
白くもやがかかった濃い青紫色、割ると思いがけず黄緑色が覗いた。
この青と黄緑からはどんな色が生まれるのだろうと思うと好奇心がくすぐられる。
四つ割りにしたそれから香るのは、青い桃のような控えめな甘い香り。
かじってみると果汁は滴るほどではなく、酸味もまろやか。
やはり桃を思わせる。
白砂糖は20㌫。
果実にして1.4㌔。
果実に手で砂糖を塗す。果汁の多い果実なら浸透圧により浸る程の果汁が出てくるがそうではない。
30分ほどして火にかける。弱火。
果汁が少ないのでいつもより慎重に、側を離れない。
しっかりとした実がわずかに溶けだす頃、透明だった液が僅かに色づきはじめる。
これは何色か。
琥珀色。
果実の色が流れ出し液はとろみをまとい琥珀になった。
しかしそんな琥珀の夢は儚かった。
次の瞬間には秋の木葉のようなセピア色に。
そう、わずかに果皮の色が冴えてきている。
琥珀と青みが入り混じった結果だ。
このセピア色も流れてゆく。
金木犀のシロップのようだった。
そして夕日を浴びる蜂蜜のようになり、煉瓦色になり赤銅のようになった。
この次は…と先思い、胸が高鳴る。
果肉はほとんど溶けてしまい、柔らかな果皮もしなやかに鍋の中で身を任せている。
あの濃い青紫は鍋の中で、今赤褐色になっていた。
それがもたらした色の変化。
私は味を見る。
甘酸っぱさの後に少しの渋味を感じた。
ああ、早く、色を煮ださなねばならないのだ。
渋味に急かされるように、少しだけ火を強めた。
ゆらぐ果皮はじんわりと周りの変化を見せてくれた。
秋の夕日を浴びた煉瓦のようだった先、
今はその色が折り畳まれ、深みを増し、今は鮮やかにすら感じられる。
そう、秋の夕日そのものになったのだ。
私は秋の夕日に心を奪われ、ため息さえついた。
この夕日をこのまま見つめていたい。
そう思い、ようやく私は火を止めたのだった。
ガラス瓶に閉じ込めた秋の夕日。
まだ夏の残像を残す今朝、やわらかな甘酸っぱさと共に秋への期待を感じさせてくれた。

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私にとって、ジャムつくりはやはり特別な仕事のようです。
これだけ感性の高まる出来事って、あまりないように思うんです。
特に今回のプルーンのジャムは楽しかった。
今までで一番。
やっぱり例年のように、今年の秋もジャムを作ろうと思っています。
いちじく、紅玉、栗、柿。
そう思ってガラス瓶を20も注文した私でした。