生まれた時から館山湾に面した海岸近くに暮らしています。

貝殻等の漂着物2025/5/22
子供の頃は夏になるとよく浮輪を手にして海岸へ行き、真っ黒に日焼けしていました。
その頃は海岸へ行くと砂浜に打ち上げられているアメフラシを見たり、潮の引いた遠浅の海を沖に向かって行けるところまで歩いたりして遊んでいました。
成長するにつれて海岸へ行くことから離れてしまいましたが、海をいつも身近に感じながら暮らしていました。
2017年に今住んでいる所に引っ越してから、自宅近くの海岸でビーチコーミングをするようになりました。

貝殻等の漂着物2025/5/22
最初はタカラガイなど貝殻を拾っていましたが、ある時タコの入った薄くて白い貝殻のような物を見つけました。
それがアオイガイだと知り、こんなに美しい貝殻があるんだと凄く感動しました。
今まで気づかなかった新しい世界に気付くきっかけになった出来事でした。

欠けたアオイガイとタコブネ2025/5/26
そこから本格的なビーチコーミングが始まりました。
貝殻を探しながら、ゆっくりと砂浜を歩くと様々な生き物がいることに気づきます。
今頃の季節になるとウミソーメンと呼ばれるアメフラシの卵塊、砂茶碗と呼ばれるツメタガイの卵塊が波打ち際へと打ち上げられています。
生き物の卵に別名が付いているのは、それだけ人にとって身近なものなのだったと実感します。
満潮時の波が上げた線を辿るとたくさんの生き物との出会いがあります。
そこを歩く時、自分の前や後ろをカラスやハクセキレイが一緒に歩いています。
それを見てからは海岸にいる鳥に興味が出て来て、その中で春になるとコチドリが繁殖のために海岸へやって来る事に気がつきました。
その可愛らしい姿を見る内にバードウォッチングが海岸でのビーチコーミングと共に加わりました。

砂浜に座るコチドリ2025/5/26
そしてチドリ類の観察をしている内に愛着が湧き、毎年産まれるヒナ達の成長を見守る事がライフワークになりつつあります。
チドリ類は海岸の砂浜の上に直に卵を産み、ヒナが孵化するまでの約3週間抱卵を続けます。
孵化後は親鳥が給餌すること無くヒナ自ら餌を探し、海岸を動き回るのです。
チドリ類の餌となるものは、海藻などの有機物を食べる海浜性の生き物、海浜植物に集まる陸上性の生き物、磯に生息する生き物等です。
別の海岸ではシロチドリと言う、今では生息数が減り絶滅危惧種となってしまったチドリも砂浜で営巣しています。
シロチドリとコチドリの南房総での繁殖期は3月~9月ととても長いのです。
期間が長いのには様々な理由があり、一つは卵やヒナの捕食率が非常に高いことがあると思われます。
他の鳥類は一度の産卵でヒナの巣立ちまでが可能なのです。
しかしチドリ類は樹上の巣と違い隠れる場所が限られる為に、カラス、ヘビといった捕食者から見つかり易いのです。
卵の消失や全てのヒナが捕食されれば、チドリ類の親鳥は再び繁殖行動を始めて、恐らく繁殖期間中に2~3回産卵しているようなのです。
そして一番問題なのが繁殖する場所で海岸整備が行われ砂地や植生を改変し、繁殖に適した場所をチドリ類から奪ってしまう事です。
海岸整備は昔から行われていますが、小さな生き物が暮らす場所と知ってからは何とか最小限の作業で済ませられないかと考えています。
海中から波打ち際、そして海浜植物が覆う砂丘までの海岸で暮らす生き物達のどれか一つでも欠ければ、自然のバランスが崩れてしまうと思うのです。
大きな海岸整備といえば、子供頃に見ていた海岸風景は大きな堤防や河口の護岸ですっかり変わってしまいました。
子供頃に海水浴していた海岸は、今や有名観光地となり多くの人が訪れるようになりました。
人による活動がどれ程の自然を破壊し続けていて、どれだけの生き物が失われているのかを考えたとき、人として自分が償える事があるならば何でもしてみようと思うようになりました。
南房総の砂浜で子育てするシロチドリと同じく砂浜に産卵するアカウミガメは絶滅危惧種となっていますが、保護とはほど遠い現状です。
絶滅寸前のシロチドリやアカウミガメ、その他たくさんの生き物が暮らす海岸を守りたいです。
目に見えない小さな生き物を含めた、たくさんの生き物達が幸せに暮らせる世界になりますように。