気分はいつも、私次第

アルカサル ー王城ー 完結編<前編>  ~公的~

                  青池保子
                      プリンセス・ゴールド 2007 3+4特大号     


 雑誌掲載ものですが、書きます。今まで書いたものやタイトルから察して、どうも危ない、とお思いの方は、このまままっすぐ真っ直ぐ回れ右!してお進み下さい。一応「公的」となっていますので、まぁ、私の中では「公平に見て」と言う感覚で書いていきます。まだ読んでいない方は、完全ネタばれですね。御自身のお気持ちで、御判断下さい。



  さぁ、始まりましたね!!先ずはもう復活おめでとう御座います&よく描いて下さった!という、思いで一杯である。復活が決まってから、私が思っていたのは
 
 1*マリアは、既に死亡しているか、最初に死んでしまうか。

 2*描き方は、王様とエンリケの2者に焦点を当てた展開か、または誰かが語り部となり、ある意味回想風に描かれるか。

こう言う事を考えていた。マリアの件は、もうマリアにページ数取られると後が大変、と言う思いから。また完結編は、もう戦いと言うか史実(一応)を追いかけるのに必死なので、マリアをじっくり描くのは困難だろって事から。誰に焦点を当てるかは、まぁ後者だとは思ってはいた。希望は前者だけど(笑)後者の方が、王様の悲しい姿が緩和されるだろうし、さっさと展開できるだろう。語り部は、もうロペスだろうって・・・・その通りだわ。って、コレは簡単に予想尽くしね。

 読み終わった後の第一声は「うまいなぁ」」です。変換すると、上手い、旨い、美味い、巧い等々出てくるが、全て当て嵌まるんじゃないかな?その位見事に描かれていると思う。星の数ほどの漫画さんがいて、それぞれ独自の色を出しているけれど、歴史をコレだけ要点を混ぜて、取りこぼし殆ど無く(キャラ関係は除く)、そして漫画として読ませるのは、青池氏だけだろうって私は思っているけど。こう書くと、漫画独自の情緒等が欠けているのでは、と思う方もいるかもしれないけれど、私は、表現の大きさ等に関係なく、シッカリ描かれていると思うよ。加えて、笑いも今回は少ないと言いつつも、随所に見えて、青池氏の歴史物の完璧な姿と言っては、言いすぎでしょうか?って言うほど、私は好ましいと思っている。

 青池氏御自身が欄外で「前編は全体の流れを」と仰っている様に、その通りの展開。四角いに囲まれた説明を、シッカリ読まなければ話が見えてこない。しかし、ファンの方々は、シッカリ読まれる事と思うよ。お休み期間に、メリメを読まれた方々も一杯いるだろうし。欲を言えば、英仏百年戦争の、この辺を読むと、もっと面白いし、背景が分かってくる。イコール、この時期、世の流れが王様にとって向かい風どころか、大波荒波位じゃないことが、分かってくるから。でね、この四角い囲みの説明、本当に本当にお疲れ様でした!って頭が下がる。コレは、何気なく書かれている風に読むけれど、大変な作業だと思う。ソレと、地図が随所に見られるけれど、コレも抑えて欲しいよね。もう、アッチコッチ、東西南北国外までって、読んでいるだけでもフラフラになりそうな位、走り回っている。これが・・・カスティリアの灼熱の中を・・・・と思うと、漫画と言えども、キャラにタオルを差し出したい心境である。

 絵柄はネェ、まぁ案外違和感なかった。でも12巻を見ると、オォォ!と思うほど違っているけどね。多分・・・ファンの殆どは「エロイカ~」」を読んでいるだろうから、今の絵柄に、違和感感じないんじゃないかな?それに、あんまりキンキラしていない方が、おばさんには心地よいけどね(注!私の事ね・笑)

 脇キャラについては、ページ数の問題が、最も影響されている部分ではないろうか?丁寧に描かれていたキャラが、どうもさっさと片付けられている感がしないでもない。エル・レビは・・・言い伝えでは、王様の命により処刑、となっている。完結編では、出てこないだろうなぁ。それとオスナ伯爵。エンリケに仕えているが、コレは一体どうしたんだ?って事になってくる。この辺を見せてくれると、また覆王様とエンリケに対する、貴族間等の考えや欲が浮き出しになって面白いと思うのだが、諦めた方が無難だろう。知りたかったら、自分で調べましょうね。

 と言っても、小さなシーンで、ファンを喜ばせてくれるサービスは多々ある。例えばアラベラ。ロドリゲスの傍で日常用語喋っているが、ホッとするシーンだよね。背景も王様一行が、なんとかロドリゲスと会い安堵するって、ホッとするのは当然なんだけど、アラベラって言う存在は大きいと思う。マリアの代わりとして3人娘を、父親への思慕や健気さの具現として出しているのも、読者の王様熱が高まるのに大いに貢献しているし。加えて、女性を火刑に処する事を、ロペスがマリア不在と結びつけて嘆息するのも、小さなシーンだけど巧い!私の独断だけど(いつも)、コレって王様の残虐行為の緩和を印象つける効果もあると思う。マリアという存在を失って、歯止めがきかない王様の、一種の悲しさも伺えるし。また側近も止められない(最初から無理でしたが)と言う、王様の孤独さも見て取れるし。

 そしてもう内戦が、英仏代理戦争の形になっていることも、シッカリ描かれている。この辺、多くの読者は、あんまり印象無いかな?本編P56の上段に、ヒッジョーに簡単に、スペインの悲哀が書かれている。内戦は風土病、と言いつつも、他国の干渉による悲劇は忘れてはならない。ピカソの有名な「ゲルニカ」も、他国の空襲である事を御存知の方々もいるだろう(ドイツがやりました・・・) こう言う事を、小さくではあるがシッカリ書く姿に私は大いに拍手を送りたい。

 で、英仏の当時の2大ヒーロー、黒太子エドワートとデュ・ゲクラン登場である。デュ・ゲクラン、おっさんに描いてくれて有難う(涙目)まさしくおっさんですね。時々、美形青年に描いてある所もあるが、おっさんが私のイメージ。黒太子に比べる、漫画の中でも地味目?でしょうか?騎士振りを発揮する黒太子が、前半颯爽(?)と感じるかもしれないが、デュ・ゲクランの実力は、英の捕虜になっても仏王が身代金を払う、と言う部分にシッカリ現れている。また黒太子が王様との亀裂により、王様援助の姿勢が無くなって来る事には、評判落ちましたかね?

 ちょっと背景説明。このカスティリア介入は、仏にとっては国策です。このエンリケ支援は、仏の国の政策。対して黒太子の王様支援は、本国の了解は得ていても、単純に言うと黒太子の個人的支援の部分が大きい。ついでに、王様一行が黒太子の元を訪れているが、あの・・・海を渡ってブリテン島に行ったんじゃないのよ。今で言うフランスの部分にある英国領にいるんだからね~。で、英仏どちらも、自分たちの戦争を睨んでの援助は当然として・・・。英仏、このこの支援体制の違いが、金銭面で大きく影響してくる。それが、王様とエンリケの差となって出てくるのよね。エンリケ軍として戦った傭兵達が、カスティリアで暴れまわっているとの記述があるが、これが仏の国策なんだよね。当時は英仏は休戦状態。この間、傭兵達がフランスで暴力行為を繰り返し、その解決策として、カスティリアに援軍として派遣した、って事もある。勿論、カスティリアの軍港等を英に渡したくないって事も大きいけれど。勿論、こう言う部分も漫画では、描かれている。

 前編はロペスが引き継いで、後半に突入、になる。さて、どう描かれるのかな?王様の最期は、描かれるのか?ウ~ン、私ははっきり描かれないに、6~7割かな。ロペスが、王の生き様や意思、そして家族を守ると言う役割となり、描かれていくのかなぁ~。

 いつも思うけれど、今回の前編もそう。私のとって、挿絵が多い(ソレも美形が揃った)評伝です。日頃挿絵なし、写真は恐怖物メインの本を読んでいるから、そういう意味では私には清涼剤だね。

  後半も期待しています。


  ~私的~も書きます。と言うか、コッチがメインだろ!ですね。言いたい放題します。
          
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