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掃除に関して思いもよらない形で責められてしまい、思考が停止してしまった私ですが、その後は何となくうやむやになってしまったような状態で、Kの要望どおり その日は気晴らしに出かけることになり、結局は掃除など出来なかったのでした。
元々掃除が苦手で、そのことに対しての罪悪感があった私。
Kに責められてしまったことで、それから更にプレッシャーを感じるようになりました。
とにかく掃除をしなければ・・・そう思うと緊張してきてしまい、何から手をつけていいのか分からなくなってしまっていました。
同時に、もうすぐ会社に出なければならない日が近づいて来ているKの機嫌は、日に日に悪くなりました。
ただでさえKにはその時に
「俺のいる前で掃除はするな!」
と言われているのに、更に機嫌の悪いKの前で掃除をすれば、
「これ見よがしにするんじゃねぇ!」
と怒られるに決まっているので、もう本当にどうしていいのか分からなくなっていました。
とりあえずKの言うとおり、ちょっとした時間に少しずつやればいいのではないか・・・と思い、こっそりと片付けを始めようとすると、なぜかKが私の側にやってきて、機嫌のいい声で
「なぁ、一緒にテレビでも観ようぜ~♪こっちに来いよ~♪」
とささやくのです。
そうなれば気になっていても、Kの機嫌を優先してしまう自分がいて、結局掃除など一向に進まないのでした。
私はそんな自分自身に対して、そんな風に私を呼び止めるKの事を掃除をしない言い訳にしているのではないか?・・・と考えては、自分のダメさ加減に落ち込んでいたりしました。
そうは言ってもなかなか思い通りに時間が取れない・・・。
しかしこのままならまたKに怒られてしまう・・・。
私はますます焦ってきてしまうのでした。
一方Kはというと、毎日毎日憂鬱そうな顔をして過ごしていました。
会社の事を考えると憂鬱でたまらないらしく、同じ事を何度も何度も繰り返し吐き出していました。
私は側にいてその話をずっと聞いてあげるしかありませんでした。
Kの言うとおり、確かに会社のシステムとしては、社員にとってあまりいいものではありません。
考えたらおかしいなと思うことも沢山ありました。
だから不満を言いたくなる気持ちも分からなくはありません。
ただ、Kの不満を聞いていて、それがどうしてそんなに嫌なのか、正直言って私には理解できませんでした。
中には社会人としては仕方ないことだろうと思うようなことまで大げさに言っているような気がして、思わず反論したい気持ちになりましたが、そんなことを言ってしまえば、ますます機嫌が悪くなることは分かっていました。
出来るだけ私の意見を言わないよう心がけ、Kの顔色を見ながら過ごしていたのでした。
しかし、私はきっとまた会社が始まって毎日行くようになれば、きっと諦めもついて、少しは変わるだろうと思っていたのです。
Kは何だかんだと文句を言いつつも、ズル休みをしたりすることなく、普段は真面目に会社に通っていた人だったので、そんな文句を言っているだけ無駄だと本人もそのうち気付くのではないかと思ったのでした。
それに、私はもう一つ、この長い休みが終わる少し前に来る、結婚記念日がKの気分を変えてくれるのではないかと密かに期待してたのです。
Kは私の誕生日やバレンタイン、ホワイトデーなど、そういった記念日を忘れることはありませんでした。
必ず何かしらのプレゼントをくれ、最高の笑顔と共にお祝いの言葉と、そして
「にゃりんた、いつも有難う!」
という言葉をかけてくれるのでした。
プレゼントの中身はいつも一緒に出かけた時に、私が何気なく欲しいなぁと言った物だったりしました。
私自身はそんなことを言ったことすら覚えていないのですが、Kはそのことをしっかり覚えていてくれているのです。
私はプレゼントの中身よりもそんなKの気持ちがとても嬉しかったのでした。
Kはそうやって大喜びする私の顔を見るのが大好きだと言ってくれていました。
なので、そういうイベントがあれば、Kもきっと機嫌よく過ごしてくれるだろうと思っていたのでした。
そして、その当日がやってきました。
食事の時間は夕方でしたが、私は朝からウキウキしていました。
あの結婚式から1年。
この1年の間には色々あったけれど、それでも夫婦として少しずつ前に進んでいるんだという気持ちになり、密かに感動していたのでした。
せめてこの日は1日、Kと仲良く過ごしたい、そんな気持ちで目覚めるKを待っていると、いつもと同じくらいの時間にKが起きて来ました。
ニコニコしながらKに
「おはよう♪」
と言うと、Kもにっこり笑って
「おはよ~♪」
と言いながら私に抱きついてきました。
そんなKの様子に内心ホッとし、私は更にウキウキした気持ちになりました。
しかし、そんな状態は長くは続かず、その後、やはり会社のことが気になるのか Kはいつものように機嫌が悪くなってしまったのでした。
何もこんな日に機嫌が悪くならなくたって・・・と少々ガッカリしながらも、まさかこれ以上雰囲気の悪くなるようなことはしないだろうと思った私は、なるべく普通にKに接していたのでした。
それでもKは何となく機嫌の悪い様子で、私たちはずしりと重い雰囲気のまま、式場ホテルの食事へと向かったのでした。
予約の時間は食事をするには少し早いかなと思うような時間でしたが、夕暮れからの横浜の夜景を一望できるレストランでの食事。
一体どんな風だろうと小躍りしてしまいそうなワクワク感を持ちつつも、隣を歩くKの機嫌が気がかりな私。
そして、もう一つ、私は自分達の服装に気後れしていたのでした。
実はこのレストランに予約を入れた後、私はKに
「当日には何を着ていこうか?フレンチレストランだと変な格好できないよね?あなたはスーツでいいけど、私は着てくものがないなぁ。」
とクローゼットを開けて中を覗きながら言ったことがあったのですが、Kはそれに対してさらりと
「あ?普段着でいいだろ?」
と答えたのでした。
フレンチのお店で私達の普段着(=ジーンズにトレーナーかTシャツ)などという格好で行くなんて、とんでもないと思っていた私は、Kが冗談を言っているのかと思い、
「えええ?さすがにそれはまずいでしょ?」
と半分笑いながら言ったのでした。
するとKは
(何笑ってんだよ?)
とでも言いたげな表情で、
「はぁ?何がだよ?所詮あんなホテルのレストランだぞ?別にそんないい格好して行かなくたっていいっつぅの。」
と言ったのです。
その言い方はとても冗談を言っているようには思えず、私はまた思考が停止してしまい、結局それ以上は突っ込めなかったのでした。
そんな状態で当日を迎えたのですが、私は内心
(本当に普段着で行くつもりだろうか?)
とハラハラしながら、もしかしたらKにスーツを出せと言われるのではないかという期待を胸に、その言葉を待っていました。
しかし、Kは私が出した普段着を着たままで平然としていました。
本当にそれでいいのか、雰囲気の悪さに聞きたくても聞けず、悶々としながら家を出発したのでした。
相変わらず何となく機嫌の悪さをかもし出すKの後ろを小走りで追いかけるようにしてホテルに入り、記憶の通りにエレベーターに向かうと、ロビーの脇にある喫茶室が見えてきました。
そこは結婚式の打ち合わせに来た時、食事をしたりお茶を飲んだりして利用していた喫茶室だったのです。
その前でKは
「なつかしいなぁ。」
とつぶやきながら立ち止まったのです。
私はKの隣に立ち、ちらっと横顔を覗くと、Kはうっすら笑顔になっていました。
その様子に少し安堵し、
「そうだね。」
と答えた私。
人一倍打ち合わせに通い詰めたので、あの頃は休みの度にその喫茶室に行っていたのでした。
そんなことを私も懐かしく思い出していました。
すると、次の瞬間、Kが突然ぱぁっと顔を明るくしたのです。
しかし私は瞬間的に嫌な予感がしたのでした。
・・・なかなか思い出せず、更新が遅くなってしまいました。

でも何とか思い出すことが出来ました。

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