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表面上は仲直りをした形の私達でしたが、もう何事もなかったかのようにスッキリした顔をして、時折鼻歌なんかが出てくるくらい、機嫌の直ったKに対して、私はなんともスッキリしない気分でいつまでも モヤモヤした気持ちでいました。
こんな時に限ってKは下らない事を話しかけて来ては、私の様子を伺ってくるのです。
少しくらい静かにしておいてくれれば、もっと早く気持ちも切り替えられるのに、Kの問いかけに対して、モヤモヤした気持ちを押さえながらなるべく平然と答えなければならないのは、とても苦痛でした。
そんな時は、自分が本当に心の狭い人に思えて、ますます嫌な気持ちになりました。
Kは今度は少し離れたショッピング街まで車を走らせました。
駐車場に車を置いて、ショッピング街の中を歩き、少し大きなデパートにたどり着く間、Kは私の手を握り、黙って歩いていました。
私は自分の中のモヤモヤと戦いながら、デパートに着く間に ぼそぼそと話をしているうちに、少しずつ気分が落ち着いてきたのです。
そのデパートでも雑貨のフロアに向かうことにし、そのフロアにたどり着くと、Kは私から離れ、
「じゃあ、俺はあっちの方見てるから。適当に決めてくれよ。」
と言って、すたすたと離れて行ってしまいました。
(え?何?)
私は一瞬何を言われたのかわからなくなり、急いでKの後を追うと、
「何で?一緒に見ないの?」
と声を掛けました。
するとKはこちらを振り返って、
「だって、さっき『俺はもう口を出さない』って言ったろ?お前に任せるって。だから適当に・・・じゃなかった、選んで買ってくれよ。」
と言ったのです。
確かにKはそういいましたが、私はてっきり私が選んでいるのを一緒に見てくれるものとばかり思っていたのです。
でもKは私に1人で選べと言っていたのでした。
驚いた私は
「何で?一緒に選べばいいじゃない?私はそういう意味で言ったんじゃないよ?」
と訴えたのですが、Kは平然と
「だって好きなように選ばせてくれないなら、選ばないほうがいいから。」
と言ったのです。
本当ならそこで怒るべき状況なのですが、その言い方があまりにもあっさりと、堂々と、本気で言っているのがわかり、まるで予想もしなかった答えが返って来た時の様な気持ちでした。
そんな言葉にどう切り返していいのか迷ってしまい、言葉が止まってしまったのでした。
するとKは目の前で黙ってしまった私に
「じゃ、頼むよ。」
と言ってまたすたすたと歩き始めてしまいました。
私は何だか複雑な気持ちになっていました。
(何か違う・・・そういうことが言いたかったんじゃないのに。何でそうなっちゃうの???)
そう思い、私は再度Kを追いかけて行くと、
「ねぇ、そうじゃなくて、一緒に選べばいいじゃない。」
とKの背中に向かって言ったのです。
するとKは頭だけを私の方に向けて、笑顔で
「え~、嫌だよ。」
と言ったのでした。
そして立ち止まったかと思うとくるりと私の方に向き直り、
「つうか、しつけ~よ。俺は選ばないって言ったら選ばないから。」
と言って、ニヤリと笑ったのでした。
その表情の裏には、
(1人で選べるもんなら選んでみろ、その代わり変なものじゃないだろうな?)
という気持ちがこもっている気がしました。
私はそれ以上何も言うのはやめて、その場で立ち止まっていました。
(どうしよう・・・どうしよう・・・)
私はまたフルスピードで考え出しました。
本当ならKの言うとおり、任せると言われたのだから、自分の思った通りの物をさっさと買えばいいのですが、この時の私は
(何が何でもKと一緒に買わなければ・・・。)
という気持ちになってしまっていたのです。
必死に自分の気持ちをどう伝えたら一緒に選んでくれるのか、そればかりを考えていました。
そんなことをしているうちに、Kはどんどん1人で歩いて行ってしまい、何と下り方面のエスカレーターに乗って下の階へ降りようとしていたのです。
私ははっとなり、慌てて後を追いかけました。
私がエスカレーターにたどり着いた時には、Kはもう半分以上 下ったところに立っていました。
急いでエスカレーターを歩きながら
「K!」
と声を掛けると、Kは振り返り、驚いた様子で
「何してんだよ!」
と言ったのです。
同時にエスカレーターを降りると、Kは私に向かって、嫌な顔をしながら
「いい加減にしろよっ!お前がああだこうだ言うから、好きに選べって言ってんだろ?
何でも俺に聞くんじゃねぇ。それくらい自分でやれよっ!」
と強い口調で言ったのでした。
私は縮こまりながら
「でも・・・これはKのお返しだし。」
などと訳の分からないことを小声で言うしかありませんでした。
Kは、その場で腕組みをしながらチッと舌打ちし、
「お前さぁ、勢いよく俺に言う割には自分では何にも決められないんだろ?結局こういうのは俺が選ぶしかないんじゃんか。」
と言い、今度はため息をつきました。
そんなKを目の前に、私はもう どうしていいのか全然分からなくなっていました。
Kはそんな私に
「大体よぉ、お返しだって適当な物なんかじゃ相手に失礼なんだよ!こっちが真剣に選んで、そして贈った物じゃなきゃ、意味がないんだ!」
と、少々声を荒げたのでした。
「いや・・・そうじゃなくて・・・適当とかじゃなくて、無難に使える物がいいと思って・・・。」
私は何とか言い返そうとやっとの思いでそう言ったのですが、Kはふふんと鼻で笑いながら、
「無難なもんって、お前にとって良く使うものでも、相手にとってはそうじゃないんだよ。」
と言ったのでした。
そんな風に自信たっぷりに言われると、私はお返しをどんなものにしていいのか、全く思いつかず、そして何を選んでもKに
「こんなもんかよっ!!」
と言われてしまうのではないかと思い、自信が全くなくなっていました。
Kの言う通り、私は文句を言っているだけで、実際Kがいないと何も出来ない人なのかもしれない。
何故かそう思い込んでしまい、気持ちが萎縮してしまっていたのでした。
思った以上にやっぱり長くなってしまいました。
これを書いていると今でも思考がぐるぐると巡り、とても嫌な気持ちになります。

何だかどうしてもキーを打つ手が鈍り、なかなか更新できませんが、頑張って書き上げますので、出来たら応援お願いします






