ノッピキの読書ノート

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扉の向こうに何があるか?
本の扉を開くたびに、ワクワクします。

尾道渡船場かいわい

2006年06月08日 | 小説
「尾道」という言葉は、不思議な懐かしさや憧憬を伴う言葉であるらしい。
「尾道出身です。」というと、「えっ」と驚かれ「素敵な所が故郷なんですね」と言われる。
どうやら、社交辞令だけではないようです。
その後に続く会話や尾道ファンのHP・ブログなどで、そう確信しました。
尾道出身者としては、嬉しいかぎりです。

尾道ファンの方々に呼んで欲しい本の一冊として、「尾道渡船場かいわい」をお薦めします。
尾道同様の「不思議な懐かしさ」伴った作品です。

第7回神戸ナビール文学賞受賞の表題作ほか、失われた青春期への哀惜を描く尾道物三篇を収録されている。
「尾道の一番踏切」「夏の姉」「井戸端の日々」「ベッチャー祭りのあとで」「おとぎ草紙をもういちど」「ふたたび祭りの日に」「尾道渡船場かいわい」
尾道渡船場かいわい

澪標

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宮尾登美子 序の舞/きのね

2005年08月31日 | 小説
 掲載されている小説が面白くて新聞をやめられない、ということは結構あったが、朝が来るのを待ち遠しく感じたのは、『序の舞』が初めてだった。
宵っ張りの朝寝坊を自認している私が、早起きして新聞配達が来るのを待っていた。

絵画『序の舞』は、美人画で名高い上村松園 (1875-1949)の作品で、舞を舞う女性の凛とした立ち姿が美しい。宮尾登美子の『序の舞』は、上村松園の絵に懸けた生涯を描いた作品だ。
幼児期から絵を描く事に異常な執着を見せる松園と、周囲の反対を押し切って絵を習わせた母親。松園は、男性中心の日本画家の世界で、女の身で画家として立つ、その苦労は、並大抵のものではない。.............
 絵画『序の舞』の女性の凛とした美しさは、松園の凛とした生き方と重なる。

 『序の舞』の次に新聞に掲載された『きのね』も、また心ひきつけられる作品だった。
『きのね』というのは、歌舞伎の舞台進行の合図に使う『柝(拍子木)の音 』のことだという。
歌舞伎役者の家へ女中として奉公にあがった光乃は、梨園の御曹司・雪雄に仕え、夫人となり、苦労を重ねる。
彼女は、耐え忍ぶことの多い生涯だったが、『耐える女』だけでない気品が感じられる。
華やかな歌舞伎の舞台に進行の合図に使われるの『柝』の音は、名優を陰で支える光乃の姿と重なる。
張りのある冴えた音だと想像する。

このモデルが誰であるか、私には長い間謎だった。ある日、職場で「今一番の楽しみは新聞小説だ」と言ったところ、そばにいた先輩が新聞を持ち出して、読み始めるやいなや「あら、これは海老蔵よ」と、言い放った。並外れた美男ぶりでと高い気品を備え「海老様ブーム」起こしたのは、十一代団十郎だった。つまり、この小説は現団十郎の両親の物語ということになる。

歌舞伎に造詣の深い彼女は、登場人物の全ての実名を言い、この小説の存在を教えた私に感謝した。

序の舞 (上)

朝日新聞社

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きのね〈上〉

新潮社

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きのね〈下〉

新潮社

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梨木香歩(女の子と祖母の心の交流)

2005年08月20日 | 小説
「西の魔女が死んだ」というタイトルが、出会いのきっかけだった。この手の本はとっくに卒業しているはずだったが、なんとなく立ち読みをして、続きを読みたくなって購入、そしてはまってしまった。以来「梨木香歩」と言う名前の目にすると、迷い無く買うことにしている。メルヘンチックな物語構成と、祖母と孫娘の心の交流が描かれているのがいい。遠くに住む祖母の、母親とは違った眼差しが、なんとも言えない。「裏庭」も不思議な物語だ。庭から開くもう一つの世界、時を越え、空間を越えて広がる世界は、心の風景であるかもしれない。ワクワクでも懐かしい気がする。「りかさん」「からくりからくさ」は、不思議な人形を巡る一連の物語である。ここでも祖母と孫娘との心の交流が、テーマの一つになっている。成長期の女の子にとって、母親の役割も重要だが、母親とは違う祖母の役割もあると、気づかされる。
西の魔女が死んだ

新潮社

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裏庭

理論社

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りかさん

新潮社

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村田エフェンディ滞土録

蟹塚縁起

マジョモリ


ファンタジーの宝石箱(vol.2)
からくりからくさ