夫婦でシネマ

夫婦で見た映画と、個別に見た映画について感想をかいてます。全て映画館で見た映画で、ミニシアター系の映画をたくさん紹介!

サン・ジャックへの道

2007年06月10日 | さ行の映画
Story
ストレスで薬に依存している兄ピエール(アルチュス・ド・パンゲルン)、頑固なオバサン教師クララ(ミュリエル・ロバン)、アルコール漬けで文無しの弟クロード(ジャン=ピエール・ダルッサン)。険悪な仲の兄姉弟が、亡き母の遺産を相続するためフランスのル・ピュイからスペインの西の果て、聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまで1500kmにも及ぶ巡礼路を一緒に歩くはめになった。このツアーの同行者は、ガイドのギイ(パスカル・レジティミュス)、山歩きと勘違いして参加した女の子エルザ(フロール・ヴァニエ=モロー)とカミーユ(マリー・クレメール)、アラブ系移民の少年サイッド(ニコラ・カザレ)、従兄弟サイッドにだまされ、二人分の旅費を母親から出してもらったラムジィ(エイメン・サイディ)、物静かな女性マチルド(マリー・ビュネル)。9人の男女が、様々な思いを胸にフランスのル・ピュイから旅の一歩を踏み出した。(goo映画より)
2006年/フランス/コリーヌ・セロー監督作品





評価 ★★★★★

「女はみんな生きている」のコリーヌ・セロー監督の最新作。

仲の悪い兄姉弟が、母親の莫大な遺産を相続するために、フランスのル・ピュイからスペインの西の果て、聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまで1500kmにも及ぶ巡礼路を一緒に歩くはめになった物語。

巡礼の旅を続けるメンバーがみな個性的で面白かったです。特に、仲の悪い兄姉弟が、巡礼中に事あるごとに喧嘩し出すのが笑えました。兄ピエールとその妹クララが、時には相手をひっぱたくほどの大喧嘩を繰り広げたりして、そのシーンでは場内から笑いが起こりましたね。

巡礼の旅を続けるメンバーたちは、一見みな何事も無いような顔をして旅を続けているのだけど、実はそれぞれにみな悩みを抱えています。兄ピエールは、会社経営と彼のアル中の妻のことでストレスを抱えており、妹クララは、失業中の夫に代わって教師の仕事で家族を支えている。末っ子の弟クロードは一文無しのアル中で、離婚した娘には愛想をつかされているし、兄姉弟の他にも、重い病気を抱えている者、仕事のせいで家族に会えないことを悩んでいる者、字が読めないことを気にしている若者など、それぞれに悩みを抱えている者ばかりが登場します。

本当ならこんなメンバーだと巡礼の旅も暗くなってしまいそうですが、旅を続けていくうちに、お互いが打ち解け合って助け合うようになり、明るく楽しい旅へと変わっていきます。特に、国語教師のクララがアラブ系移民の少年ラムジィに字を教えてあげるシーンは感動的でした。最初は遺産のために嫌々歩いていた兄姉弟が、旅も終わりに差しかかると、遺産のためではなくメンバーたちと一緒にゴールまで歩くことを目指すようになり、最後には旅の目的が変わっていったのが良かったです。

歩くことって身体にとってもいいそうです。歩くことで身体の脂肪は燃焼するし、脳が活性化されて、精神的にも明るくなったりするそうです。最初はストレスで薬漬けの日々を送っていた兄ピエールが、巡礼の旅で歩き続けることによって、途中から薬を飲まなくても平気になったというエピソードが登場します。1500kmの道のりを歩くのは本当に大変ですが、フランスやスペインの広大な美しい景色の中で歩いていくと、自然に心も身体も癒されて(また健康的に)なっていくんでしょうね。

ラスト、巡礼の旅が終わって、兄姉弟の生活がそれぞれ変化します。兄ピエールは、アル中の妻に健康になってもらおうと、自然の良い空気の中で一緒にウォーキングをするようになったり、妹クララは、母親を亡くしたラムジィを里親として家族に迎え入れたりします。そして弟のクロードは、娘と和解して幸せそうに歩いているシーンが登場します。
それぞれに幸せになった兄姉弟を見てると、この巡礼の旅は、亡き母親からの人生へのプレゼントのように思いました。





評価 ★★★★★

この映画は、シネスイッチ銀座で鑑賞したのですが、映画が始まる30分以上前から長蛇の列が出来るほどの盛況ぶりでした。

映画の冒頭、母親の死を知らせる手紙の配送場面が延々と続き、疎遠になってしまった3兄弟の状況をうまく印象づけています。

巡礼の旅を続けるメンバーは皆ユニークな個性ですが、特に印象に残ったのは、辛辣な女性教師のクララです。彼女は高校の教師で、特に宗教について辛辣な意見を持っているようです。彼女の台詞にヴェール着用問題で苦労した、というのがありましたが、フランスでは高校までの教育期間内は宗教に関する行為は一切禁止されているそうで、これは共和制を維持するための原則でもあり、いわゆる同一化政策によって様々な人種間の融和を促進するという考えに立脚しているそうです。彼女の個性は、こういった背景があるために形づくられたと思えますが、フランス社会の一端を知る上で興味深いものがありました。

巡礼の旅が終わって、フランス人とイスラム移民のカップルが幸せそうに歩く風景は「パリ・ジュテーム」の一挿話にも出てきました。最近のフランスでの暴動事件などの人種問題を重ね合わせると、フランス共和制を賛美しているのか、こうあって欲しいという切なる願いなのか、考えさせられる所です。

その他、巡礼者達が見る夢の場面が所々に挿入されるのがシュールで面白かったです。この夢のシーンがあるおかげで、母の別荘を訪れた3兄弟を窓から迎える亡き母、という非現実的な場面を違和感のないものにして、温かい感動を与えることに成功しています。


映画『サン・ジャックへの道』公式サイト


歩くとなぜいいか?

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(「サン・ジャックへの道」2007年5月 東京 シネスイッチ銀座にて鑑賞)

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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初めまして! (とらねこ)
2007-06-16 15:30:42
こんにちは。夫婦のご感想、とても面白く拝見させていただきました。
ワンコとニャンコなんですね♪

仲良く夫婦でご覧になっていらっしゃるなんて、素敵ですね。
今後も、よろしくお願いしますね

    私もニャンコです
返信する
こちらこそ初めまして! (nyanco)
2007-06-18 21:13:52
とらねこさん、こんばんは~♪
初めまして!nyancoと申します。
TB&コメントありがとうございました。

私達は夫婦そろって大の映画好きなので、二人一緒にブログを始めることにしました。
観た映画を少しずつ更新していますので、良かったらぜひ遊びに来て下さいね!

これからもどうぞ宜しくお願いします。
同じニャンコですね♪^^ 
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