新潟久紀ブログ版retrospective

財政課21「最も残業時間が多かった県職員への慰めは」編

●最も残業時間が多かった県職員への慰めは

 夏の大水害と秋の大震災。実はその後も数年ぶりの豪雪災害が加わって、平成16年度は新潟県にとって「三重苦」のような異例の年になった。私のような部局予算査定担当ビギナーとしては本当におなか一杯でもう勘弁してくださいという感じだった。それぞれの災害に対応する予算査定の内容を記すわけにはいかないのだが、単に大型の災害だから大変だったというだけでは無かったのだ。
 特に地震は、数十年ぶりであり、直近の対応事例が無いばかりか、それまでの間に財政関係の制度が変わってきていて、財政担当OBであったところの部長達ですら初耳のような国の補助制度なども次々と現れていて、激烈な災害への対応とはいえ、後年度の県財政負担を考えて適切な内容としてどの程度まで補助事業を認めるべきかどうか、一方では緊急事態で即座の意思決定が求められる中で、幹部から的確に判断してもらうための資料調整には本当に苦労した。
 さらに、中越地震については、ちょうど知事が交代するタイミングで発生したこともあり、調整の難易度が高まった。予算査定というのは、法令などに基づいて必然的に決まっていく事案はむしろ少ない方で、要するに「絶対解」の無い問題へどう応えるかという事案が多く、正に為政者の「判断」次第という部分が要となる。
 在任期間の長い首長に対してであれば、これまでの判断の経緯も蓄積されていて、考え方や方向性をある程度見据えて調整に臨むことができる。しかし、全くの新任でしかもそれまでに実務的に接点の少なかった人が知事となり、その着任早々に震災対応のような極めて政治的にも大きな判断を求められるような予算査定ともなれば、大いに苦労の多い調整となったのだ。新知事が着任早々、震災対応で県の幹部の対応を叱責していた一場面を報道でご覧になったことがあれば、組織の新旧体制の切り替えというのが、緊急時においては特に、容易ならざることに頷いて頂けるのではないだろうか。
 それでも財政担当の良いところは、どんな困難であっても予算を決めなくてはならないその日は必ず到来するということだ。つまり、果てしなく続きそうな議論や上司からの指摘への対応があっても時間切れがやってくる。上長からすればたとえ不満足な状況でも限られた時間の中で得られる材料である時点では判断を決しなければならない。もちろん、それを当て込んでだらだらと時間稼ぎするかのようなことは周囲も自分自身も許さないのだが、逆に言えば限られた時間の中でどこまで良い判断のための準備ができるか。正にこれが財政か査定担当の冥利であり醍醐味であると知る一年であった。
 大玉送り案件に、水害、震災、豪雪…。息つく暇もなく毎晩午前様続きの私は、どうやらこの年、結果して県庁で最も残業時間の多い職員になってしまったようだ。そうなると、個人名は伏せられるのだが、決算関係資料にち超過勤務時間数が掲載されることになる。県の決算を審査する議会の委員会において、その資料を指し示してある委員(議員)が執行部に問い質した。「こんな残業時間数は現実的にあり得ない。不適正支出問題を批判する世論が薄らいできたと見るや、またもカラ残業による超過勤務手当で裏金を作っているのではないか」などと、答弁者の真後ろで控えている私にとって誠に心外なご指摘をされる委員様がいらっしゃったのだ。ただ、その後に別の委員さんが質疑の中でまたこのことに触れた。「大変な災害が続いた異常な年であったので非現実的とは思わない。残業をそこまで頑張らなくてはならなかったのだろう。すぐに露見する不適正処理ではないかとの指摘は論外だと思う。私はむしろ、今この職員さんが身体を壊さずに過ごされているのか、健康が心配だ」と思いやり溢れるお言葉だ。私の周囲に座していた事情を知る財政課関係者は私を見て「いまだ元気に生きているよなあ」などと目配せしてニヤリとしてきたが、私は労多かった一年が少しは報われたなあ…と心温まる思いがしたものだ。

(「財政課21「最も残業時間が多かった県職員への慰めは」編」終わり。「財政課22「議会答弁で鳴り物入りの財政運営計画(その1)」編」に続きます。)
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