今日は、チッチ(父)のおはなしです。
長文になってしまいました。
お時間の空いたときにでもお付き合いください。
チッチはお散歩が好き。
自転車が好き。
山が好き、川が好き。
お花や小鳥が好き。
空が好き。
星や月が好き。
日中の白い月も好き。
きれいに光っているものが好き。
腕時計が大好き。
まだ元気でおうちにいる頃。
お散歩に行けない雨降りの日、お庭のウメモドキの木に緑色に小鳥が1羽、2羽、3羽…。
どどどーんと20羽ぐらい集まってきたっけね。
「お父さんがお散歩に行けないから来てくれたんだね。」って言ったら「うん」ってうなずいてずーっと眺めてたよね。
緑色の小鳥だからウグイスかと思ったけど(絶対違うからっ!私ってば)「“メジロ”だよ」って教えてくれたよね。
珍しい小鳥なのに、よく大勢で遊びに来てくれたね。
うれしかったね。
また来るかな。
そんなお散歩好きなチッチ。
入院中も車椅子で色んなところをお散歩したの。
チッチ、お散歩だけが楽しみだったから、お医者さんも看護士さんもとっても協力してくれたわ。
お天気が悪くて寒い日は、病室のある3階フロアを行ったり来たり。
談話室の窓から外を眺めるのと、3つ部屋お隣の伯母を訪ねるのが日課だった。
伯母は肺の病気を患っていて、静かにさえしていれば安定しているんだけど、ちょっとでも無茶をするとすぐに息切れがして具合が悪くなってしまうの。
3階フロアを歩く程度なら問題ないので、しょっちゅうチッチを訪ねてくださった。
もちろん私たちの良き話し相手にもなってくれていたの。
そうそう、伯母は夜、眠れなくてしょっちゅうトイレに起きていたらしいの。
その足でチッチの様子を看ていてくれたみたい。
お布団をかけたり話しかけたりしてくれてたの。
チッチ、夜も寂しくなかったと思うの。
偶然とはいえ、義姉に面倒看ていただけたなんて、チッチは本当に幸せよね。
で、お散歩の話に戻って。
チッチの入院した病院は、それはそれは敷地が広いの。
ちょっと都会では考えられないようなつくりなの。
なにしろお庭が森になっているんだから…。
チッチの具合が良くてお天気が良くて、おとこ手があるときに意を決してお外にお散歩にでかけてみたの。
2月、3月では考えられない春の陽気が続いた日だったわ。
久しぶりのお外にチッチ大喜び。
松ぼっくりを拾ったり、たんぽぽやつくしをみつけたり。
オットが車椅子を押して、「どっちに進む?」って聞くと、チッチ左を指差すの。
「はいはい、左ね」次は右を指差すの。
「はいはい、右ね」
って、言われるがままに進んできたら病院の裏門だよ。
そっか、おうちに帰りたかったんだね。
裏門を出て右に曲がって次を左に曲がったらおうちだもんね。
そうそう、病院は自宅からとっても近かったの。
それがなにより助かりましたわ。
まんまとチッチの策略にひっかかりそうになりながらも、チッチあえなく強制送還。
これがチッチ最後のお外散歩でした。
お部屋に戻ったチッチ、お外が気持ちよくて気分が変わったのか、私たちがちょっといない隙にベッドでヒゲを剃ってたっけ。
てっきり看護士さんに剃っていただいたのかと思ったら、自分の鼻を指差して「自分で剃ったんだよ。」ってゼスチャーしてたよね。
なんかかわいかったな。
その頃、すでに自分で起き上がることはできなくなっていたの。
たまたま充電が終わった髭剃り機を私が脇机に乗せてたのよね。
手が届いたのね。寝ながら剃ったんでしょ?
とってもきれいになってたわよ。
思わず、「えらかったねぇ~。」と滅茶苦茶褒めてあげちゃった。
その後も病院内でのお散歩でいろんな人と話すようになってお友達も沢山できたわ。
窓の外の蓑虫や蜘蛛もじっと見てたわね。
なんの変化もない毎日、お散歩中にカラスでもいいから大量に飛んでくれないかしらって思ったわ。
カラスは縁起が悪いなんて言っちゃいられなかったわ。
現にカラスだけはしょっちゅう顔を見せてくれたし。
入院生活も後半ごろになると、吸引のしすぎでチッチは喉を傷めてしまったの。
ほとんど声がでなくなって、うなずくか首を横に振るか、指をさすか。その程度の意思表示しかできなくなってたの。
それでもお外にカラスの姿をみつけると、指をさして教えてくれたわ。
もちょっといい鳥がきてくれると良かったんだけど、カラスも結構かわいいものだったわね。
そうそう、窓から見える日中の白いお月さまも眺めてたよね。
お月さまってきれいよね。
特に赴任地でみるお月さまが私は最高に好きなの。
私がお月さま好きなのは、チッチの血かしらね。
その他にも、病院の敷地内をマラソンしてる人、犬を散歩させてる人、自転車で近道に使ってる人、いろんな人を眺めてたよね。
散歩中の犬をみて私が「退院したら犬を買って。」って言ったら犬があまり得意でないチッチはちょっと渋い顔。
「じゃ猫を買って。」て言ったら「うん」ってうなずくチッチ。
「前うちにいた、きなこみたいな猫がいいなぁ、10万円くらいするんだけどいい?」と言ったら、また渋い顔になるチッチ。
「じゃ野良猫でいいや。」と言ったら、「うん」ってうなずく。
無事商談成立。
たまたまお見舞いに来ていてその話を聞いていた伯母が、早速子猫の絵本を数冊届けてくれたね。
伯母も辛かっただろうね。
どんな思いで本屋さんで子猫の絵本を選んでたんだろうと思うとかわいそうでね。
猫ちゃん、欲しかったよ。チッチ…。
喉を傷めてしまったチッチ。
普段でさえあまりしゃべらなかったのに益々口数が減ったの。
ある朝、いつものようにチッチのところに行くと一生懸命なにか言ってるの。
対外のことならわかるんだけど、このときだけは何としてもわからなくて、でもわかってあげたいし…。
紙とペンを持たせて書かせてみたの。
普段でも字なんて書かないのに。
「リツノ」
「????」
やっぱり書いてもわかんなかった。
でも懲りずにもう一度、書かせてみたの。
「ゾーリ」
「!!!」
「わかった!ぞうりね。スリッパのことね?」
「うんうん、スリッパあるよ。ベット脇の物入れにしまってあるよ。」
出してあげたらうなずくチッチ。
そっか!これがなきゃ、スリッパがなくちゃ歩いて帰れないもんね。
母が入院中、履物に拘っていたチッチ。
もうあぶないとゆうときに、母の履物を病院に持っていくんだと言ったチッチ。
もう歩くこともできない母を連れて帰りたかったんだよね。
そんなことがあったからチッチの履物への思いは、容易に伝わった。
その時からスリッパはチッチの目の届くとこに置いとくことにしたんだよね。
でもその後、スリッパ履けたんだったかしら。
チッチのこと、沢山の人が見舞ってくれたよね。
特にTちゃんはしょっちゅう見舞ってくれたね。
Tちゃんは車を買い替えたばかり。
その車を見せてもらおうと、帰り際ロビーまで送って行ったのよね。
窓ガラス越しに、Tちゃんが運転するエスティマを見送るつもりだったのよね。
ロビーで「バイバイ!」と別れてから、Tちゃんは駐車場に走っていったの。
車が通るほんの数分の間に、今まで会話していたチッチの足がガクッってなっちゃって…。
意識もなくなっていて、私、大慌てでチッチのことこっちの世界へ呼び戻したんだ。
「お父さん、お父さん」って頬っぺたたいてね。
短い時間だったんだろうけど、私には長く感じたわよ。
どうにか意識が戻って、「なんだろう?」って顔してたよね。
チッチ、その時どこに行ってたの?
何が見えてたの?
勝手に行っちゃダメじゃない。びっくりしちゃったわよ。
その後、周りにいた患者さんが看護士さんを呼んでくれて、急ピッチで処置室へ運ばれて処置が終わったら、ちょっと散歩のつもりで出かけきたのに重装備でお部屋に戻ったのよね。
それから酸素ボンベと仲良し生活になっちゃったのよね。
それでも懲りずに、翌日には酸素ボンベを車椅子に引っ掛けて、カラスを見に行ったよね。
看護士さんから、「遠くまで行っちゃダメよ。」って注意されながらね。
チッチ、本当にお散歩好きだったよね。
そうそう、入院する前も「ちょっと散歩してくる」つもりだったのよね。
そのまま、遠いところにお散歩に行っちゃったね。
あちこち寄り道しないで、おかあさんのところに行けたかしら…。
チッチ、マイペースだったから、ちょっとだけ心配よ。
長文になってしまいました。
お時間の空いたときにでもお付き合いください。
チッチはお散歩が好き。
自転車が好き。
山が好き、川が好き。
お花や小鳥が好き。
空が好き。
星や月が好き。
日中の白い月も好き。
きれいに光っているものが好き。
腕時計が大好き。
まだ元気でおうちにいる頃。
お散歩に行けない雨降りの日、お庭のウメモドキの木に緑色に小鳥が1羽、2羽、3羽…。
どどどーんと20羽ぐらい集まってきたっけね。
「お父さんがお散歩に行けないから来てくれたんだね。」って言ったら「うん」ってうなずいてずーっと眺めてたよね。
緑色の小鳥だからウグイスかと思ったけど(絶対違うからっ!私ってば)「“メジロ”だよ」って教えてくれたよね。
珍しい小鳥なのに、よく大勢で遊びに来てくれたね。
うれしかったね。
また来るかな。
そんなお散歩好きなチッチ。
入院中も車椅子で色んなところをお散歩したの。
チッチ、お散歩だけが楽しみだったから、お医者さんも看護士さんもとっても協力してくれたわ。
お天気が悪くて寒い日は、病室のある3階フロアを行ったり来たり。
談話室の窓から外を眺めるのと、3つ部屋お隣の伯母を訪ねるのが日課だった。
伯母は肺の病気を患っていて、静かにさえしていれば安定しているんだけど、ちょっとでも無茶をするとすぐに息切れがして具合が悪くなってしまうの。
3階フロアを歩く程度なら問題ないので、しょっちゅうチッチを訪ねてくださった。
もちろん私たちの良き話し相手にもなってくれていたの。
そうそう、伯母は夜、眠れなくてしょっちゅうトイレに起きていたらしいの。
その足でチッチの様子を看ていてくれたみたい。
お布団をかけたり話しかけたりしてくれてたの。
チッチ、夜も寂しくなかったと思うの。
偶然とはいえ、義姉に面倒看ていただけたなんて、チッチは本当に幸せよね。
で、お散歩の話に戻って。
チッチの入院した病院は、それはそれは敷地が広いの。
ちょっと都会では考えられないようなつくりなの。
なにしろお庭が森になっているんだから…。
チッチの具合が良くてお天気が良くて、おとこ手があるときに意を決してお外にお散歩にでかけてみたの。
2月、3月では考えられない春の陽気が続いた日だったわ。
久しぶりのお外にチッチ大喜び。
松ぼっくりを拾ったり、たんぽぽやつくしをみつけたり。
オットが車椅子を押して、「どっちに進む?」って聞くと、チッチ左を指差すの。
「はいはい、左ね」次は右を指差すの。
「はいはい、右ね」
って、言われるがままに進んできたら病院の裏門だよ。
そっか、おうちに帰りたかったんだね。
裏門を出て右に曲がって次を左に曲がったらおうちだもんね。
そうそう、病院は自宅からとっても近かったの。
それがなにより助かりましたわ。
まんまとチッチの策略にひっかかりそうになりながらも、チッチあえなく強制送還。
これがチッチ最後のお外散歩でした。
お部屋に戻ったチッチ、お外が気持ちよくて気分が変わったのか、私たちがちょっといない隙にベッドでヒゲを剃ってたっけ。
てっきり看護士さんに剃っていただいたのかと思ったら、自分の鼻を指差して「自分で剃ったんだよ。」ってゼスチャーしてたよね。
なんかかわいかったな。
その頃、すでに自分で起き上がることはできなくなっていたの。
たまたま充電が終わった髭剃り機を私が脇机に乗せてたのよね。
手が届いたのね。寝ながら剃ったんでしょ?
とってもきれいになってたわよ。
思わず、「えらかったねぇ~。」と滅茶苦茶褒めてあげちゃった。
その後も病院内でのお散歩でいろんな人と話すようになってお友達も沢山できたわ。
窓の外の蓑虫や蜘蛛もじっと見てたわね。
なんの変化もない毎日、お散歩中にカラスでもいいから大量に飛んでくれないかしらって思ったわ。
カラスは縁起が悪いなんて言っちゃいられなかったわ。
現にカラスだけはしょっちゅう顔を見せてくれたし。
入院生活も後半ごろになると、吸引のしすぎでチッチは喉を傷めてしまったの。
ほとんど声がでなくなって、うなずくか首を横に振るか、指をさすか。その程度の意思表示しかできなくなってたの。
それでもお外にカラスの姿をみつけると、指をさして教えてくれたわ。
もちょっといい鳥がきてくれると良かったんだけど、カラスも結構かわいいものだったわね。
そうそう、窓から見える日中の白いお月さまも眺めてたよね。
お月さまってきれいよね。
特に赴任地でみるお月さまが私は最高に好きなの。
私がお月さま好きなのは、チッチの血かしらね。
その他にも、病院の敷地内をマラソンしてる人、犬を散歩させてる人、自転車で近道に使ってる人、いろんな人を眺めてたよね。
散歩中の犬をみて私が「退院したら犬を買って。」って言ったら犬があまり得意でないチッチはちょっと渋い顔。
「じゃ猫を買って。」て言ったら「うん」ってうなずくチッチ。
「前うちにいた、きなこみたいな猫がいいなぁ、10万円くらいするんだけどいい?」と言ったら、また渋い顔になるチッチ。
「じゃ野良猫でいいや。」と言ったら、「うん」ってうなずく。
無事商談成立。
たまたまお見舞いに来ていてその話を聞いていた伯母が、早速子猫の絵本を数冊届けてくれたね。
伯母も辛かっただろうね。
どんな思いで本屋さんで子猫の絵本を選んでたんだろうと思うとかわいそうでね。
猫ちゃん、欲しかったよ。チッチ…。
喉を傷めてしまったチッチ。
普段でさえあまりしゃべらなかったのに益々口数が減ったの。
ある朝、いつものようにチッチのところに行くと一生懸命なにか言ってるの。
対外のことならわかるんだけど、このときだけは何としてもわからなくて、でもわかってあげたいし…。
紙とペンを持たせて書かせてみたの。
普段でも字なんて書かないのに。
「リツノ」
「????」
やっぱり書いてもわかんなかった。
でも懲りずにもう一度、書かせてみたの。
「ゾーリ」
「!!!」
「わかった!ぞうりね。スリッパのことね?」
「うんうん、スリッパあるよ。ベット脇の物入れにしまってあるよ。」
出してあげたらうなずくチッチ。
そっか!これがなきゃ、スリッパがなくちゃ歩いて帰れないもんね。
母が入院中、履物に拘っていたチッチ。
もうあぶないとゆうときに、母の履物を病院に持っていくんだと言ったチッチ。
もう歩くこともできない母を連れて帰りたかったんだよね。
そんなことがあったからチッチの履物への思いは、容易に伝わった。
その時からスリッパはチッチの目の届くとこに置いとくことにしたんだよね。
でもその後、スリッパ履けたんだったかしら。
チッチのこと、沢山の人が見舞ってくれたよね。
特にTちゃんはしょっちゅう見舞ってくれたね。
Tちゃんは車を買い替えたばかり。
その車を見せてもらおうと、帰り際ロビーまで送って行ったのよね。
窓ガラス越しに、Tちゃんが運転するエスティマを見送るつもりだったのよね。
ロビーで「バイバイ!」と別れてから、Tちゃんは駐車場に走っていったの。
車が通るほんの数分の間に、今まで会話していたチッチの足がガクッってなっちゃって…。
意識もなくなっていて、私、大慌てでチッチのことこっちの世界へ呼び戻したんだ。
「お父さん、お父さん」って頬っぺたたいてね。
短い時間だったんだろうけど、私には長く感じたわよ。
どうにか意識が戻って、「なんだろう?」って顔してたよね。
チッチ、その時どこに行ってたの?
何が見えてたの?
勝手に行っちゃダメじゃない。びっくりしちゃったわよ。
その後、周りにいた患者さんが看護士さんを呼んでくれて、急ピッチで処置室へ運ばれて処置が終わったら、ちょっと散歩のつもりで出かけきたのに重装備でお部屋に戻ったのよね。
それから酸素ボンベと仲良し生活になっちゃったのよね。
それでも懲りずに、翌日には酸素ボンベを車椅子に引っ掛けて、カラスを見に行ったよね。
看護士さんから、「遠くまで行っちゃダメよ。」って注意されながらね。
チッチ、本当にお散歩好きだったよね。
そうそう、入院する前も「ちょっと散歩してくる」つもりだったのよね。
そのまま、遠いところにお散歩に行っちゃったね。
あちこち寄り道しないで、おかあさんのところに行けたかしら…。
チッチ、マイペースだったから、ちょっとだけ心配よ。