カリフォルニア便り ーFROM OQ STUDIOー

~南カリフォルニアから~
陶芸家の器と料理、時々王様の日々

茶会の楽しみ

2011年03月28日 | Food

私は好きなものが沢山有るけれど、その中にお茶が含まれている事に感謝する日々。

お茶は人の暮らしが有る場所には有名無名にこだわらなければ必ず有る。

私は特定の産地の特定のお茶を愛しているのではなく、植物としての茶葉と

その自然の恵みを体内に取り入れようとして来た人間の文化を愛している。

お茶に限らずブランド、価格、知名度、希少価値等に評価基準を置いていると、

様々な出会いのチャンスを逃す事になる。

例えば味に関して言えば、自分の好みに合わない味と出会う事は、

大変に美味しいと思うものと出会うのと同じくらい価値のある事ではないのか?

この世に自分の好きな物しか無くなってしまったとしたら、

案外それは味気ない世界のような気がする。

そんな私の元には、世界中からお茶が集まって来る。

とても自分では手に入れるどころか、探す事さえ出来ないと思われる名茶から、

人様に差し上げるのがはばかられるような庶民のお茶までいろいろ。

心をオープンにしておけば、沢山の出会いが向こうからやって来てくれる。

私はその出会いを出来るだけ多くの人と分かち合いたいので、

なんだかんだと理由をつけては、茶会を開く。

はるばる海を越えて私の元に来てくれた茶葉達の為に、

出来る限り彼らの流儀でお茶をいれたいと思って少し勉強していた頃もあるが、

そんな事が茶会を主催するのに結構役に立っている。


去年の話になってしまうが、「中秋の名月を愛でる茶会」を我が家の庭で開いた。

ゲストが持ち込んだ中国の伝統的なお月見の提灯

 

茶会の前の軽い食事「鶏そぼろ弁当」

 

簡単な家庭料理だけれど、丸い山に浮かぶ満月を表現した。

輪島塗の角重は小振りな大きさで何段にも重ねる事が出来、大きな重箱よりも出番が多い器。

重なり合う漆のつややかな光沢が月に照らし出され、更に美しさを増す。

次々と箱が目の前に広げられて行くと、ゲストから歓声が上がる。

本物の器の底力を知るのは、こんな時だ。

私はいつも器に助けられている。


このように、茶会にはその日のテーマに沿った簡単な食事の他に、

やはりその日のお茶に合うお菓子を何品か手作りする。

ごまとクルミの焼き菓子

揚げ菓子の「開口笑」

 

ここまで手作りして来たのだから、陶芸家の端くれとして何か作ってみたくなっちゃう私。

工夫茶では茶海と呼ばれる道具を使用するのだが、

それが唯一土物でも不似合いではない道具という事になり焼いてみた。

茶海 ” 水に写る太陽 ”


茶海は急須の上から大量に注がれる湯を受けるための道具なので、

茶の海でゆらゆら揺れる太陽を楽しむことが出来る。

未だに好きか嫌いかを決めかねている画家、ゴッホを私なりに意識した色出し。

 

好きな物を心を込めて、手間をかけて楽しむ事は人生の幸せそのものだ。

そしてそこからも、私は人と器の関係を考える機会を得る。

 

愛すべき世界中の茶葉達に感謝。