公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

切り取りダイジェストは再掲。新記事はたまに再開。裏表紙書きは過去記事の余白リサイクル。

データの質

2010-11-24 16:21:51 | 日記
懲戒解雇処分の撤回を求めて東京大学を訴えている多比良和誠氏の控訴審で、東京高等裁判所は2010年11月24日、多比良氏の控訴を棄却する判決を言い渡した。一審で東京地方裁判所は、東大の処分を妥当との判断

 この裁判は法律解釈は争点ではないので、事実上の終結審だろう。これで先生の地位回復がない見通しが濃くなった。ご縁のあった先生だけに残念。善管注意義務を明確に示していない大学内の学術成果の世界ではあるが、ライセンスを前提とした大学特許は、特許を出願行為との関係では、使用者側にデータの質を管理する義務が生じうる。

 データの質は科学そのものだ。部下を信じていたでは済まされない。分析機器のメンテナンスから電子データの複製がないという証明まで、すべて管理できて科学の客観性が保証される。むかし寄生虫が癌の原因であると発表して業績が世界に受け入れられ、ノーベル賞医学賞をもらった人がいたが、癌はそのように単純な因果関係ではなかった。科学の世界ではよくあること、それが不十分な事実確認に基づく推定による因果関係の断定ということだ。

 データを捏造する意思はなくても、再現性がない場合、そのようにあとから解釈されることもある。これが科学で一番厄介な問題。先端分野でポジティブコントロールがない場合や、業界の経験的黄金律に適用限界がある場合、グレーが黒とされ、黒が白とされる。


「砒素で生きる細菌」に疑問の声
2010年12月 9日
Lisa Grossman

NASAの研究者らが12月2日付けで『Nature』に発表した「砒素で生きる細菌」に
ついて、他の研究者たちから、研究手法などの問題点を指摘する声が上がっている。

ブリティッシュ・コロンビア大学の生物学者Rosie Redfield氏は、発見された砒素は、
細胞の中ではなく、ゲルの中に存在していたものである可能性が考えられると指摘
している。同氏は12月4日に、自身の研究ブログに批判を掲載し、現在までに4万
ヒットの閲覧を受けている。

Redfield氏の指摘は、今回の研究では、DNAとRNAを他の生体分子から分離する
ゲル電気泳動と呼ばれる手法を、標準的な装置を用いて行なう前や後に、DNAの
適切な浄化がされていないというものだ。

試料の浄化には、「2ドルで買える簡単なキットと10分の時間」があればよく、
「それによって、分析可能な純粋なDNAが得られる」と Redfield氏は話す。
今回の研究にもこの手法は用いられているが、細菌のDNAに砒素が取り込まれた
ことを証明したとされる肝心の実験にだけは用いられていないという。

一方、ハーバード大学のAlex Bradley氏(微生物学・地球化学)は、また別の問題を
ブログ上で指摘している。

米航空宇宙局(NASA)のチームが手がけた今回の研究では、DNAを水に浸している。
水中では、砒素化合物はすみやかに分解する。もしDNAが本当に砒酸塩から作られて
いたのなら、水中で分解していたはずだと、Bradley氏は述べている。しかし実際は
そうならなかった。このことは、DNA分子が互いをつなぎ合わせる材料として、
より丈夫なリン酸塩を、依然として用いていた可能性を示唆するものだ。

『Slate.com』に掲載された研究の詳細な検証記事では、それ以外にも多くの問題点が
指摘されている。記事を執筆した科学ライターのCarl Zimmer氏が、外部の専門家
10数人に取材したところ、NASAチームの研究結果は、彼らの主張を十分に裏付けて
いるとはいえないとの見解を、ほぼ全員が示した。

一方、『Nature』誌のニュースサイトに載ったAlla Katsnelson氏の同様の記事は、
研究に用いられた細菌は、砒酸塩を食べて大きく膨らんでいるように見えるが、
これは細菌が、単に有毒物質を封じ込めている可能性を示すものだと指摘している。
つまり、これらの細菌は安定して増殖しているのではなく、肥大しているだけの
可能性があるというのだ。

論文の著者たちは、少なくともメディア上では、これらの批判に答えていない。
NASAの広報は、議論は科学誌上で行なわれるべきだと述べたが、NASAの研究者らが
論文を発表する前に起こしたメディア上での騒ぎから考えると、この発言は不適切だ、
とRedfield氏は指摘している。

主執筆者であるU.S. Geological SurveyのRonald Oremland氏は、12月7日に
ワシントンDCのNASA本部で研究者たちに向けて話し、その様子はNASA TVで
放映された。ブログ上での批判については、「実際に追試をしてもらうのが一番
良い」とOremland氏は述べた。

[日本語版:ガリレオ-高橋朋子/合原弘子]



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 人身事故ダブル | トップ | 34兆8084億円=365日×1000億... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。