第26話 「ララの機転」
「まずはきっかけ作りにランチャーで狙う!」
デロリデは離れることもなく2機共同じ編隊を取っている。
「僚機は離れません、てか?良いじゃん…!」
ベラーナは思い出の鏡の一件から立ち直っていた。
いつまでも引きずっていられない。
アル・レレン艦長にはそれが分かっていたからか、今回ベラーナに重要な役割を与えていた。
攻撃が外れれば作戦は台無しになってしまう。
コーヒーを呑気に飲んでいる麻生に対して、アル・レレン艦長はまっすぐ前を見ている。
「行くぞ!」
ランチャーから発射されると、後ろのデロリデから反撃があった。
その3秒後に手前のデロリデから攻撃がある。
すかさずランチャーをもう1発食らわした。
ランチャーは2発だけ連射できるように、サイとセイナによって改造されている。
連射は想定していなかったかのように、シークル艦の射程内に入った。
アル・レレン艦長が急いで指令を出す。
「シークルレーザー砲発射!」
ベラーナの撃つランチャーで、体勢を崩されたデロリデに向かって放たれた。
2機のデロリデがシークル艦に気づかないまま、海上に落ちて行くのが見えた。
「おい!デロリデ1機とジャイワナーゾが来る!」
後続機が来ることは予想していたアル・レレン艦長だったが、軌道が違う。
デロリデはベラーナ機が落とせるかもしれない、ジャイワナーゾはどうするか、アル・レレン艦長に一瞬の迷いがあった。
麻生はコーヒーを置いて言った。
「アストラーダが乗っているかもしれん」
今シークル艦が目に入ったらジャイワナーゾは早い。
デロリデに向かってベラーナが交戦していた。
「ジャイワナーゾ!」
ベラーナが動きを察して叫ぶ。
シークル艦の前に立ちはだかることはできない守里は指示を待っている。
「こっち向けバカ兄貴!」
シークル艦がミサイルで迎撃しようとした時だった。
ゲンナ号からララ機が出てジャイワナーゾに立ちはだかる。
「ララじゃないか。操縦できるとは思わなかったよ…」
ジャイワナーゾが一瞬だったが動きが止まった。
デロリデを落としたベラーナがランチャーを発射する。
ジャイワナーゾの手には守里と同じ刀が見えた。
刀の部分は光っていない。
「この野郎!」
ベラーナが撃つと刀の部分に当たって後退していく。
何も言わず勢いよく飛び立っていくジャイワナーゾ。
「あの野郎!剣と同じもん持ってやがった!…助かったぜララ!」
誰もが同じ思いだった。
その思いはアル・レレン艦長も同じだった。
「ララさんか…機転を利かせてくれてありがとう」
珍しくアル・レレン艦長が微笑むと、ララは照れたように言った。
「…だって…私だって!しかしあのバカ兄貴!」
その時光を放っていた守里の刀だったがそっと閉まった。
いざとなれば、と思ったが流石の行動に守里も微笑む。
ゲンナ号のカンナも含め、シークル艦のクルー達もホッとした瞬間だった。