日頃から自分の居場所に対する愛着をできるだけ捨てることが苦しみを和らげるコツかもしれない。
Perhaps the key to easing suffering is to abandon attachment to your place as much as possible on a regular basis.
『文学のトポロジー』奥野健男(おくの たけお、1926年〈大正15年〉7月25日-1997年〈平成9年〉11月26日)は、文芸評論家・化学技術者。多摩美術大学名誉教授。父は最高裁判事の奥野健一。)の遺作ともいえるのだけれども理科系の文学者は最後に謎めいた課題を残していってくれた。
自分を点として◇の図形の真ん中付近に置いてみると、どのように左右が伸びようとも自己像は変形されても本質的包摂関係は変わらないというのがトポロジーである。
難しいことではないが、変わらないことが難しいのが生身の人間というものだ。
試しに◇の左半分を切り捨てても同じ自分であるが、果たして切り捨てられた左半分の中に自分の点は含まれていないという確信があったかどうか後になって後悔することがほとんどではないだろうか。恋愛などはわかりやすい例だろう。学問においても仮説を捨てるということは同じく苦しいことである。しかし苦しいと感じる人間はまだまともである。現代人は自己分裂に気づかないふりをして不本意な会社勤めや役人や政治家をやっている。だから自分のトポスを捨てたことに無感覚でいられるのだ。
It's been a hard day’s night,
and I’d been working
like a dog
It’s been a hard day’s night,
I should be sleeping
like a log
But when I get home to you
I find the things that you do
Will make me feel alright
A Hard Day's Nightもトポスと自己分裂に対する順応を歌っている。実に単純なことだが、明解な真理がメッセージソングとなっているのである。