The Place

自分の言葉で、ゆっくり語ること

塩味のリングイネ

2008-02-06 23:33:20 | 日記
イタリア料理の話をしよう。


我が家には、ほとんど常にストックしてある食べ物が三つある。
ビールとチョコレートとパスタだ。
ビールはモルツ、チョコレートはカカオ分の多いビターなもの、パスタはリングイネが好きだ。

今日は、仕事が早く終わったので、魚介類を使った塩味のリングイネを作ることにした。
このメニューは、帰りの自転車に乗っている間に決めたものだ。
帰り道では、雨混じりのみぞれが降りしきっていた。
みぞれを見ても特に何かを連想することはなかったが、理由は無くても白ワイン風味のリングイネが食べたかった。

スーパーで材料を揃え、家に持ち帰る。
ビールの缶を開け、まずはオレンジページを眺めて手順を確認する。
パスタを使った料理の肝は、にんにくを弱火でじっくりローストすること、ソースとパスタの出来上がり時間を調整すること、パスタは少し芯を残して湯から上げ、手早くソースとからめること。
計画性と辛抱強さ、手際の良さが必要とされる料理だ。

ソースの材料は、アスパラガス、エリンギ、ホタテ。
どれも白ワインによく合いそうな素材だ。
材料の下ごしらえが終わったら、オリーブオイルをフライパンにたらし、そこに薄切りにんにくと赤唐辛子を加え、弱火でじっくりローストする。
ビールを一口飲んでは少しかき混ぜ、また一口飲む。
このあたりから、もうイタリアンらしい香りがしてくる。

隣のコンロでは、強火で湯を沸かし、水の量の1%に相当する塩を溶かす。
沸騰したらリングイネを150g程度入れ、絡まないようにゆっくりかき混ぜる。
ホタテに火を通し、エリンギ、アスパラガスの順に加える。
材料を炒める音の向こうに、ジョンレノンの唄う「Stand By Me」が聴こえる。

ジョンが次の曲を歌い始めたあたりで、白ワインを大さじ1杯たらして、フランベ。
だけど、ワインのアルコール度数が低いので火がつかない。
人生、そんなに格好良くはいかないと思い知らされる。

ソースが仕上がったところで、パスタの茹で加減を何度もチェックする。
リングイネの芯が無くなりかけたら、絶対に鍋の傍を離れてはいけない。
「今だ」と思ったらすぐに火を消し、湯を切る。
たぶん、ベストのゆで加減にするには、たった30秒の判断ミスも許されない。

ソースとパスタが揃ったら、手早く和える。
パスタの茹で汁で温めておいた皿に盛る。
隣の部屋に持っていく。

アツアツのうちに、すぐ食べる。
リングイネのもちもちとした食感、にんにくとオリーブオイルの香り、ホタテの旨みで口の中がいっぱいになる。
何も考えられないし、何も考えてはいけない。
ひたすら口に運ぶ。


それがイタリア料理のルールだから。