その演歌を分析してみましょう
大きく分けて三味線とか和楽器が入ったものがあります
対してエレキギターで二拍子や四拍子の音楽もあります
ラテンのリズムのものもあります
何度も書いてきたように「演歌以外のジャンルにならない歌謡曲」が演歌なのですから様々な音楽になっても良いのです
これらはそのジャンルを始めた人の出自にちなんでいるのです
まず春日八郎
この人の音楽は演歌というより(演歌以外の)歌謡曲でしょう。和楽器の入った音楽ではありませんよね
そういう意味では「演歌風」の「物語」を歌うジャンルなのでしょう
例えば代表曲のお富さんはもともと岡晴夫が歌う予定だった曲です
憧れのハワイ航路は演歌でしょうか?
その流れの中でできたお富さんは本来演歌なのではないのです
では何でしょう?
手拍子が入るから宴会芸ということもできます。つまり宴歌なのかもしれませんね
逆説的ですがそれ以外のジャンルに当てはまらないという意味でそれは確かに演歌なのです
次に三橋美智也です
もともとが民謡歌手であったことから民謡的な歌唱法、音楽性を演歌の世界に持ち込みます
演歌の代表的な音階であるヨナ抜きは本来民謡の音階です
そしてしゃくるという歌唱法が民謡にはあります
これらは明治時代には存在していたのですがそもそもアメリカの音楽を取り入れて始まった壮士演歌には当然ありませんでした。
物語演歌になって日本人のオリジナルを作る段階で歌の中に取り入れられてきているのですが、古来の声明をルーツにもつ民謡の音階が使われていきます
それがはっきりするのは民謡をバックにした歌手が出てきてからです
次に村田英雄
浪曲出身であったことから物語演歌ということになります
特に男歌を得意とした物語を歌ってきました
浪曲の特徴がうなりです。これを抑えるとこぶしということになります
そして同じく浪曲出身の三波春夫
彼は劇場型歌謡浪曲というジャンルになりますので浪曲のうなりというものを取り入れて独自の世界を創り上げます
彼はまたそれ以外のルパン三世の音楽といったジャンルにも挑戦するのですが、こぶしの利いた三波節でこなしているのが特徴的でしょう
また和楽器を上手く使った人が三浦布美子で江戸時代からの邦楽の雰囲気を持ち込みました
こういう人たちが作り上げたのが演歌であることから、邦楽的な要素がある音楽も民謡的な音楽、浪曲風の歌い方、ラテンのリズムの音楽もその中に縫合されてくるのです
本来であれば邦楽、民謡、ラテンというジャンルに入るのでしょうがそういう曲を複合的に同じ歌手が歌っていることから歌謡曲=演歌というジャンルにならざるを得ないのでしょう
今ではムード歌謡のフランク永井も演歌のジャンルに含まれているのですから、そういう意味では先に述べたように 歌謡曲の中で演歌以外のジャンルを排除して残ったものが演歌 という定義しかないように思います。
けっして演歌は日本の心なのではないのです
そして他からパクってきた言葉でたかだか半世紀ほどの歴史を持たないジャンルなのです
もし演歌が明治時代から綿々と続く日本の心だというのであえれば
アメリカの民謡や軍歌がそのルーツになってしまうのですよ