
朝から強風。ノブリンは前日の夜から天気予報を見て風と潮流を確認し、ナーバスになり眠れなかったようだ。ホテルの部屋から見える海は白波がたっている。スイム中止?の噂もちらちら流れ出している。
ノブリンは、もう絶対この海じゃ、リタイヤと諦めちょっと泳いですぐ引き返す、とりあえずスイムスタートはしょうと渋々ウェットスーツに着替えはじめた。
天気予報が急に大会会場に入れ替わり、スイム中止の放送が入る。ディアスロンで8時スタートとなる。
ノブリンは喜び勇んでウェットを脱ぎ、「kanaちゃん、ゆっくりしょう♪」とコーヒーを淹れだす。私は、「泳がないんなら、お化粧しちゃおう♪わ~いっ!トライアスロンのレースでお化粧なんてはじめて!」
ノブリンは第1ランで、バイクグローブ、サングラスをして走ると言いバイクラックに置いてあったグローブを取りに行く。で、グローブを片方落として帰ってくる。それからまたグローブを探しに行ったきりなかなか帰ってこない。
放送で、7時30分までにスイムチェックのゲートをくぐるように言っている。しょうがない。ひとりでスイムチェックし、バイクグローブ、サングラスを持ってきたり、ディアスロンに備える。
ホテルの部屋から出ると人がごちゃごちゃで、すごいことにになっている。ディアスロンのスタート位置の情報が飛び交い、混乱している。トラックに預けたトラバックを出し探している。ランシューズを取りに戻るためにタクシーに長蛇の列。
ホテルの部屋に戻るとノブリンがいた。一緒にスタート位置に並ぶ。係りのおじさんに誘導され、かなり前の方だった。若い男の子がノブリンを見つけ「602番、さっきはありがとうございました」と声をかけてきていた。みんな混乱している中、ノブリンがなにかしら助言したようだ。
スタートの合図。スイムスタートのような怖さはない。マラソン大会のようだ。意外と混雑しないで走り出せた。少しだけノブリンと一緒に走っていたけど、すぐにノブリンは見えなくなった。
前からのスタートだったので、色々な人たちに抜かれていく。城本さん、のりちゃん、ムラキヨ、トミィーさん夫婦、Y沢さん。ムラキヨの走りが格好良かった。陸上部のきれいな走り。
5:30ぐらいで、私としては速いと思っていたけど、いっぱい抜かれた。ノブリン情報で5kmと聞いていたのに、もっとある?6km?6km以上だ。何キロ走るのかよくわからなかった。
ホテルに戻り、トラバックを取りメットをかぶりバイクシューズを履いてまたトラバックを預ける。バイクラックにはまだたくさんではないけどある。ノブリンのバイクはない。スイムがないとノブリンは速い。
バイクスタート。8時43分ぐらい。第1ランは6.7kmぐらいあったようだ。
いつもならバイクスタートから、よ~しっ!とイケイケなんだけど風が怖い。なにこれ?スピードがでない。横風で、バイクが倒されそうに何度もなる。ディープリームはやばい?怖さももちろんあったけど、困ったのは片手になれない。何も食べられない?おにぎりを出してラップから食べるのってできない。マドレーヌやら美味しいのをたくさん用意していたのに。食べられないということでも凹んでしまった。チューチューに入れたハチミツパワージェル、これは食べることができた。
DHポジションもとれない。力が入らない。集団にどんどん抜かれていく。ブービーちゃんにも抜かれた。でもまだ先は長い。マイペースだ。
えっ?でもマイペースすぎる?このままいけば脚に負担はかからない。もしかしたらランでいけるかも?と都合のいいことを考えていた。
エイドで、右手側でバナナを持っているおじさんがいた。やった。これはとれる。右手側にわざわざいてくださったボランティアの方、さすがだ。ありがとうございました。
バナナを食べて気持ちが切り替わった。不思議と強風にも慣れてきた。池間大橋にはびびっていたけど、次は東平安名崎だ。あそこは人がいっぱいで道が狭く抜きにくい。混んじゃって危ない。あそこでへたな人の後ろにはつきたくない。あれ?スピードがでる。風は相変わらず強いけど、ディープイームでも大丈夫、自転車って簡単には倒れないもんなんだ。前方にいる人たちを抜いていく。ノブリンを見つけなくっちゃ。私がノブリンをバイクで追うなんて。スイムがないとノブリンは速い。
東平安名崎だ。あれ?人がいない?いつもはここごちゃごちゃしていて危ないのに。やっぱり今回は、遅いんだ。やばい。
やっとノブリンを見つけた。東平安名崎を回って過ぎたところ。だいたい70km地点ぐらい。やっぱりこの強風にやられていた。少しお話しをして先に行った。
七又海岸までのアップダウンの上りで面白い人がいた。「すみません!ぼく、蛇行しま~す!」と蛇行していた。その手があったか。
ブービーちゃんにも追い付いた。ブービーちゃんの後ろにぴったりついている男性がいる。ドラフィテングが多い。「女のケツについているなんてサイテー!」とそこから一気にスピードをあげる。
あれほど強風にびびっていたのがウソのように、イケイケ。スピードメーターは57km地点で止まっていて調子が悪いけど、気にしないで走っていた。
いつものことながらドラフィテングが苦手で、きちんと抜いていくのだけどすぐに吸収されてしまう。これできっと疲れちゃうんだろうなと思いつつ、我慢ができず抜いてしまう。で、吸収され、周りの顔ぶれは変わらない。何度かやっちゃっているうちに大集団になってきちゃって、これはもう抜けない。離れて後ろにつく。「大集団になっちゃいましたね」と後ろの男性としばらく話す。でも「やばい、これって話せるスピード?」話していた男性があげてくれ、前に出る。「動いてくれたので、いっちゃってください。私もついていきます」と前に出て、結局私が前に出てしまった。一気に大集団を離し、2度目の池間大橋だ。
池間島を一周してのいつものトイレで休憩。あとから聞いたけどノブリンは、私がトイレに入るのを目撃していたようだ。ここでおにぎり、パンを食べた。ゆっくりしていたら「間に合いますよね?」と男性が話しかけてきた。制限時間をそれまで意識していなかった。
通常は7時スイムスタートで、8時10分ぐらいからバイクに乗ってランスタートは、2時ぐらいだから20:30分には間に合う。13時間30分の制限時間。でも今回は違う。8時第1ランスタート。バイクに乗ったのが8時43分。バイクの関門は15:10分。15時前にはバイクフィニッシュできると考えていたんだけど。今回の制限時間は12時間30分???
あと30kmぐらい。追い風だし、間に合うかな。
バイクフィニッシュ。やっぱり15時前。着替えのテントの前にホテルのバイクラックのところに置き忘れたランシューズがたくさん並べてあった。
テントの中は、いっぱい。女の子たちがキャーキャー騒いでいる。「なにこれ?なにこれ?」「ラン、無理。間に合わない!」興奮状態。私もなんだかわけがわからず、「制限時間3時10分?本当に?主人がまだ!間に合わない!」と叫んでいた。テントの中に外のアナウンスが聴こえてくる。「残り10分となりました・・・・9分・・・8分・・・」準備が終わっても、ノブリンが気になってしばらく待ってみたけど、こない。しょうがないのでランスタート。
しばらくは、ノブリンの心配をしていた。ノブリンは絶対間に合わないと思っていた。バイクフィニッシュして、ランに行かせてくれと怒っているんじゃないかとか、ごちゃごちゃ考えていたけど、とりあえず私ひとりでも完走しないとと切り替えた。
例年より涼しい。というか寒い。たぶん気候的には走りやすいんだろう。あの暑さに比べたらこの寒さの方がいいか。6:40ぐらい。大丈夫、走れる。
あれ?後ろからノブリンがきた。なんだ。大丈夫だったんだ。バイクの制限時間2分30秒前にフィニッシュだって。ランに入っちゃえばノブリンは強い。すぐに見えなくなった。
折り返してくる人たちに会える。松丸さん、益田さん、西内さん、酒井さん。ムラキヨ、やっぱり速い。トミィーさん夫婦も速い。田中さん、のりちゃん、Y沢さんも元気だ。K下さん、城本さん。ノブリンにも会えた。ひげママさん。

折り返しのハーフで2時間20分ぐらい。落ちなければ大丈夫だろうけど無理かなぁ。ひげママさんに追い付いた。ちょっとお話ししてから先に行く。
30km過ぎてやっぱり落ちてきた。上りがきつくなってくる。腰が痛い。歩きたい。歩いちゃえ。と歩いていたら、後ろから肩を叩かれた。ひげママさんだ。「一緒に行こう!私もひっぱってもらったの」と二人の女子についていたひげママさんに拾われた。苦しいときだったから、本当に感動した。泣きそうになった。ありがとうございました。
二人の女子は友だち同士ではなく走っていて知り合ったようだ。ひとりは初めての宮古島。もう1人の方は昨年は、スイムリタイヤだったようだ。
ふたりの女子は淡々といいペースで走っている。35km地点の手前ぐらいだろうか、ひげママさんに声をかけてもらっのは。ひとりのときは、腰が痛かったのに、彼女たちと一緒だと我慢できちゃうのが不思議。とりあえず彼女たちについていかなくっちゃ。ここでおちたらだめだ。
ふたりの女子の完走したいという強い想いが伝わってくる。苦しいけど、いけない慣れで完走はできるという想いがあった。
残り5km少しのあのちょっとした上りのところ。残り5km、4kmとそれからが長く感じた。街に入るとひげママさんが元気になって、ぴょんぴょん飛び跳ねて声援に応えている。すごい。
今まで引っ張ってきてくれた女子が落ちてきている。励ましながら一緒に行く。
競技場に入ると、ひげママさんが待っていてくれた。今まで引っ張ってくれた女子ふたりに先に行ってもらう。ゴールの順番を待っていたらその間にたくさん入られちゃった。写真をちゃんと欲しいんだもの。ひげママさんは私の後ろから、お孫さんとゴール。ひげママさん、色々ありがとうございました。ゴール後に、ひげママさん、パパさんにはご挨拶でき、ひとりの女子にもお礼を言えたけどもうひとりの方にはお会いできなかった。本当にありがとうございました。

ノブリンにもゴールで会えた。バイクフィニッシュ残り30kmぐらいから、焦りだして「間に合わないですよ!」と抜きながら声をかけていき、パックをつくりながらぐんぐんスピードをあげ、あんなに踏んだことなかったと、ノブリンも興奮状態。ランはやっぱり脚にきていて失速したようだ。
私は8回目。ノブリンは7回目。8年間、7年間連続出場連続完走。宮古島は65歳までと年齢制限があるので、ノブリンは今回でお終い。私もノブリンのいない宮古島は考えられない。たぶん、もう宮古島にはいかないだろう。最後の宮古島だ。
8年間の色々な想いがある。
ディアスロン、厳しかったけど終わってみればいい経験だ。つらいけど楽しい。トライアスロンって面白い。宮古島っていい。
一緒にレースに参加した方々、大会関係者、ボランティアの方々、一緒に練習してくださった仲間、遠くから応援して下さった方々ありがとうございました。
KANA 12:23:16 7:03:51 5:19:25
ノブリン 12:06:02 7:13:45 4:52:17
1470名スタート 完走者1184名 完走率80.5%