やがて
かわいそうという言葉は、言われる側に言ってもらいたい人を選ぶ権利がある。
あーあ、やっと文庫本になった。2月の新潮社文庫
いっき読みしてしまった。
相変わらずうまい。おのおの登場人物が活き活きしているのが、いい。
(まぁそれだけの事といえばそれだけなんだけど、それが大変なことなんだよね)
『風待ちのひと』 伊吹有喜(いぶきゆき) ポプラ文庫
ちょっと怠慢だけど文庫裏表紙の紹介文のコピペ
「心の風邪」で休職中の男と、家族を失った傷を抱える女。
海辺の町で偶然出会った同い年のふたりは、39才の夏を共に過ごすことに。
人生の休息の季節と再生へのみちのりを鮮やかに描いた、著者デビュー作。
第2作目の『四十九日のレシピ』が、NHKドラマや映画化になったらしいので、知っている人も多いのかな。
感想は上手く言えないけれど・・・
オイラこの手の良質作品みつけるの上手いよね。
『書店ガール2』 最強の二人
『書店ガール3』 託された一冊
本好き、書店好き、リアル書店好きにはたまらない三作品だった。
「平台」「面陳」とか「ボウズ」などの専門用語を覚えて嬉しい。
『書店ガール』では最初はすれ違った理子と亜紀が、ペガサス書房の存亡の時に「本屋が好き」という共通の想いで困難に立ち向かう
『書店ガール2』では、新たな環境で吉祥寺の書店を巻き込んだイベントを成し遂げる
『書店ガール3』では、吉祥寺の店長と兼務で東日本のエリア・マネージャーとなった理子は仙台の老舗書店のテコ入れに奔走し、その流れで吉祥寺店の東日本大震災のフェアを成功させる
理子のほのかな恋心と、亜紀のワーキング・マザーの苦労という背景のもと、「書店」の仕事で成果を出すところが、気持ちいいというかうらやましかった
(もちろん小説なんだけどね)
おいらはさ、この二人の生き方をみて、『不器用』って思った
出だしの結婚披露パーティーのバトルがあったからなんだけど
3作品を読むと『不器用』じゃなくて、あくまでも書店の、仕事の『理想』を追う前向きな気持ちが、現実とぶつかっているということがわかる
自分自身をおもうと、上司から求められるレベルさえクリアできれば、できなくても叱られることがないレベルを測る『器用』な性格のせいで、達成感のない人生を送ってきた気がする
だからさ、『不器用な君』へ
「不器用」+「真面目」+「前向き」は最強だと思う
頑張ってね(頑張らなくっていいよ、といっても頑張るしね)
『さらわれたい女』 歌野 晶午 (角川文庫)
「私を誘拐してください」と始まる作品
請け負った便利屋さん=俺=黒田=荏原代行サービスさんは、短時間ながらも用意周到に警察の逆探知をすり抜けて、まんまと身代金の奪取に成功する
もちろん、誘拐事件の一番のネックとなる人質の拉致が、人質自身の同意の元なんだからやりやすかったんだけど
でもすんなりといかないのは、お約束
他の作品と違って、「結論は読者よ」じゃなくてきっちり結末は『ある』
あと特徴は、自動車電話(ふるっ、知ってる?)車載兼用のショルダーフォン(なおさら知らないだろうね)やポケベルの時代が、なんか懐かしい。
ほんの一瞬で一人が一台携帯の時代に変わったもんだ、って作品
きっちりオーソドックスなミステリーな作品でした
『世界の終り、あるいは始まり』 歌野 晶午 (角川文庫)
父親が連続誘拐殺人事件の犯人が自分の息子である、という疑惑を持ったら・・・
その疑惑を自ら追及すればするほど息子が犯人である、という結論に近づく恐怖・・・
最後は、どれが真実で・・・ある意味オンラインゲームの複数End風の終わり方なんよね
日付に注意して読んでね、過去にさかのぼってリセット・別のストーリーに変わるから
どのエンドが好きか?って作品みたいよ
『春から夏、やがて冬』 歌野 晶午 (文春文庫)
う~ん、取り扱い注意
歌野晶午さんの本は意見が真っ二つに分かれる作家だと思う
こんな「どんでん返しアリ」派と、それが「どーしたん」派と
スーパーの保安責任者の平田は、万引き犯の末永ますみを捕まえた
いつもは容赦なく警察に突き出すのだが、ますみの免許証を見て気が変わった
昭和60年生まれ
それは平田にとって特別な意味があった
(文庫本裏表紙の紹介文)
ここからネタバレ注意、反転させて読んでね
平田の苦悩は親としてよく解る
子供を亡くす、妻も亡くす、自分も癌で余命いくばくも無い
自分はいい、妻も仕方ない、でも娘は・・・
携帯電話を使いながら自転車に乗っていた娘
ヘッドフォンをしながら自転車に乗っていた娘
そこでひき逃げ事故にあった娘
それを止められなかった自分の不甲斐なさ
言っても聞いてはくれないだろうとあきらめた親の不甲斐なさ
娘の自転車で帰宅したのも自分のせいだと責める妻を救えなかった不甲斐なさ
ところが最後にますみの告白
すべてますみとナカちゃんの偽装の結果だと知った時
でもまだ最後の最後がある
その時のますみの気持ちを思うと涙が出た。
だから取り扱い注意!!
ますみの気持ちに感情移入したら大変よ
ただ、ひとつ
「この間はサーセンシタ」
「それから、アイアタッシタ」
の舌足らずの言葉しか喋れないますみが、最後の告白が出来たのは不思議
整合性のなさは目をつぶろう
結末は結果は明らかにならない、読者それぞれに結論をゆだねられた、そんな作品
今度の外れは、読んだ本の話
外れで批判するような文章になるので、書名はいいでしょう
趣味の問題もあるでしょうし
初めて聞いた職業・ミステリー・金沢、ということで買ったのだけどガッカリ
事件が医者のいいとこのお坊ちゃまと、母子家庭ながらもお嬢様学校のお嬢さんの交際という話なんだけど
お坊ちゃんの母親は猛烈に交際に反対し、お嬢さんを別荘近くに呼び出して交際を止めるようにとの言い争いの末、母親は崖から転落しお嬢さんは服役する、という出だし
あの~、いまどき家柄の差で交際を反対し、まぁ反対されることがあったとしても殺人事件になる???
現実に今でもあったとしても、それが小説のテーマとなる?30年前ならともかく
この時点でオイラの趣味でない小説だな、と思ったけど読み進めたのはそれなりに面白かったんだろ
この後、この母親の旦那の自殺と、全然別である殺人事件が絡み合ってくるんだけど・・・
自殺と思った事件が他殺で、他殺と思った事件が自殺で・・・
でもね、事件の一番のカギとなる人物の登場が337/409ページで唐突に登場するというのがミステリーとして最大の弱点でしょう
謎解きを楽しむ人、騙されるのを楽しみたい人は読んだら失望します
『ひまわり事件』 荻原 浩 (文春文庫)
最近の良い子志向のせいか、選ぶ本が良質な爽やか系の本が続いている
この作品もほのぼの系
老人ホームと幼稚園が一体運営されたら、どーなるん?って話
老人の知恵と子供の生命力の相乗効果で、理想が生まれる!!!
という単純な話しでもなさそう
そりゃ、いろいろ個別具体的な問題はでるよね、それが面白い
園児は三世代同居なんてほぼ皆無な環境で育っているので、ジジババは異星人
老人は孫のいる人もいるけど、やっぱり異星人
異星人と異星人が、織りなすドラマ
冒頭のシーンを最後に上手くまとめてくれて、ほのぼの
『荻窪 シェアハウス小助川(こすけがわ)』 小路幸也(しょうじゆきや) 新潮文庫
地元の廃業した医院を改装し、男ふたりと女4人のシェアハウス生活を描いた良質一品です
登場人物は年代も個性も違うけど、基本的に大人で上手な付き合いで豊かなシェアハウス生活を楽しむ、って話し
大家の元医者のタカ先生が、多少説教?分析?解説?臭いのと、最年の佳人(よしと)君の子供っぽい言葉使いがきになったけど
悪い人もでてこない、ほんわりほのぼのしたい方にお薦めです
まぁ満足。特別過去の作品より「いい!」ということはないけれど予定調和
主人公のベラミーとダントの恋愛描写がいいね~
女性の視点からはどうなんだろう?
昔、むか~しの官能小説じゃないけど『わたし、ジュンとしちゃたんです』になるのかな?
サスペンス的要素は、登場人物が少ない分だけ予想がついた。
スーザンが殺されたバーベキューパーティーにいた人物が真犯人
犯人として獄中で殺されたアレンの弟レイ
スーザンの恋人だったダント
スーザンの妹のベラミー
スーザン、ベラミーの父親ハワード
ハワードの後妻オリビア
オリビアの息子、スーザンの義弟スティーブン
これだけなので想定内だった。
良質なワンパターン、次も楽しみにしよう。
(前作「殺人者は隣で眠る」を読んでいないのでまずはそっちから)
『嵐の淵で』 サンドラ・ブラウン (集英社文庫)
でました、サブサスペンスの女王、サンドラの傑作
616ページ中116ページ読んだところで、『わくわく』
例によって、質の高いワンパターン(になると思う)
男性不信のキャリアがある女と、純真ワイルドな男
最初は敵対、途中から接近でも離反を繰り返し最後は深く愛し合う
ってパターンな訳
例えは悪いかもしれないけど「男はつらいよ」「水戸黄門」
だから安心して読める
でも今回はこんな早い段階で、事件の当事者が出そろった感が・・・
どう期待を裏切ってくれるやら、楽しみよ~