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南房総館山・なぎさの自然詩

南房総館山の自然や海での出来事を紹介しています。

海浜植物の紅葉

2024-12-04 19:12:24 | 植物
12月とは思えないくらい暖かな日射しの海岸では、少し歩いただけで体もポカポカしてきます。
ポカポカ陽気の海岸ですが、海浜植物を見ると冬支度を始めているようです。

赤く色づき始めていたハマボッス。
この時期のハマボッスは砂浜に張り付くような感じで放射状に葉を広げていました。
これをロゼットと呼ぶそうで、ネットで調べたところ、開花した花を上から見た形を図形化したもののことだそうでフランス語のバラが語源だと知りました。

そして砂丘の中で一際目立っていた赤色の葉はイワダレソウ。
その隣りにはハマヒルガオが黄色くなっていました。

更にハマボウフウは黄色い葉が緑色の葉に混じってちらほらと見られました。

赤くこんもりとしたのはケカモノハシです。

海浜植物の覆う砂丘ではハクセキレイが何か虫を捕まえたようでした。
よく見ると顔が黄色くて、まだ成鳥に成っていない幼いハクセキレイです。

少し離れた砂浜には親鳥と思われるハクセキレイがいたので、1羽だけまだ親離れ出来ていないのかもしれません。

ビーチコーミングではウニと微小貝を見つけました。
5cmくらいのヨツアナカシパンと5mm程のマメウニの仲間。
満潮時の打ち上げラインにはたくさんの微小貝が見られて、時間の許す限り探していました。


海岸で過ごす時間はあっという間に過ぎて、気付けば強い風が吹き始めていました。
ウインドサーフィンがその風に乗っているのが気持ち良さそうに見えました。










イソギクと微小貝

2024-11-24 18:48:31 | 植物

秋晴れの南房総の海岸は心地良い北風が吹いています。
暖かな日射しの下で、イソヒヨドリのメスがぼんやりして日光浴している様に見えます。
そんな穏やかな雰囲気の海岸を歩いていると、あちこちに花が咲いていました。


薄紫色の小さな花を咲かせていたクコ。


イソギクの群落も満開を向かえていました。
今年の南房総は今の時期、イソギクの花があちこちの海岸を色鮮やかにしています。
イソギクは海岸の岩場等に育成する海浜植物で、太平洋側では千葉県以南から分布しているそうです。
キク科の花にはよく見られる頭状花序と言われる多数の小さな花が集まって1つの花となっています。


黄色くて丸い小さな花が印象的で、近づくと花の良い香りが漂っています。
この花には解熱、解毒、鎮痛、消炎等の効用があるとネットで知りました。
花の満開時期に採取して日干しにしたものを煎じて服用するそうです。
また、漢方処方の釣藤散や杞菊地黄丸にも配合されていると知りました。
イソギクやハマゴウ等の海浜植物には薬効のあるものが多いのは、もしかしたら厳しい環境で育成する事に要因があるのかもしれません。



更にマルバグミが実をつけていて、赤色が晩秋の海岸を彩っていました。


砂浜に目を落とすと、たくさんの小さな貝殻が見えます。
私の好きな貝殻のひとつのシラタマガイがポツンとあって、目に飛び込んできました。
上げ潮に乗って次々打ち上げられてくるような感じで、ひとつひとつ拾い上げていきました。


紅白の微小貝。
白いシラタマガイと赤いサラサバイとチグサガイです。
小さな貝殻を無心に探していると、気持ちが軽くなってきて充実感いっぱいになるのが不思議です。


休日の海岸にはたくさんの人が訪れていました。
その中には大型犬を3匹連れた家族連れが歩いており、よく見るとリードを付けていないようでした。
海岸は開放的で自由な空間なので、その人の素が現れる場所なのかもしれません。
海岸や他の自然環境では特別なルールは無いように思えます。
しかも砂浜は一見すると生き物もいない不毛の地に見えます。
しかし海岸には目に見えない小さな生き物達から鳥、海浜植物等のたくさんの生き物達が暮らしています。
その生き物達の事を思うと、海岸に行く時には謙虚な気持ちを持っていた方が良いのではないかと、私は感じています。











ハマゴウ 蕾から種子になるまで

2024-09-08 16:35:12 | 植物
ハマゴウは潮間帯からずっと離れた砂浜の奥や砂丘に群生している海浜植物です。
牧野植物図鑑によると、古名はハマハイと呼ばれていたそうで、浜を這うその姿からの命名かもしれません。
長い茎を砂地の上に這わせ、砂の中にも地下茎を縦横無尽に巡らせ、海岸に砂を堆積させる役割があります。
砂地の広い範囲を覆うように見える落葉低木で、緑色の葉からはとても良い香りがします。
そんな繁殖力の強いハマゴウなので、厄介な雑草というイメージを持たれて排除されやすい海浜植物でもあります。
例えば、旧アクシオン前の平砂浦海岸の砂丘に広がっていたハマゴウの群落が消失してしまいました。
重機により完全に排除してしまった為、そこは以前と比べてすっかり様変わりし不毛の地となりました。
その結果は強い南寄りの風が吹くと、海岸からの飛砂で道路の通行止めが度々起こっています。
人的な海岸環境の改変は一瞬で出来ますが、元に戻すには大変時間がかかります。失った後に初めてその大切さに気づくのでは、余りにも悲しい事です。
人が生まれる前からの長い時間をかけて創り上げた海岸を、これ以上人の手を加えず見守っていくことも大切なのかもしれないと思います。


ハマゴウの蕾。

紫色の花。


朝露に濡れた花。
ハマグルマと競うように全体が海浜植物で覆われた砂丘です。


若い種子。


熟し始めた種子。


種子だらけ。

花期が長いようで9月にも花を咲かせていました。
海岸という特殊な環境に適応してきた海浜植物の花の美しさを、沢山の方に知って欲しいと思っています。
春夏秋冬の海岸には、それぞれ季節ごとに花を咲かせる海浜植物があります。
ハマゴウは夏の花。
砂浜を歩く時、足元を見ると健気に咲く花がとても美しいです。



ネコノシタ(ハマグルマ) 蕾から種子になるまで

2024-08-09 19:02:55 | 植物
海岸に適した植物はその特殊な生息環境のために、海浜植物と呼ばれています。
波飛沫、潮風等の塩害や極端に水分に少ない砂浜、台風の接近時には強風を遮ることの無い場所が海岸です。
他の植物が育つには厳しい環境でも海浜植物は春から秋にかけて花を咲かせます。
夏の暑い盛りに花を咲かせるのがネコノシタ、別名ハマグルマです。
小さな棘のような固い毛が葉にあるため、それを触ると猫の舌のようにザラザラするので、それが由来となったそうです。
キク科キク亜科の植物なのですが草丈は低く、砂丘の上を這うように蔓を伸ばしています。
砂浜ではハマヒルガオやハマエンドウなどと競い合っている感じで、場所によっては砂丘一面を覆う程の群落になります。

青々と茂る葉の中に見える小さな緑色の蕾。
大きさは5mmくらいです。

2cmくらいの黄色い花は海岸に咲く小さなヒマワリのようです。


花が終わると種子が出来始めます。


小さな種子一つ一つが熟してくると、全体が茶色っぽく色づいています。


同じ株には花が咲き始めたものから種子になったものまで揃っています。
花期をずらす事で種の散布時期も長期間になるので、台風等で海岸の条件が悪い時をかわして種子を残すことが可能になります。
艶のある緑色の葉は肉厚で、水分をたっぷり含んでいるように見えます。
海岸は海水はたっぷりあるけれど、植物の成長に必要な水は極端に少ないので、このような形態なのかもしれません。
また葉の固い毛は表面積を広げ、寒暖差で生じる朝露を葉の表面にたくさん留めるのにも良さそうです。
厳しい環境だからこそ、独自に進化して適応してきたのが海浜植物なのだと思いました。
小さな植物が生き残るために花を咲かせ、たくさんの種子を実らせる姿は美しくて力強さを感じます。








7月の海浜植物

2024-07-28 15:15:24 | 植物
夏は海浜植物が花を咲かせ、海岸では砂丘を覆う葉の緑色の中に様々な花の色が混ざり合い色彩豊かです。

紫色の花を咲かせたハマゴウ。
海岸の砂丘の奥の方に群生し、その強い根は海岸の砂を固定する役割があります。
その根が生きていれば再生可能で、繁殖力がとても強い植物ゆえに厄介者扱いされてしまうのです。
海岸では草刈り機などで刈り取られた無残な様子をよく見かけます。
しかし、その種子はマンケイシ(蔓荊子)と呼ばれ、漢方薬では風邪の症状に効き、頭痛、神経痛にも効果があるそうです。
海岸にも人にも大変有用な植物だと思うのですが、一般的にはその事があまりよく知られておらず残念です。
個人的には真夏に潮風が運ぶハマゴウの香りが大好きです。


オレンジ色の大きな花のスカシユリ。
海岸の崖や岩場で花を咲かせ、オレンジ色の目立つ花はとても美しいです。
人が登れないような急斜面の崖で咲く花を見ると、スカシユリの生命力の強さを感じます。
他の海浜植物が進出出来ないような厳しい環境を選ぶという知性ある植物だと思います。


小さなヒマワリのようなネコノシタ。
別名ハマグルマとも呼ばれ、葉を触るとザラザラして猫の舌に似ているのが由来だそうです。
砂丘の手前から這うようにして全体を覆っている植物です。
波打ち際から砂丘を見た時に緑色に見えるのは、ほとんどがネコノシタの葉といってよいくらい勢いがあります。


熟したハマボウフウの種子。
花期の長いハマボウフウは夏にも白い花を咲かせていますが、春頃に咲いていたものは一足先に種がこぼれ落ちそうです。
こぼれた種は来年またこの場所で芽吹き、砂丘全体に広がっていきます。


海辺に咲くハマユウ。
近づくと潮風にのって花の香りが漂ってきます。
一説によると人によって海岸に植えられたハマユウがあるそうです。
白い花の美しさとその香りが人に好まれたのかもしれません。
南房総市の太平洋側の海岸砂丘には大きな群落があるのですが、それが人為的なものだとしたら残念です。
その他の例として別の海岸ではガサニアが植えられていたりします。
以前海岸でピンク色のガーベラのような花が一輪咲いているのを見たことがあります。
おそらく園芸種の球根が川から流れ着き、偶然にも根付いたものだと思うのですが、人為による植物の増殖はとても危険に感じます。
その場所に適応した植物を駆逐してしまうことにも成りかねません。
人が海岸の自然環境に手を加えてしまったものは、元に戻すことが難しいと思うのです。
また、それとは逆に海岸に適応した海浜植物が増えれば、ハマゴウのように排除されてしまいます。
海岸へ流れ着いた一つの種子から長い時間をかけて定着した様々な植物が、種子から種子へと引き継がれた海浜植物の歴史が現在の海岸の姿です。
もっと海浜植物が重要視されるようになれば、海岸に暮らす生き物の種も増えて来て、その先には豊かな海へと繋がっていくかもしれないと思っています。