放射線治療と医学物理

放射線治療、特に医学物理に関する個人的記録

CTを用いたTBIの線量分布

2008年08月26日 | TBI
放射線治療と医学物理 第36号

Susanta K. Hui, et al.: CT-based analysis of dose homogeneity in total body irradiation using lateral beam, J Appl Clin Med Phys, 5, 2004

TBIは従来TPSを使用せずに処方線量を計算し、体幹部線量の不均一性を補償体にて調節、かつ水晶体および肺の防護に遮蔽体を挿入するという手法が用いられてきました。その後さまざまな手法が開発され、生存率の増加が可能となり、同時に短期および長期副作用の評価やQOLが研究対象として重要な項目となっています。骨髄幹細胞に対する不十分な線量もしくはcritical organにおける過剰な線量、その他の線量の不均一性はTBIの失敗に起因しうる項目です。なかでも肺炎は重要な線量の制限となっており、CTを用いてTBI時の臓器線量を把握することは重要との主張です。

 本論分において、CT密度データを用いたTPSの線量比較はRando Phantomを用いて行われています。Rando Phantom内にTLDを挿入し、10MeV, SSD.300cm, 照射野全開(40cmx40cm)、コリメータ45度、側方ビームにて照射、TLDでの測定結果とTPSでの計算結果を比較しています。

 TLDの測定結果から上胸部(肩部入射)や肺の線量は処方(臍の位置)に比較して25%程度の線量の低下が認められています。またこのTLDの結果はTPSにて計算された臓器線量との比較にて非常によい一致が認められています。

 Rando Phantomの検討により、処方に比較し上胸部(肩部入射)は20%以上の低下、肺の線量は25%程度の低下(腕で遮蔽されている)、その他は5-10%以内で照射されている。しかし、腕で隠されていない部分の肺野は非常に高い線量(30%程度)を受けている他、頭部におけるアクリルの補償体にも関わらず水晶体の位置で10%程度高い線量が照射されており、やはり補償体、遮蔽体の有効活用は必要である。

 肺の線量を補償体や遮蔽体で制御する際に、骨髄線量が減少してしまうことを防ぐため、また種々のcritical organの線量、線量分布およびDVHの評価は重要である。

詳細は論文で。