次々考案。

「松茸が入っていることが気にならない一品」不届き極まりないテーマです。

松茸チャーハン、和風松茸スパゲティー、松茸グラタン、松茸ハンバーグ等々。

香りを活かすのではなく、殺す為に味噌やらバターやらスパイスやら、もうゴチャゴチャ。

それはそれで美味しかったですけれど。

 

月日が流れ、私は今陶芸家として日々を暮らしております。

そんな我が家の突出した贅沢は、なんといっても器もの。



トーストがカリッとしたまま保てるトースト専用のお皿



タイカレーの為だけに作った蓋ものセット



王様も マイ・おやつ壺 を持っていたりします。

 

こちらは直径30センチ程の大鉢。

ペーパーシリーズの削りを、斜めに削り上げることで動きを出したものです。

これは我が家で使う為に作ったもので、何に使うかと申しますと・・・・・

たいそう大きなキャンドルホルダーです。

真ん中にちょこんとティーキャンドルが置いてあります。

ちなみに敷物は、ランチョンマットだと思うのですが、

凸凹すぎて使い勝手は悪そうだけれども、敷物としては面白いかも?と購入しておいたもの。

昼の間はコーヒーテーブルの真ん中に置かれた、ただの白い大鉢です。

それが夜になりまして、キャンドルに火をつけますとこうなります。

純白な焼き物の肌に光が反射し、小さなティーキャンドルが驚く程の光を放ちます。

オレンジの光が、鉢の底から登るロクロの穏やかな同心円に沿って陰影を映し出します。


コーヒーテーブルの上に置くキャンドルは、無香料のものがよろしいです。

飲み物の香りを邪魔しないからです。

手持ち在庫が底をついて参りましたので、特別な時にしか使えませんが、

本当は、日本の老舗が作っている和蠟燭が理想です。

燃え尽きる最後の瞬間が、それはそれは美しいからです。

おしゃべりに夢中で、その瞬間を見逃した時など、

プログラム最後の1尺玉を見逃したくらいがっかり致します。

和蠟燭の凄さを知ったのは、一年かけてバーテンダーと日本中を旅していた頃、

和蠟燭の職人さんにお目に掛かった時でした。

 

 

大鉢の底から放たれる、ゆらゆら揺れる光をぼんやり眺めておりましたら、

遠く離れた親戚家族のこと、母の子供時代、私の子供時代、そして私達の旅の時代。

様々なことを思い出しました。

 

花器にもなれば、鉢カバーにもなる。沢山の煮物を入れることも、

柿やリンゴや蜜柑を盛ることも出来る。パーティーの時のキャンディー入れにも・・・・

それでも私はこの大鉢を、キャンドルホルダーとしてだけ使うつもりです。

多様化の時代などと申しまして、色々な用途に使えるものが愛される世の中ですが、

時に、私の最愛なる美の神様には、

一つの目的の為だけに作った、贅沢な器を持つことをお許しいただこうと思います。

フレキシブルではない美も良いものです。

 

では