
海岸特有の植物の総称を海浜植物と言いますが、ハマボウフウはその中の一種です。

海岸特有の植物の総称を海浜植物と言いますが、ハマボウフウはその中の一種です。
セリ科ハマボウフウ属で白い小さな花がいくつも集合して一つの花を形成しています。
低い草丈は強い海風が吹く海岸に適応した形状で、希に風の弱い場所では草丈はやや高くなっています。

花期は春から夏までと長く、花が終わると種子が出来始め、白い花が緑色の丸い種子へと変化します。

更に種子が熟し始めると緑色から赤色へ変わります。

更に種子が熟し始めると緑色から赤色へ変わります。

徐々に赤みを増していく種子は真っ赤になり、緑色の砂丘には点々と種子の赤色が目立っています。
海岸の砂丘は多くの海浜植物から作られています。

その一つはハマゴウ。

テリハノイバラなどたくさんの海浜植物の根や茎が海岸の砂を留め長い時間をかけて砂丘を作り出すのです。

潮間帯から続く緩やかな砂丘を覆う海浜植物の緑色の絨毯が見渡す限り広がり、心安らかになる風景です。
そんな海岸で先日(2025年6月12日)、シャベルを持っている3人の方を見かけて、話を伺う機会がありました。
東京都の成蹊小学校の職員の方で、小学生の生物観察のためにハマボウフウの根を掘るとの事でした。

その成蹊小学校の生物観察後(2025年6月14日)にどうなっているかと思い海岸へ行くと、砂丘には広範囲に大きな穴が幾つも掘られていました。
海浜植物で覆われていたその場所は大きな穴が掘られ、そこにあった貴重な植物は無くなり目を覆いたくなるほど酷い風景です。
たくさんの人が砂丘を歩いた為、海浜植物は何度も何度も踏み締められ弱々しく見えます。

ケカモノハシは根っこごと掘り返されて、そのまま放置されています。

ハマグルマは掘り返された砂丘の穴の隅で力無く顔を出しています。

ハマボウフウの種子は砂に埋もれて、苦しそうに見えました。
教育や研究と言った活動の為に、海岸を形成する砂丘を破壊し、植物の命を奪い、育成地の減少を招く行為が世の中では受け入れられています。
長い年月をかけて作られた自然の中で、特に条件の厳しい海岸で根付いた海浜植物を、生物観察のたった一日のために壊してしまうのは、自然の回復力も追いつかないのではないかと懸念しています。
砂丘一面に広がる緑色の絨毯はあちこち穴が開き、植物達が苦しそうに見えて悲しい気持ちになりました。
ハマボウフウは千葉県レッドリストのカテゴリーDの一般保護生物に指定されています。
以下、千葉県ホームページより引用
個体数が少ない,生息・生育環境が限られている,生息・生育地の多くで環境改変の可能性がある,などの状況にある生物.放置すれば個体数の減少は避けられず,自然環境の構成要素としての役割が著しく衰退する可能性があり,将来カテゴリーCに移行することが予測されるもの.このカテゴリーに該当する種の個体数を減少させる影響は可能な限り生じないよう注意する.
引用終わり
保護されるべき植物を自分達だけであれば環境に負荷をかけないと言う考えで、それぞれ全国の小学校が別々の海岸で、このような生物観察をしていたらハマボウフウを始め、多くの海浜植物が失われてしまう可能性があります。
何よりもたくさんの海浜植物に覆われた砂丘にシャベルを突き刺す行為、植物達を傷付ける事を子供達がどう感じるのか気掛かりです。