じぶんの足でたつ、それが教養なんだ

「われこそは」と力まないで、じぶんの歩調でのんびりゆったり歩くのがちょうどいい。

歩く、それが考えるだ

2006-12-02 | 随想(essay)
 …私の仕事は民俗の研究ということになっているが、私自身の仕事はむしろ、私の周囲で働きつづけている人たちの生活が少しでも充実し向上し安定することのための協力につとめて来た。
 …何よりも大切なことは人間一人一人がもっとかしこくなることであり、お互いがただ自己の権利を主張するだけでなく、共通の分母を見出してゆくことだと思う。(『日本を思う』「あとがき」)
 宮本さんは通算で十二年余の教師生活をされています。その姿勢はいかにも宮本さんらしいとおもわれます。弱いものに寄りそい、すこしでも力になれるならどのようなことでもするという一貫した態度が見られるのです。その宮本さんは生涯に四千日以上も歩いたというのですから、伊能忠敬をしのぐのではないでしょうか。
 歩く、それはかんがえることだといったのは幸田文さんでしたが、それをだまってつらぬいたのが宮本常一というひとでした。「一人一人がもっとかしこくなる」ことを祈りながら歩いたのです。