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山頭火は大学ノートの裏表にめいっぱい書き、それが一冊になると緑平さんに送りつけて保管を頼んでいた。こうして彼の句や随筆をわたしたちが読めるのもそのおかげだ。
「緑平さんの深切に甘えて滞在することにする。緑平さんは心友だ。私を心から愛し てくれる人だ。腹の中を口にすることは下手だが、手に現して下さる。そこらを歩いて 見たり、旅のたよりを書いたりする、奥さんが蓄音機をかけて旅情を慰めて管さあ留。 ――ありがたい一日だった。かういふ一日は一年にも十年にも値する」
風の黄ろい花のいちりん
けふも暮れゆく音につゝまれる
「緑平さんの深切に甘えて滞在することにする。緑平さんは心友だ。私を心から愛し てくれる人だ。腹の中を口にすることは下手だが、手に現して下さる。そこらを歩いて 見たり、旅のたよりを書いたりする、奥さんが蓄音機をかけて旅情を慰めて管さあ留。 ――ありがたい一日だった。かういふ一日は一年にも十年にも値する」
風の黄ろい花のいちりん
けふも暮れゆく音につゝまれる