好きな食べ物は? と聞かれたら、去年までは、ウナギ! と即答していた。食欲をそそる香ばしさ、ふっくらした食感、ご飯に甘さとしょっぱさが染み込む幸福。鰻の蒲焼こそ、日本料理の最高峰だと信じていた。が、しかし…。今の俺は、そこまでウナギに心が動かない。好きな食べ物の断トツ1位から、10位以下の圏外にランクダウンしてしまったのだ。あの忌まわしき小骨のせいで…。
今年の正月3日、初詣の帰りに鰻重を喰った。安価で急成長している「鰻の成瀬」である。そこで、小骨が喉に引っかかったのだ。お茶を飲んでも、ご飯を丸呑みしても、取れなかった。2日が経っても小骨が取れず、喉の違和感は、痛みに変わった。徐々に、身体が怠くなり、発熱した。念のため、病院で検査をすると、まさかの新型コロナ陽性だった。
ウナギの小骨とコロナ感染に、因果関係は無いだろう。たまたま不運が重なっただけだと思う。しかし、俺には、ウナギの小骨1本から不運が始まったとしか思えなかった。人生で初めて鰻の小骨が喉に引っかかり、人生で2度目のコロナ感染…。去年までは、月1ペースで母親と「鰻の成瀬」に通っていたが、正月3日以来、ウナギを喰いたいという欲求が消滅していた。
これは、「鰻の成瀬」へのクレームではない。鰻重に小骨が残っているのは、半ば、常識みたいなものだ。寧ろ、「鰻の成瀬」は、安価で鰻重を喰える、とても有難いお店だ。髪の毛だって、ちょっとした弾みで身体に刺さることがあるし、たまたまの不運だと思っている。そうは、思っているが、どーにも「鰻の成瀬」に足が向かなくなり…。そして、100日ほど経った。
母親が、「鰻の成瀬」に行きたいと言い出した。正直、気が進まなかったが、老いた母への親孝行と諦め、付き合うことにした。前回までは、家から30分ほどの場所にある「鰻の成瀬」に行っていたが、今回は、家から20分ほどの場所に出来た新店舗に向かった。新店舗は、小さい居抜き物件で、場所も解り難かった。どうも、それが母親に悪印象だったらしい。
約100日ぶりに喰った鰻重は、そこそこ美味かった。小骨も全く気にならず、あっさり完食。しかし、以前ほどの満足感がなかった。どうやら、俺のウナギへの愛情は、本当に冷めてしまったらしい。一方、母親は、やたら小骨が気になると文句を言っていた。前回までの店舗の方が良かったらしい。いや、同じチェーン店なんだから、鰻重そのものに、大した変わりないと思うけど…。
満足感は、先入観や印象で大きく変化するようだ。俺は、小骨の忌まわしい記憶で満足感が減退し、母親は、新店舗への悪印象で満足感が減退した。人間関係に似ているかも…。喉に引っかかった小骨は、コロナ療養中に自然と取れたらしい。しかし、取れた実感が無いので、未だに喉に気持ち悪さを感じることがある。ウナギへの愛情は、いつの日か蘇るのだろうか…。
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