ノッピキの読書ノート

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扉の向こうに何があるか?
本の扉を開くたびに、ワクワクします。

三浦展「下流社会」

2006年01月14日 | 現代社会
この本を読んでから紹介文をなかなか書けなかった。
多忙でもあったが、読んでショックを受けたとも原因かと思う。

事は経済だけの問題ではない。
近未来の社会に思いを馳せると気持ちが萎える。
自分の生活意識は正に下流そのものだとわかったことも、ショックである。

暇を見てもう一度読み直し、再度書き直すつもりではあるが、一読をお薦めしたい。
下流社会 新たな階層集団の出現

光文社

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生協の白石さん

2005年12月18日 | 現代社会
この本の著者(主人公)は、小金井にある東京農工大学の生協で働く職員です。
普通のサラリーマンの白石さんが、なぜ、今こんなにも注目を集めているのでしょう?

白石さんは、生協の『一言カード』という質問、要望コーナーの担当者です。
白石さんは、普通没カードになるような質問にも、丁寧にコメントを記入し回答します。
どんな問いにも、ユーモアを交えて、丁寧に答えてくれる白石さん。
そのコメントには、学生に対する優しいさが感じられ、多くの人の共感を呼び、人気者になってしまいました。
丁寧ではあるが型にはまらない回答は、白石さん自身が楽しんで回答しているからではないでしょうか。
その自然体の回答(でもなかなか奥深い)が、また魅力になっていると思います。

「牛を売ってください」「単位を売ってください」「愛がほしい」
もし、あなたが担当者だったとしたら、こんな質問にどう答えますか。
答えを考えてから本を読むと、ただ読むだけとは違った楽しみ方ができます。
白石さんの見事な回答は、本で読んでほしいと思います。

この本には、この白石さんと学生たちのやりとりの記録「一言カード」と、白石さん自身による解説が収録されています。
生協の一職員としての白石さんの言葉にも、彼の人柄が現れていて、なかなかいいと思います。
生協の白石さん

講談社

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浜野保樹 『模倣される日本』

2005年09月17日 | 現代社会

 フランスは、国連の文化機関であるユネスコの本部をパリに誘致したり、「芸術の都」といえば、日本人の多くが「パリ」と答えてしまうほど、自他ともに認める「文化」国家だ。
フランスでは、単なる金持ちを成金として蔑み、国に対しても、同様な見方をしていた。そのため、「文化のフランス、経済の日本」というのが彼らのプライドだった。
 だが、いまや逆転してフランスでは「文化の日本、経済のフランス」という論調で語られるようになった。
                       (「模倣される日本」冒頭の文)


 今(かなり前から)、日本のアニメが海外から注目されているという。
日本のアニメスタジオには、海外からの訪問者が多く、外国人スタッフも結構いるらしい。それらしいニュースは時々耳にしていたが、日本アニメに対する海外の関心の高さは、私の想像をはるかに超えていた。
なにしろ「フランスで最も知名度の高い日本人は鳥山明」なのだそうだ。

第1章は、模倣される映像
浮世絵が、映画が、アニメが、海外の文化に与えた影響について、具体的に解説している。豊富な例示を読み、ただただ驚くばかりだった。
第二章は、模倣される生活様式
日本人のデザインが、和服が、鉄人の料理が、和食が、立ち居振る舞いが、注目を集め、各方面に影響を与えている、という。
第三章・模倣される理由、第4章・模倣する日本、第五章・共感される日本、と、一気に読んでしまった。
日本の文化って、なんてすごいんだと、喜んでばかりはいられない。

 ------------------------------ 日本のアニメーションは作品として優れたものが多く、海外でも人気があるが、デジタル化や人材育成、制度的な整備を怠ると、アメリカなどの諸外国の急迫によって、「第二の浮世絵」になるだろう。浮世絵が印象派の誕生を促し、静養絵画の復活に寄与したものの日本国内では衰退してしまったように、日本のアニメも同じ運命をたどりかねない  --------
                       (「模倣される日本」第1章より)


といって、私になにができるだろうか?
ともかく、日本の良き文化の伝統を、簡単に捨ててはいけないと、強く思った。
模倣される日本―映画、アニメから料理、ファッションまで

祥伝社

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玄田有史著「仕事のなかの曖昧な不安」

2005年08月27日 | 現代社会
 今週は葬儀参列の為故郷に帰ったのだが、帰りの車中で読むために買った本の中に、この本はあった。
著者は、豊富なデータを基に、若年層の雇用問題の深刻さを取り上げている。
中高年の雇用問題の影で見落とされている若年の雇用こそ、中高年の雇用以上に問題点が多い。
 『若年雇用とパラサイト・シングルの関係について』というコラムの中で、著者は次のように述べている。

パラサイト・シングルが親からの「既得権」を享受しているというよりも、
むしろ社会から「既得権」を与えられている中高年に、若者が「パラサイト」している。

正社員になる若者が少ないのは、労働意識の変化より、雇用状況・雇用条件の悪化のせいだという。
中高年の再雇用・定年年齢の延長が、若年者から雇用の機会を奪うことになるらしい。
現在の中高年は、会社で様々な技術を身につけているが、現在の若者にはその技術が無い。
また、若者に技術教育をする余裕のある企業は、少なくなっているという。
技術の無い若者が中高年になったとき、日本はどんな社会になるか、想像するのも怖い。

 そういえば、久しぶりに会った従姉から「最近は、あちこちの家で、働かない人がいて困っているようだ。」と聞いたばかりだった。
働けない社会構造の問題でなく働かない人間の問題として捕らえられている事に、大きな問題があると思う。アルバイト先の少ない地方で暮らす若者の苦痛は想像に余りある。
仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在

中央公論新社

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