秩父三社参り ep5

（ep4の続き…）

秩父ノープラン旅行2日目。素泊まり1泊7700円の部屋は、案外、快適だった。しかし、元々、寝つきが悪い上に枕が変わって数時間しか眠れず…。万全ではないが、この旅行のメインイベントである三峯神社参拝を成し遂げるのだ。状況次第では、安宿を探して、もう一泊する選択肢もあるが、年末年始で散財して金欠どん底なので、なるべく避けたい。

さて、三峯神社の玄関となる三峰口駅まで、どのルートで行くべきか。昨日、秩父駅で声を掛けてくれた親切なオッサンは、小鹿野町営バスで三峰口駅まで行くルートが良いと教えてくれた。しかし、小鹿野町民3人（旅館従業員2人と地元商店のオバちゃん）に相談したところ、口を揃えて、町営バスは当てにならないから秩父駅まで戻った方が良いと言う。

果たして、どちらの意見を信じるべきか？　親切なオッサンか、地元の小鹿野町民3人か。地元住民に信用のない町営バスは、少し頼りないが、秩父駅まで戻るのは、小鹿野町に泊ったことが失敗みたいになるので、なんか嫌だ。地元住民は、意外と地元を知らないもんだしねェ。よし、戻るより進もう！　最後まで、親切なオッサンを信じるのだ。これも、きっと人の縁だ。

運行数の少ない町営バスに乗ると、結構、年配の運転手さんだった。幼稚園の送迎用みたいな小型バスだけど、よく運転できるよなァ。15分ほど乗って、薬師の湯バスターミナルに到着。ここで、別のバスに乗り継ぎするらしい。運賃200円を払うと乗継券というものを渡された。ここで30分ほど待つ。周辺を散策すると、直ぐ側に道の駅のような施設があった。

道の駅には、地元の野菜や加工品が並んでいた。そんな中に変わったものを発見。「たらし焼き（B級グルメ）」270円なり。農作業の小休止などに食べる地元の郷土料理らしい。ちょうど小腹が空いていたので、購入して、レンチンして、奥の食事スペースで喰ってみた。あれ、知っている味がする…？　これって、俺が子供の頃に、親父が作ってくれた「べったら焼き」じゃん。

小麦粉を水で溶いて紅ショウガを混ぜ、油を敷いたフライパンで薄く焼いて、醤油で味付け。「べったら焼き」は、油っこくて、しょっぱくて、長らく高血圧を患って昨年の夏に死んだ親父らしい手抜き料理だった。「たらし焼き（B級グルメ）」は、ネギや干しエビが入っていて、そこそこ手の込んだ郷土料理なのに、なんで似ているんだろう。あァ、親父の「べったら焼き」が懐かしい…。

薬師の湯バスターミナルから三峰口駅へ。途中、廃村のようなところを通りかかると、奇妙な人影がチラホラ。やけにリアルなカカシが、生活している村民のように飾られているのだ。「かかしの里」という看板があったが、なんともシュールな光景だった。バスは、どんどん山の中に入って行く。こんなにも山奥だったとは…。20分ほどで三峰口駅に到着。運賃400円なり。

三峰口駅から更にバスで三峯神社へ。なんで「ミネ」の漢字が違うのか。バスの時間まで時間があったので、三峰口駅の売店で「みそポテト」250円を喰って待つ。バス停に先頭で並んでいたが、時間になってもバスが来なかった。5分ぐらい遅れて、満員バスが通り過ぎた。まさか、あれか…？　通り過ぎたバスがUターンして戻ってきたが、ドアが開いても誰も降りない。

満員バスに、更に10人ほど乗り込み、超満員バスになった。こんなに乗って良いのか…？　鮨詰め電車に乗ったことはあるが、鮨詰めバスは初めてだ。この超満員バスに1時間も乗るなんて…。座れないし、寝不足だし、山道で揺れまくるし、ヒトイキレむんむんだし、30分もしないうちに気持ち悪くなった。三峯神社までの道のりが、こんなに辛いとは…。知っていたら諦めていたなァ。

気持ち悪さに耐えながら1時間が過ぎた。山道は、大渋滞で遅々として進まない。吐き気すらあったが、目の前に美人さんがいたので必死に堪える。ギブアップ寸前の所で、バス内に運転手のアナウンスが響いた。三峯神社の駐車場まで、あと2.5kmぐらいの距離になるが、希望者は、ここで途中下車しても良いとのこと。2.5kmの山道は辛いが、吐くよりマシだ。運賃690円なり。

途中下車を希望したのは、10人ちょっと。目の前にいた美人さんも降りた。予定外の秩父山中ハイキングである。寒いが、天気が良くて、直ぐに気分が良くなった。2.5kmぐらいなら、まァ、直ぐに着くだろう。しかし、登っても登っても坂道が続く…。目の前にいた美人さんは、サクサクと歩き、どんどん先に行ってしまった。待ってよ、美人さん…。

（ep6に続く…）