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南房総館山・なぎさの自然詩

南房総館山の自然や海での出来事を紹介しています。

ビーチコーミングを通して思うこと

2025-05-31 20:16:02 | ビーチコーミングを通じて思うこと
生まれた時から館山湾に面した海岸近くに暮らしています。
子供の頃は夏になるとよく浮輪を手にして海岸へ行き、真っ黒に日焼けしていました。
その頃は海岸へ行くと砂浜に打ち上げられているアメフラシを見たり、潮の引いた遠浅の海を沖に向かって行けるところまで歩いたりして遊んでいました。
成長するにつれて海岸へ行くことから離れてしまいましたが、海をいつも身近に感じながら暮らしていました。
2017年に今住んでいる所に引っ越してから、自宅近くの海岸でビーチコーミングをするようになりました。



貝殻等の漂着物2025/5/22

最初はタカラガイなど貝殻を拾っていましたが、ある時タコの入った薄くて白い貝殻のような物を見つけました。
それがアオイガイだと知り、こんなに美しい貝殻があるんだと凄く感動しました。
今まで気づかなかった新しい世界に気付くきっかけになった出来事でした。


欠けたアオイガイとタコブネ2025/5/26

そこから本格的なビーチコーミングが始まりました。
貝殻を探しながら、ゆっくりと砂浜を歩くと様々な生き物がいることに気づきます。
今頃の季節になるとウミソーメンと呼ばれるアメフラシの卵塊、砂茶碗と呼ばれるツメタガイの卵塊が波打ち際へと打ち上げられています。
生き物の卵に別名が付いているのは、それだけ人にとって身近なものなのだったと実感します。
満潮時の波が上げた線を辿るとたくさんの生き物との出会いがあります。
そこを歩く時、自分の前や後ろをカラスやハクセキレイが一緒に歩いています。
それを見てからは海岸にいる鳥に興味が出て来て、その中で春になるとコチドリが繁殖のために海岸へやって来る事に気がつきました。
その可愛らしい姿を見る内にバードウォッチングが海岸でのビーチコーミングと共に加わりました。


砂浜に座るコチドリ2025/5/26

そしてチドリ類の観察をしている内に愛着が湧き、毎年産まれるヒナ達の成長を見守る事がライフワークになりつつあります。
チドリ類は海岸の砂浜の上に直に卵を産み、ヒナが孵化するまでの約3週間抱卵を続けます。
孵化後は親鳥が給餌すること無くヒナ自ら餌を探し、海岸を動き回るのです。
チドリ類の餌となるものは、海藻などの有機物を食べる海浜性の生き物、海浜植物に集まる陸上性の生き物、磯に生息する生き物等です。
別の海岸ではシロチドリと言う、今では生息数が減り絶滅危惧種となってしまったチドリも砂浜で営巣しています。
シロチドリとコチドリの南房総での繁殖期は3月~9月ととても長いのです。
期間が長いのには様々な理由があり、一つは卵やヒナの捕食率が非常に高いことがあると思われます。
他の鳥類は一度の産卵でヒナの巣立ちまでが可能なのです。
しかしチドリ類は樹上の巣と違い隠れる場所が限られる為に、カラス、ヘビといった捕食者から見つかり易いのです。
卵の消失や全てのヒナが捕食されれば、チドリ類の親鳥は再び繁殖行動を始めて、恐らく繁殖期間中に2~3回産卵しているようなのです。
そして一番問題なのが繁殖する場所で海岸整備が行われ砂地や植生を改変し、繁殖に適した場所をチドリ類から奪ってしまう事です。
海岸整備は昔から行われていますが、小さな生き物が暮らす場所と知ってからは何とか最小限の作業で済ませられないかと考えています。
海中から波打ち際、そして海浜植物が覆う砂丘までの海岸で暮らす生き物達のどれか一つでも欠ければ、自然のバランスが崩れてしまうと思うのです。
大きな海岸整備といえば、子供頃に見ていた海岸風景は大きな堤防や河口の護岸ですっかり変わってしまいました。
子供頃に海水浴していた海岸は、今や有名観光地となり多くの人が訪れるようになりました。
人による活動がどれ程の自然を破壊し続けていて、どれだけの生き物が失われているのかを考えたとき、人として自分が償える事があるならば何でもしてみようと思うようになりました。
南房総の砂浜で子育てするシロチドリと同じく砂浜に産卵するアカウミガメは絶滅危惧種となっていますが、保護とはほど遠い現状です。
絶滅寸前のシロチドリやアカウミガメ、その他たくさんの生き物が暮らす海岸を守りたいです。
目に見えない小さな生き物を含めた、たくさんの生き物達が幸せに暮らせる世界になりますように。


館山湾のコチドリ 2025年観察記録2

2025-05-13 19:13:57 | コチドリ

館山湾南側の海岸でのコチドリ観察の記録です。

2025年4月30日に発見したコチドリの巣は5月3日に卵が3個に増えていました。


そして5月11日には卵が消失。
この辺りでは野良猫やカラスとトビを見かけるので、それらの動物の何れかに卵を捕食されたと思われます。


同5月11日に別の海岸ではコチドリ巣を発見し、卵を4個確認しました。
なんとも美しい巣で、卵を中心として貝殻と海浜植物が配置されています。
親鳥の愛情が作り出した芸術作品の様に見えて、とても感動しました。


その巣の近くを歩くとコチドリがどんどんこちら側へ近づいてきます。
コチドリはこんな風に自分達の卵を守る為に、外敵の注意を引く行動をしていました。
親鳥が自分を犠牲にして卵やヒナを守るのが、コチドリの特徴と言えるかもしれません。


同じ浜で少しビーチコーミングをしましたが、ウニの打ち上げが多く、棘の残る新鮮なウニが多数見られて、前日の荒れた海が想像出来ました。
左からウニ殻、オミナエシダカラ、カモンダカラ、ツメタガイです。 


上げ潮でたくさんの貝殻が打ち上げられていて、その間をコチドリが採餌していました。
4月30日発見のコチドリの巣は残念ながら捕食され卵が消失してしまいました。
5月11日発見の巣はどうか無事に巣立ちが出来るように願っています。









館山湾のコチドリ 2025年観察記録

2025-05-01 15:31:46 | コチドリ
今年もコチドリの繁殖時期をむかえ、館山湾でもコチドリの姿が見られるようになりました。
遠く東南アジアから3月頃日本にやって来るコチドリ達は、産卵に適した気温になるのを待っている様子です。
2025年の春は冬のような気温の低い日の多かった印象で、コチドリ達はどのように寒さをしのいでいるのかと気になっていました。
彼岸を過ぎた頃から少しずつ暖かくなり、ようやく春らしい陽気になった感じです。
そして昨日4/30に館山湾南側の海岸ヘコチドリ観察に出掛けました。

海岸へ流れ出る小川でコチドリが1羽で採餌中のところに出逢いました。
以前この辺りは雑木林が広がり、今頃の季節にはキジが現れていました。
私がキジの親子を見たのもこの小川です。
今は両岸にあった雑木林の内、宅地側がすっかり切り拓かれ、それ以来キジの姿も無く、鳴き声も聞こえなくなりました。


別の小川の岸辺にもコチドリ1羽を観察出来ました。


更にコチドリを探して歩いていると、すばしっこく歩くコチドリを見つけました。
しばらく観察しているとうずくまる仕草が見られ、抱卵しているように見えました。


近づいてみると卵がありました。
通常コチドリは4個の卵を産みます。
数日間かけて4個を産むそうなので、産卵途中の状態なのかもしれません。
卵を確認してその場を離れると、親鳥が戻ってきて抱卵を始めました。

別の浜ではオスのコチドリがいました。

オスのコチドリを見ていたら、こちらに向かって近づいてきたメスです。
海藻などの漂着物の間にうずくまり、こちらの様子をうかがっています。
この日は5羽のコチドリを観察出来ました。
館山湾南側の海岸では恐らく3組6羽のコチドリが繁殖している可能性があります。
今年のコチドリ達の子育てはどうなるのか、楽しみと不安が入り混じる感じです。
卵やヒナが捕食されることなく、無事に巣立ちが出来るよう願っています。
私が館山湾に繁殖のためにやって来るコチドリの観察を始めたのが2018です。
2018年は観察と呼べるようなものでは無く、遠くから双眼鏡でコチドリ親子の様子を見ている趣味のような感じでした。
そんな風に毎年コチドリを観察していく内に、様々な問題点が見えてきました。
繁殖に失敗する例を幾つか見てきて、何か自分に出来ることがないかと思っています。
まずはコチドリの存在を多くの人に知ってもらうことが大切だと考えました。
野鳥保護というと難しく思えてしまいますが、個人で出来ることを一つ一つ増やしていければと思っています。
その一つの活動の場として南房総うみはま研究会があります。
たくさんの方に海岸に暮らす生き物達を知って頂き、現状を理解して頂く事を目標に細く長く続けていけたらと思っています。

2025年4月30日館山湾観察記録

キアシシギ1羽


チュウシャクシギ2羽