公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

切り取りダイジェストは再掲。新記事はたまに再開。裏表紙書きは過去記事の余白リサイクル。

『米従軍記者が見た昭和天皇』ポール・マニング

2016-02-05 00:06:00 | 今読んでる本
ポール・マニングの 『米従軍記者が見た昭和天皇』を読んでみた。


歴史の捉え方が、加害者、侵略者日本の陰謀の中心昭和天皇であり、日本は常に卑怯な奇襲の歴史で、ポツダム宣言を無視しているから、原爆を落とされた。こういう一方的な米国人の捉え方が気になるが、昭和天皇の隠した財産が戦後復興の秘密という、その時期としては誰も試みていない1990年頃の米国人の認識に基づく。

しかし読むほどに昭和天皇裕仁に対する謎が解けるどころか逆に深まる。御文庫で受信していたのはどこの情報で誰が傍受担当だったのか。どうして言い訳がましい裕仁とマッカーサーは出会って直ぐに信用することができて、その後の交誼を結べたのか?なぜ海外財産を不問に付して東京裁判に証人としてさえも裕仁は召喚されなかったのか。

こういう謎は米国側の金融支配に基づく国際主義第一世代と共産主義を梃子とする国際主義第二世代の争いを理解しないと解くことができない。

結論から言えば、裕仁は第一世代のインナー(利害関係者)であり、エージェントでもあった。もちろん裕仁が一人でできるはずはない。スポンサーだけでもできない。瀬島龍三をはじめとするプラン作成者の集団➖作戦参謀がいた。裕仁の戦争動機は皇統の維持(政治手段としての側近政治と独立した資産)であり、押し込め君主になりはて死んだ大正天皇嘉仁と孝明天皇のトラウマ(獅子身中の虫)だと想像する。世界支配野望などなかった。

裕仁の助命と地位保全は国際金融の仲間らによって予定通りマッカーサーに含ませ実施された。IMFの設立に伴うBISの解散が現実には実施されなかったことと同じことが様相を変えて日本で起きたということ。もちろん天皇家の隠し財産(一説「神々の軍隊」には660億円、現在の価値に換算すると約300倍で、20兆円)はBISに吸収され世界で運用された。戦後裕仁がその配当を受取り、投資家として動いて(横浜正金銀行が日銀に代わっただけ)いたと著者マニングは想像を交えて描いているが、裕仁の関心領域の広さと情報収集の背景(御文庫機関の残党の協力)を考えれば、投資家裕仁像は矛盾しない。昭和天皇に仕えた首相は32名と言う多さだ。
 関東都督府は1919年四月に廃止され、関東州の統治機関として新たに関東庁が置かれた(このとき軍事機構は分離、独立して関東軍が創設された)。関東庁は「満州国」樹立後の1934年一二月に関東局が設置されるまで、関東州の統治を担うことになる。1919年が
摂政の宮が始まる1921年(大正10年)から日本は政策選択の合理性を欠いている疑問だらけの歴史をもつ国になった。私的経営が政府を上書きするそういう二重体制であった前提が唯一非合理を解説できる。
r
ただ断っておきたいのは、奇襲戦争で日露戦争も有利に戦争を遂行したというイメージが刷り込まれた記者の歴史知識と国際政治感覚は間違っている。日本は宣戦布告前に攻撃しているが、その前にロシアとは断交を通告している。さらに言えば、すでに日清戦争がロシアを代理する清国との戦いであり、かつまた宣戦布告は当時の戦争の要件ではなかった。

戦後日本国民を見ていた従軍記者の割には、米よこせとデモに繰り出した者たちさえ皇后の乗る車に礼をする、地方へ行くと天皇は敬愛され、国民がこぞって歓迎する、食べるものもないときに宮城の清掃に無償で参加する日本人と日本の国柄が理解できていない。というか産業資源を求めた一部資本家軍閥の侵掠と邪悪な世界支配が昭和天皇の目的であったというフォーマットを再確認させるための著作であろう。昭和天皇裕仁は制御不能になった軍、政党、有力事業家の利権カオスから皇統防衛に出て、内外利用できるものは全部利用し、最終的に国際金融のシナリオに従って勝った。その犠牲を国民が背負った。そういう理解が真実に近いと思う。このような謀略戦争に追い込まれて、何を残すべきだったか判断はわかれるだろう。皇統を失っても日本人は経済活動を回復したと思うが、そのときは工作による国家分割の危機に見舞われたことだろう。私は皇統を残したことは正しかったと信じている。昭和天皇の沈黙もその心の奥底を除くことはできないが、おそらく後知恵はどうとでも言えるが昭和天皇の御心は最悪の中の最善選択であったと思っていたことだろう。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 国民の政治に対する不信を広... | トップ | ホームラン打てなくなって »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。