こういう五月のお天気のよい日は、競輪のバイトを思い出すのよね、と言われても
ケロっと忘れていて思い出せなかった。
ほら、なんかバイト仲間が休んじゃって困ってるから来ないって誘ってくれたじゃん!
近江神宮から、歩いてったのよ。
すごく晴れててさ。
あぁ!
高松宮杯!
そうだった。
競輪場で一年に一度のバイトがあって「高松宮記念杯」
「戦争未亡人」の「白菊会」が営んでいた「白菊食堂」に、いったいどんな経緯で学生アルバイトで入ったのか。
晴れて爽やかな五月晴れの記憶しかないのに、今Wikipediaで調べてみたら、5月下旬~6月上旬の梅雨時で「雨の宮杯」と別称があるなんて説明があって、
んー、
連休中じゃないとバイトできない筈で、
いやいやしかし、怠け者の学生だったからなんとも言えない、と思ったり。
だけど、
中学、高校の湿っぽい狭く閉ざされた世界と違う、
ちょっと浮き上がったようなあっけらかんとした世界に抜けた感覚、そのまんまのアルバイトだった。
やっぱり5月の連休にぴったり似合うなぁ。
バイトに誘ったこと、忘れていたよ。近ごろは、なんでもケロケロ忘れてしまうよ。
沢山、お店が並んでいたけど、白菊食堂だけが唯一、女性だけの経営でね。
戦争未亡人のお店だったのは、高松宮杯と関係あるのかなぁ。
異世界だったよね。
そうそう。
見るのも、聞くのも初めてのことばっかりでさ、鶏肉の串を作ったよ。
(つづく)