リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

”生命の川”シンポジウム 

2007-09-20 12:30:29 | アユの流し目/雑記帳
 名古屋大学で行われた応用生態工学会
 予定が決まらないのはいつものことだったので事前申し込みをしなかったが、30年来の友人がポスターの発表者だったので、行くことにした。
 この学会の大会は東京都内をベースにしている中部圏で行うは初めてだが、長良川河口堰の「な」の字もないので、内心は白けていて出かける気持ちになれなかったのだけれども。
 ともかく、この学会の誕生そのものが建設省と生態学者の「協調」を目指したもので、長良川河口堰にたいするある種の「調整」でもあった。ま、この事情については今回は触れない。
 初日は、自宅から通ったが、友人とゆっくり飲みたいと2日目は名古屋に泊まって、ついでに、最終日のエクスカーションで矢作川まで行ってしまった。

 さて、本題はこの学会でのシンポウムである。

 このシンポジウムの10年前に行われた、長良川DAYのシンポジウムと演題とパネラーを文末に引用してある。比較してみると面白い。

 ボクは両方参加したのだが、今回の学会はサンドラさんの話以外には見るものが無かった。共通して参加していたのは川那部さんくらいだけど、たぶん、同じ意見だと思う。
 10年前の長良川DAYで、参加メンバーの調整にあたったNさんによると、サンドラさんに講演依頼をしたのだという。ただそのころ彼女がワールドウオッチ研究所から離れていたので、別の方が来ていた。

 応用生態のシンポの中で、サンドラさんが世界の様々な水問題のなかで、例えば、ナガラガワと言ったと思った。(同時通訳は訳さなかったが)
彼女がその夜、学会の懇親会に参加して、自著の生命の川にサインなどをなさっていたのでナガラガワのことを覚えているのか聞いて見ようと思った。
 
 ボクはサイン本を求めながら、彼女に「以前、長良川河口堰建設反対運動のNGOがあなたを講演に招聘したことがある」と話しかけた。彼女はそのことを覚えていて、1995年のことね」と言った。そして、今ナガラガワはどうなっているのかと聞いた。
 ボクは長良川河口堰が稼働後10年が経過し、影響に関するモニタリング作業も終了した。影響は特に内水面漁業に大きくて、漁師の生活が大きく変わったと伝えた。
 魚類は誰が調べているのかと言うので、たぶん、ボクだけだろうというとすこし驚いたようだった。


 

応用生態工学会
☆ 応用生態学会公開シンポジウム 2007年9月16日 

【応用生態工学会 第11回名古屋大会 公開シンポジウム】 

9月16日(日)13:00~16:00

『生命の水を人と生物はいかに分かちあうか?』

(趣旨)
 地球が水の惑星と呼ばれるように,人間を含む地球上に生を受けたものすべて,水と共生している.水を利用できるという大きな恩恵と洪水・旱魃などの厳しい脅威との共生といってもよい.人間文明の驚異的な発展は,それを支える水の制御を高度に発展させてきたし,技術の恩恵が地球上の多くの人々が享受できるようにとも配慮してきた.しかし一方では,これまで気づいていなかったところで,いくつかのあるいは非常に多くの生命の水を収奪してきたことにやっと気づき始めた.またそれがわれわれ自身の存在の存続とも関わることにもうっすら気づいている.さまざまなところで,こうした状況を正確に把握し,それを克服するすべを探し始めた.
 わが国でも,河川整備に多自然工法を導入したり,自然空間の保全に心を配り,また環境維持流量の確保という視点で水資源利用のあり方も再検討されつつある.その中で,環境目標とそれに至る戦略の重要さを認識,議論を重ねている中で,Sandra Postel氏の著作Rivers for Lifeに遭遇した.わが国と異なる地理的・水文的また社会的状況で,それぞれの背景を踏まえながらも国際的な連携を軸にしながら,あらゆる生命を包含した水の恩恵・脅威を共有する仲間のなかで,どうそれを分かち合うかを人間が工夫する姿を紹介するものとして大きな感銘を受け,山岸・辻本で翻訳して日本に紹介したところである.
 今回,われわれの招聘を快く受諾いただいたSandra Postel氏に基調講演を伺い,またわが国の河川・水資源管理や生態系の視点からの話題提供もいただいて,生命の水(恩恵と脅威)をどのように認識し,分かち合うのか(制御していくのか)の議論への導入とする.「水の惑星の明日」の姿とそれへの道筋が,国際的な視野と地域的特徴に即応した智恵の接点という視点から見えないだろうか.

◇プログラム◇
13:00 開会 辻本哲郎(大会実行委員長)
13:10~14:40 招待講演「River for Life」
 サンドラ ポステル(Global Water Policy Project理事)
14:40~16:30 パネルディスカション
話題提供1 「流域における水需給バランス:本当はどれだけの水が必要か?」
 大森浩二(愛媛大学沿岸環境科学研究センター)
話題提供2 「日本における河川整備・開発の歴史的・地理的特徴
~「命の川」をいかに分かち合うかの実践的議論のために~」
 藤田光一(国土交通省国土技術政策総合研究所)
全体討論

[講演者略歴]
ウィッテンバーグ大学で地質学及び政策科学を学び、デューク大源経済・政策の修士を取得、1983年からワールドウォッチ研究所で国際水資源問題を研究し、1988年から1994年まで同研究所のVice President for Researchを務めた。
1994年に”Global Water Policy Project”を設立し、現在その理事を務めている。2002年11月には、雑誌「Scientific American」の選ぶ初代「科学的なアメリカ人50」”Scientific American 50”に、科学と工学に対する功労者として名を連ねた。



長良川DAYの記録

-公共事業と、水資源・開発援助問題に関する連続会議-

「日本の山河と公共事業」と「世界水資源会議」

日 時:1997年9月13日(土)14日(日)の2日間
     第1日目 「日本の山河と公共事業」
     第2日目 「世界水資源会議」

☆第2日目 9月14日(日)  「世界水資源会議」

 今年6月にニューヨークで開催された国連環境特別総会は、来年の「国連持続可能
な開発委員会」(CSD)の中心テーマを「淡水の確保」に決定した。国連の報告書は、
「現在、世界人口の8%が極度の水不足に置かれている。このまま人口増加等が続け
ば約30年後には世界人口の3分の2が水不足に苦しむことになる」と指摘している
。また、ワールドウォッチ研究所は、「これまでの戦争は石油と黄金をめぐって戦わ
れてきたが、いま国家間に紛争を生む最大の可能性を持っているのは“水”である」
と警告している。今や水問題の解決は最優先で取り組むべき地球規模の課題である。

 それに対して日本のダム建設の関係者らは、「だから、さらなるダム開発が必要だ
。それにダムは地球温暖化を促進しないクリーンなエネルギーを生む。」と主張し、
不必要な公共事業の象徴として批判されている国内のダム事業と、ODA(政府開発援
助)等による途上国へのダム建設を、さらに推進しようとしている。 特に、世界最
大規模の中国三峡ダム建設に続いて、インドシナ半島では、長い間続いたベトナム戦
争やカンボジア内戦等の混乱が終息した現在、メコン河流域の数カ国で大規模なダム
群の建設計画が進んでおり、日本のダム建設の関係者らは、この大プロジェクトの主
導権を握ろうとしている。

 一方、過去50年間、世界のダム開発の主導的立場にあった「世界銀行」は近年、
ダム建設による環境への影響や、立ち退き住民の人権問題について調査する取り組み
を始めており、セラゲルディン副総裁は、「これから半世紀、世界銀行は、ダムには
あまり積極的に融資しないだろう。ほとんどの国において、水問題の原因となるのは
、水不足ではなく、むしろ非効率で持続不可能な水資源利用のしかたである。」と言
っている。ワールドウォッチ研究所も、『地球白書1996年』の中で、「世界の水
の総使用量の3分の2を占めているのは農業用水で、わずかな割合の削減でも、相当
量の水が都市や環境や他の農民のために使えるようになる」としている。

 水問題の真の解決策は何なのか? 私達は世界の専門家を招聘し、水問題の本質を
見極め、解決策を模索し、それを日本の公共事業と援助政策に反映させたいと考えて
いる。

    9:30開場 10:00開演  17:30 終了

                               (敬称略)
総合司会:リチャード・フォレスト 全米野生生物連盟 アジア代表

来賓挨拶:川那部浩哉 日本生態学会会長/琵琶湖博物館館長

第1部 基調講演 "世界の水資源問題" (各40分 質疑応答各10分)

「世界銀行と大型ダム論争-水事業に適用される環境の持続可能性とは何か
 -近年の教訓」      ロバート・グッドランド 世界銀行環境特別顧問

「世界の水資源問題」
     ジャネット・アブラモヴィッツ ワールドウォッチ研究所上級研究員

昼食 12:00~13:00

第2部 "日本の援助とダム開発"
   13:00から (各30分 質疑応答各10分)

「先進国の援助とダム開発」
 パトリック・マッカリー 米国 インターナショナル・リバーズネットワーク(IRN)
                『沈黙の川』著者

「メコン河開発と流域市民」
 ウィトゥーン・パームポンサチャルン、タイ 環境回復地域連合(TERRA)代表

「日本の公共事業とODA」   神田浩史 地域自立発展研究所(IACOD)研究員

休憩 15:15~15:30

第3部 パネル・ディスカッション "21世紀-水問題の真の解決をめざして"
   15:30~17:00

パネリスト:秋葉忠利 公共事業チェックを実現する議員の会事務局長
          /衆議院議員
      ロバート・グッドランド
      ジャネット・アブラモヴィッツ
      ウィトゥーン・パームポンサチャルン
      パトリック・マッカリー
      神田浩史

閉会の言葉:C.W.ニコル ナチュラリスト 作家(予定)
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