夫婦でシネマ

夫婦で見た映画と、個別に見た映画について感想をかいてます。全て映画館で見た映画で、ミニシアター系の映画をたくさん紹介!

抱擁のかけら

2010年03月24日 | は行の映画
Story
盲目の脚本家のハリー・ケイン(ルイス・オマール)は新聞記事で実業家のエルネスト(ホセ・ルイス・ゴメス)が亡くなった事を知る。その後、エルネストの息子(ルベーン・オチャンディアーノ)がハリーを訪ね、自分の監督作の脚本をハリーに依頼。それをきっかけに、ハリーは封印していた過去に向き合う。今から14年前、失明する前のハリーは、新進監督マテオとして活躍していた。ある日、マテオはオーディションにやってきた美しい女性レナ(ペネロペ・クルス)に心奪われる。しかしレナは、実業家エルネストの愛人だった…。(goo映画より)
2009年/スペイン/ペドロ・アルモドバル監督作品





評価 ★★★★

!! ネタバレ注意!! まだ観てない人は読まないで下さい。

今頃気づいたんですが、アルモドバルの映画は映像がとてもスタイリッシュですね。特に今作の場合は、最盛期のブライアン・デ・パルマをスパニッシュ風に味付けしたみたいな感じ。気のせいかデ・パルマの「ミッドナイトクロス」('81)と設定がだぶる(注)ところがいくつかありました。

そんなことはどうあれ、これは作劇術の妙に魅せられる映画でした。出だしの部分で、ペネロペ演じるレナ、脚本家のハリー・ケイン、実業家のエルネストらの物語が時間軸を錯綜させた形で語られ、次第にその関係が明らかになって行くくだりは、とてもスリリングで上質なミステリーの趣。
ハリーがレナを主演に映画制作を開始。ファインダー越しに何度も映されるレナが失われた恋人の面影みたいな感じで、喪失感を高めます。
要するに3人は三角関係に陥って行く訳ですが、エルネストが撮影現場に送り込んだ息子のライ・Xがビデオでレナを監視、再生されたレナを嫉妬の眼差しで観るエルネストの描写などは、必然としての事件発生を予感させて、サスペンス色が増幅。
映画の完成後、ハリーとレナが逃避先で事故に巻込まれる訳ですが、この謎の解明に先のビデオが重要な役目を果たすのも上手いです。
この事件をきっかけに別人格として生きる道を選んだハリー。彼のかつての恋人ジュディットが心境を吐露するバーの場面も捨て難い雰囲気。
ハリーが失敗作となった過去の作品を再編集してレナを再生させるのは、失われた映画の再構築=失われた愛の再構築ということでしょうか。
そうしたテーマはさておき、ラブ&ミステリー映画として楽しんでしまいました。

(注)
・「ミッドナイト」主演のJ・トラボルタは映画の音響技師。「抱擁」のハリーは監督/脚本家。
・両作とも事故の隠し撮りフィルムが重要な役割を果たす。
・失われた恋人が映画の中で再生される。
 「ミッドナイト」はアフレコされた悲鳴として。「抱擁」はディレクターズカットで。
「ミッドナイト」は悲壮感ばかりが残りますが、「抱擁」は愛を濃厚に描いているところがスパニッシュ風味でした。


映画『抱擁のかけら』公式サイト


(「抱擁のかけら」 2010年2月 名古屋 ミッドランドスクエアシネマ にて鑑賞)

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 新しい人生のはじめかた | トップ | ジェイン・オースティン 秘... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (デイヴィッド・ギルモア)
2010-08-08 10:11:00
いつもお世話になり、ありがとうございます。

そうですね、おっしゃるように、この映画は、ヒチコック大好き人間のデパルマ作品の派手でどぎついような画像と似ている面がありますよね、
ぼくは、「トークトゥーハー」「オールアバウトマイマザー」など、ペドロ監督作品は、苦手だったのですが、近作は自分の心にヒットしました。
ヒチコック・タッチや、ペネロペをオードリーやモンローに変身させて登場させるなど、ペドロ監督の映画愛のようなものを感じました。
返信する
映画愛ですね。 (wanco)
2010-08-08 11:44:32
デイヴィッド・ギルモアさん、こんにちは。
こちらこそ、いつもお世話になっております。

他の色々な映画を連想させるシーンが結構ありましたね。
ペネロペが相変わらず奇麗でしたが、オードリーやモンローに変身させられる所は可愛かったです。
映画愛とともにペネロペへの愛情も感じさせられました。
返信する

コメントを投稿

は行の映画」カテゴリの最新記事