ノッピキの読書ノート

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扉の向こうに何があるか?
本の扉を開くたびに、ワクワクします。

玄田有史著「仕事のなかの曖昧な不安」

2005年08月27日 | 現代社会
 今週は葬儀参列の為故郷に帰ったのだが、帰りの車中で読むために買った本の中に、この本はあった。
著者は、豊富なデータを基に、若年層の雇用問題の深刻さを取り上げている。
中高年の雇用問題の影で見落とされている若年の雇用こそ、中高年の雇用以上に問題点が多い。
 『若年雇用とパラサイト・シングルの関係について』というコラムの中で、著者は次のように述べている。

パラサイト・シングルが親からの「既得権」を享受しているというよりも、
むしろ社会から「既得権」を与えられている中高年に、若者が「パラサイト」している。

正社員になる若者が少ないのは、労働意識の変化より、雇用状況・雇用条件の悪化のせいだという。
中高年の再雇用・定年年齢の延長が、若年者から雇用の機会を奪うことになるらしい。
現在の中高年は、会社で様々な技術を身につけているが、現在の若者にはその技術が無い。
また、若者に技術教育をする余裕のある企業は、少なくなっているという。
技術の無い若者が中高年になったとき、日本はどんな社会になるか、想像するのも怖い。

 そういえば、久しぶりに会った従姉から「最近は、あちこちの家で、働かない人がいて困っているようだ。」と聞いたばかりだった。
働けない社会構造の問題でなく働かない人間の問題として捕らえられている事に、大きな問題があると思う。アルバイト先の少ない地方で暮らす若者の苦痛は想像に余りある。
仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在

中央公論新社

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