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南房総館山・なぎさの自然詩

南房総館山の自然や海での出来事を紹介しています。

初夏のシロチドリ

2024-06-04 19:43:55 | シロチドリ

冷たい風が吹く海岸は初夏とは思えないくらいの気温の低さと曇り空が寒々しい雰囲気です。
そんな中、海岸を歩いていると遠くでシロチドリが争っているのが見えました
それに加えてカンカンと言う金属音の様な間隔をあけた連続した音がしています。
何かと思っていたら砂浜でゴルフの打ちっ放しをしている音でした
シロチドリ達にゴルフボールが当たらないかと心配になりながら、更に歩くと、次に見えてきたのはテレビの撮影隊。
総勢15名程と犬3匹、テレビで見かけたことのある女性タレントさんがSUPに乗っています。
撮影が終わると、その犬の内大型犬1匹がリード無しで歩いていました。
シロチドリの繁殖するこの時期、その姿を見た時には出来れば距離を置いて見守る事が理想的な状況です。
特に犬はシロチドリを見つけると追いかけしまい、小さなヒナがいた場合にはその場で動かなくなる習性の為に犬に捕まれば、命落とす危険が高くなってしまうと思います。
犬の飼い主の方のモラルにも繋がる事と思いますが、そもそもこの海岸で絶滅危惧種のシロチドリが繁殖している事がほとんど知られていないのが事実なのです。
環境省と千葉県で絶滅危惧種となっているシロチドリですが、その行政対応は全くされていない様な状態です。
千葉県や南房総市でシロチドリの繁殖地である事を周知して、繁殖時期には海岸へ訪れる人達にルールを設ける事も必要ではないかと思うのです。
更に人間主体の法律ではない、野生動物の為の法律も必要ではないかとも思います。
南房総のこの海岸では、現在シロチドリの巣が2カ所あり、卵を合計6個確認しています。
その状況の観察を定期的に行っています。
この日もそれぞれの巣の状況を観察していましたが、シロチドリのメスの異常とも思える行動を見ていました。
それは鳴きながら上空を飛び回り、地上に降りると派手な動きの偽傷行為をするのです。
そのメスを観察しながら周囲を見渡していると、なんとヒナが2羽歩いているのが見えました。
今まで観察してきた巣とは別の巣があったのかもしれず、まさかの出来事に驚きました。


そしてヒナ達は側にいたオスのお腹の下に
潜り込み隠れました。
ヒナを抱えているオスは非常に興奮した
様子で、鳴いているのかノドを膨らませ、
首を伸ばして警戒していました。


その翌日は晴れて暖かく、週末を海岸で
過ごす人達で賑わっていました。
ヒナ達も姿をみせて、暖かな日射しの下で
活発に動いていました。
シロチドリは人が多い中でも、
その状況に適応した行動を取っている
様子です。
そして昨日海岸へ行くとそのシロチドリ親子
に異変がありました。
前日は暴風雨が酷く、海岸のような何も
隠れる場所のない中でヒナ達がどのよう
に過ごしているのか心配だったのです。


海浜植物の群落の中にヒナ1羽とオス1羽
がいるのを見つけました
しかしもう1羽のヒナとメスがいません。
待っていたらオス達親子と合流するかも
しれないと思い、しばらく双眼鏡を覗き
観察していました。
いくら待ってもメスとヒナは現れず、
その2羽は居なくなったものと思われます。
恐らく他の動物に捕食されてしまった
可能性が高く、今まで観察してきた経験
から、多分カラスが原因だと想像出来ます。
ヒナを守るメスの母性本能とは、私の想像
を超えるものでした。
五日前に見たメスの異常とも思える擬傷
行為は、犬と人、他のシロチドリという
外敵が重なり、パニック状態になっていた
のではないかと思うのです。
もしかしたらシロチドリにも個体差があり、
激しい性格や臆病な性格など様々なのかも
しれません。
それに母性本能が強すぎると、捨て身の行動
に出て自ら命を落としてしまうのかもしれません。
残されたヒナをオスだけで無事に育てていけるのか、
この先どうなるのか見続けていこうと思います。
生息数を減らし続けているシロチドリを、
今までの様に何もせずに居ると本当に絶滅
してしまいそうです。
そんなシロチドリ達の為に出来る事は
ないかと、こうしてブログで発信したり、
現地でも少しですが活動しています。
その中で色々な変化が少しずつあり、
明るい希望が見えるようで嬉しく思います。
まだまだ前途多難かもしれませんが、
小さなシロチドリがこの海岸で子育てする
光景がいつまでも続くように願っています。

シロチドリとネジガイ

2024-04-12 12:38:07 | シロチドリ
春の大潮は午前中に干潮を向かえ、1年の中でも干満の差が大きく感じます。
昨日(2024年4月11日)は中潮でしたが、潮の引いた磯は広々としていました。
その磯では漁師さんや海女さんがヒジキ刈りをしている姿も見られ、ヒジキでいっぱいになった籠を背負い浜を往復しています。
ほぼ水分の様なヒジキ等の海藻はとても重いので、大変な重労働のことと思います。
この後ヒジキは砂浜に広げられたビニールシートに集められ、クレーン車で引き上げてトラックの荷台へ載せられ運ばれて行きます。

潮の引いた磯には夏羽に変わりつつあるメダイチドリが4羽いました。


場所を移動してシロチドリのいる海岸へ行くと、最初に目に入ってきたのはネジガイ。
約2.5cmとかなり大き目で薄茶色に白い縦線が見えています。
一巻一巻にある細い縦線(糸状縦肋)は上下で連接し、殻口の近くにある一本の白い横線がこの貝の特徴だと原色貝類図鑑にありました。
更に一巻一巻の間に濃いめ茶色い線も見られます。


波打ち際を歩くと浜の上ではシロチドリが休憩中。
オスが3羽、メスが3羽が集まり、皆ウトウトしています。


少し離れた場所ではオスが3羽で採餌中。
3羽で同時に脚を素早く動かし、まるでダンサーのように見えます。
その内の1羽がハマダンゴムシを食べるところを観察出来ました。

そして一番気がかりだったのはこの海岸の東寄りに見つけたシロチドリの卵の様子です。
4/2に3個の卵と抱卵を確認していた巣はどうなのでしょうか?
夫が確認しに行くと、残念ながら卵は無くなっていたそうです。
春になるとこの海岸へやってくるシロチドリは、他の鳥達にとって捕食対象なのです。
海岸にある砂止め杭の上ではカラスが卵やヒナを狙っています。
更にトビは砂浜の上をグルグルと旋回して探しています。
絶滅危惧種のシロチドリの卵やヒナは、数が減ってきているにも関わらず、外敵の方の数が多いので、なかなか繁殖に成功しないのです。
しかしシロチドリの親鳥は卵やヒナが居なくなると、直ぐにまた繁殖の準備を始めます。
その姿を見ると野生の本能の凄さを感じます。
人間のように悲しむことは無いように見え、常に前を向いて生きているシロチドリです。


砂丘に咲くハマニガナの花。
小さな生き物達が暮らしやすい海岸になりますように。









絶滅危惧種のシロチドリ

2024-04-03 17:10:51 | シロチドリ

3月30日、31日、4月1日の3日間南西風が吹き続き、ようやく風が止んで穏やかな天候になりました。

南房総でも南西風の影響を特に強く受けるのは太平洋側の平砂浦から白浜にかけての海岸です。

ここ最近は強風が続けて吹く日が多いので、WINDYというサイトを見て風予報の参考にしているのですが、南西風が強い時は東京湾奥の都心部でも強風が吹いている事に気がつきました。

都心部での強風はビル風となって、四方から吹き、竜巻のようになったりしないのかと想像しました。
風という空気の塊は様々なものを吹き飛ばしてしまうので、途轍もない脅威に感じています。
小さなシロチドリ達にとっても強風は、ひたすら耐えて過ぎ去るのをジッと待っているのだと思います。
ようやく穏やかになった海岸へ行くと、早速シロチドリの姿を見ることが出来ました。
 
ここでは6羽のシロチドリが餌を探したり、海藻の側で休んでいましたが、時々オス同士の争いが起こっていました。
 
海が荒れた後の砂浜にはたくさんの海藻が打ち上げられていました。
こういった海藻にはシロチドリが餌とする生き物がたくさん集まって来ています。
 
そしてウミスズメも多数打ち上げられていました。
私が確認したのは6匹。
荒れ続ける海の中で逃げ場もなく、耐えられなくなってしまったのかもしれません。
 
打ち上げられた海藻の縁に見つけたのはネコザメの卵です。
一見すると海藻と見分けがつきません。
卵といってもすでに孵化した後のもので、打ち上げられてから時間が経っていたのかカラカラに乾いていました。
 
そして先程のシロチドリの群れから離れた場所にも、番と思われる2羽がいました。
この2羽のシロチドリから随分離れた場所で、夫が偶然卵を見つけたのです。
 
その場所を教えてもらって見てみると、小さな凹みの中にウズラ卵と同じくらいの大きさの卵が3つ置かれていました。
近くに親鳥の姿が見えず離れた場所でしばらく待っていたら、いつの間にか親鳥が戻ってきていました。
シロチドリの卵は約3週間で孵化するそうなので、4月2日に見つけた卵は4月23日頃にヒナの姿が見られるかもしれません。
孵化したヒナは約3週間位で飛べるまでに成長するそうなので、これから先が楽しみです。
しかし人間的感覚だと樹上の巣では無く砂浜に直に卵を産んでいたので、間違って踏んでしまわないかと心配です。
これで無事にヒナが孵化出来るのか、とても不安に思いました。
この海岸は観光地と言う事もあって、土日ともなると人の出入りが激しく、更にヒナ達が動き回る時期はちょうどゴールデンウィークと重なります。
海岸では犬を連れた方もいるので、犬に捕まってしまったり、まだ飛べないヒナ達が人に踏み潰されたりしないかと色々想像してしまいます。
シロチドリは千葉県では絶滅危惧種としているのですが、特に対応をしているようではありません。
シロチドリを守る条例などがあれば、海岸への人の立ち入りを制限出来たり、他にもシロチドリの繁殖を妨げる行為にも規制が設けられたら、とても心強いと考えています。
この海岸を8羽4カップルが繁殖地として選び、これから9月までの半年間を過ごしていきます。
これからしばらくは、シロチドリの子育てを影ながら見守っていきたいと思います。
 
餌を探し脚を素早く動かしていたシロチドリの動画です。

 

 

 

2023年シロチドリの繁殖記録2

2023-07-29 18:40:36 | シロチドリ
7月に観察したシロチドリの記録です。


21日
磯にシロチドリの家族と思われる小さな群れがいました。


メスと幼鳥の姿があり、幼鳥は3羽いることが分かりました。
右から2番目が母鳥で他の3羽が子供達です。


オスは少し離れた場所で警戒中です。
写真を撮りながらシロチドリを数えてみたら6羽。
幼鳥3羽とオスとメスの家族ともう1羽の関係性が気になりました。


数を確認している間にコチドリの幼鳥が飛んできました。
奥に見えるシロチドリと比べると小ぶりな感じです。

23日
同じ海岸へシロチドリを探しに行きました。
前回と同じ場所辺りの植生で休憩中のシロチドリの群れがいました。


オスは踵をおろして座り、メスは目を瞑り寝入っているようです。
近くには3羽の幼鳥もいてそれぞれ休んでいました。
親鳥は疲れているようにも見えて、子育てが一段落してホッとしているのかもしれません。


少し離れた場所では別のメスが座って休憩中でした。
早速数を確認すると7羽いて、3羽の幼鳥を連れたシロチドリ家族と、幼鳥とメスでした。
2組の家族がいるとするなら、もう1羽オスがいるはずなのですが、周りを探してみましたが見つかりません。
どうしてオスがいないのか気になります。
恐らくオスが居なくなったのか死んでしまったのかと思いますが、家族連れのオスを頼って一緒に行動しているのかもしれません。
今まで海岸でシロチドリを観察していると、上空をとても警戒しているのです。
これは海岸へやって来るトビやカラスから危険を察知する為の行動だと思われます。
トビやカラスにとって毎年この時期に海岸へやって来るシロチドリは、その卵やヒナが餌となるからです。
オスはメスが通常3個の卵を産むと交代で抱卵します。
そしてヒナが孵化すると外敵から守るため、自分の危険を顧みず最前線で外敵の標的となるような行動を取ります。
本来ならこのメスと幼鳥1羽の家族は、オスとメスの番と幼鳥3羽だったのかもしれません。
トビやカラスは自分の家族の為に餌を探してシロチドリを捕食するので、その行為を悪だと思いません。
絶滅危惧種のシロチドリが生息数の多いトビやカラスによって、その数を減らしてしまうのはとても残念でなりません。
このままだといつかシロチドリの姿が見られなくなってしまいそうです。





2023年シロチドリの繁殖記録

2023-07-02 06:28:43 | シロチドリ

毎年7月中旬頃から海水浴場となる海岸でのシロチドリ達を観察しています。
6月4日に海岸へ行くと重機が入っていて砂浜の様子がすっかり変わってしまっていました。





最初にヒナを見たのは6月6日で2羽確認し、かなり大きく成長していましたが、まだ飛べない様子でした。


6月8日にはヒナの翼の近くに何かが付いていて、これが釣り針だとしたら上手く飛べるのか心配です。


6月20日には3羽で威嚇しているような不思議な追いかけっこしていたので、しばらく観察していました。
おそらく子育て中のオス1羽と番となったオスとメスです。
かなり長い時間追いかけっこしていましたが、子育て中のオスが諦めたようで、その場から居なくなりました。


番のオスが脚で穴を掘り求愛行動を始めると、メスが近くに寄って来ては離れる事を繰り返し、その後交尾をしました。
数日後には砂浜で抱卵する姿があり、今のところまだこの巣は孵化していません。


6月28日には親と2羽の幼鳥がいましたが、子育てが一段落したようでオスとメスがじゃれ合いのような威嚇のような行動を見せていて、繁殖の準備なのかもしれません。
繁殖シーズン中に何回卵を産むのか興味深いです。
この海岸では現在4組の番が子育て中です。
夫婦+幼鳥2羽、夫婦+幼鳥1羽、夫婦+ヒナ3羽、夫婦+卵という状況なので、海水浴場が開設されると卵やヒナが無事に育つのか気がかりです。
幼鳥はもう飛べるようになり安心できる感じですが、ヒナと卵を抱えた夫婦のこれからが前途多難なので、行く末を静かに見守りたいと思っています。