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バレアレス諸島に別れを告げ地中海を渡ってやって来たバルセロナ。新緑の頃を迎えたこの街も緑豊か、街歩きにはもってこいのシーズンとなった。そう、この街を堪能したいなら歩こう!だって街のあちこちに素晴らしい芸術品の数々が散りばめられてるんだから。19世紀にこの街で花咲いたモデルニズモと呼ばれる芸術様式。芸術家がその個性をキャンバスにではなくより立体的な建築を手段として表現しようとして生み出されたたくさんの建造物がこの街を飾っているから。そんな時代を生きた建築家として有名なのがアントニ・ガウディ。もはや現在のバルセロナは彼の名なくして語れないのも事実。でも今日の主役は彼にあらず、彼ガウディとほぼ同年代を生きたドメネク・イ・モンタネールだ。
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この世を去るまで貧しかったガウディとは反対に、裕福な家庭に育ち建築学校の教諭から学長を経て最後には政界にまで進出した経歴を持つモンタネール。ガウディのよきライバルと現在では呼ばれるけれど、果たして本人同士はどう思っていたんだろう?それだけ彼らの作風は異なる。自然界からのインスピレーションをそのまま形にするような象徴的な建造物が多いガウディの作品に比べるとモンタネールのそれはとても優雅。生い立ちがそうさせたのか、全体的に華やかな装飾が多く「花の建築家」と呼ばれるのもうなずける。そんな彼の代表作がこのオスピタル・デ・サンパウ。
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まるで宮殿か教会かと思わせるこの建造物は、実は現在でもしっかり現役を果たしてる病院。1902年に着工されたこの病院建設はモンタネール最大のプロジェクトとして進められたけれど、残念ながら彼は完成を待たずにこの世を去った。それでも彼の意思を引き継いだ息子によって完成されたこの病院は、モンタネールのもうひとつの代表作品カタルーニャ音楽堂とともにユネスコの文化遺産に登録されてる。
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いや、それにしてもこれが病院とは。まずこの正面から眺めるその姿を前にした時、誰しも声を出さずにはいられないだろう。まさに圧巻…だ。通院患者とおぼしき人たちに混じってカメラを抱えた観光客が同じ場所を行き来していることが、ものすごく不思議に感じられてしまう。こんな場所が他にあろうか?
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正面玄関を抜けるとその奥は意外にも広い敷地が広がっていて、その中には48棟もの病棟が建ってる。それぞれが異なった装飾を持っていていたるところに色タイルやステンドグラスがはめ込まれ、なんとも美しい。時おり太陽の下で談笑する入院患者とその家族の姿に、モンタネールの「芸術には人を癒す力がある」という信念が今でもここで生きているような…
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誰でも入って来れる中庭には散歩する人、読書する人、日光浴する人…と思い思いにこの空間を楽しむ人の姿。世界遺産に登録されていながらこれだけ自由な空気が存在することは、私には何よりの驚きだった。この病院にお世話にならないにしても、この場所で癒されてる人は実はたくさんいるのかも知れないね。モンタネールの作品を病院関係者だけで独占することなく、こうして誰しもが楽しめるようになってること自体が素晴らしいと思える。ちなみに別棟になる全ての病棟は地下でつながっていて、当然のことながらそこには「本来の病院」の姿があるのも事実(笑)。
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ところでこの病院建設の折のスポンサーであったのは地元の銀行家パウ・ジル。彼の膨大なる遺産がここの建設に投じられたおかげでこれだけのものが完成されたといっていい。そんなわけで病院の創設者の彫刻は正面玄関前に置かれている。ひと頃の寒さのぶり返しに、誰かが巻いてあげたんだろうか。彼の首にはピンク色のマフラーが。
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さて、そんなサンパウ病院でしばし癒されたらもう少し散歩を楽しもう。病院の正面玄関に背を向けると…ほら、見えるでしょ。ライバルと呼ばれるガウディの今だ未完成の作品が。この病院の建設着工から20年も前にすでにはじまっていた教会建設。初代建設家ビリャールの後を継いでガウディによって手掛けられ、さらに彼亡き後たくさんの建築家によってその工事が引き継がれるサグラダ・ファミリアが。
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サンパウ病院とサグラダ・ファミリアとの間は一本のガウディ通りで結ばれてる。中央は広い遊歩道になっていて、週末ともなるとおしゃべりを楽しむ近所のお年寄りや家族連れでもにぎわうところ。バルセロナの街の中心からはちょっとだけ外れるけれど、のんびりムードでお散策にはもってこいの場所だ。
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それにほら、通常は入り口のある正面から眺めるやや平面的なサグラダ・ファミリアがここから眺めると実に立体的。なぜかといえば、現在完成してる8本の塔がここからだと全てよく見えるから。ガウディの夢の教会がどんどん完成に近づいていくのがわかる。ここはバルセロナを象徴する2大建築家の作品をともに堪能できる絶好のお散歩コース。スタート地点はもちろん、あなたのお好みでね♪
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みなさんからのコメントはいつも楽しく読ませていただいています。ただ諸々の理由によりこの年明けからコメントへのお返しはしていませんのでどうぞご了承下さい。また旅関係のご質問やリクエストに関しては、できるだけ今後のブログ上に反映させていきたいと思っています。
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