
ブーム到来
- <noscript></noscript>スタッフとくつろぐ駒崎代表(中央手前、高梨義之撮影)
-
「僕もNPOをたちあげたいんです!」
そう言ってキラキラした目を僕に向ける若者が、最近とみに多くなった。僕が大学を辞めてフリーターになってNPOを起業したあの時に比べたら、隔世の感がある。
あの頃ITベンチャー社長を辞め、フリーターになってNPOをたちあげようとしていた僕に向けられた眼差(まなざ)しは、決して温かいものではなかった。良くて胡散(うさん)臭く見られ、悪くて憐憫(れんびん)。行った合コンで「仕事なにやってんの」と聞かれ、本当のことを言えず、「ボーキサイトを輸入して、アルミつくってる」と下を向いて答えたのが、嘘(うそ)のようだ。
今ではNPOやソーシャルビジネスに対する関心は高まり、社会的ステージも上がった。社会起業家なんて便利な言葉も生まれ、僕も起業家扱いしてもらえ、外国の大学や日本の省庁からも色んな表彰を頂けるようになった。今ほどNPOを起業しやすい時代もないだろう。
乏しいノウハウ
しかし、だ。じゃあこれからNPOを立ち上げようという若者に、そのノウハウを伝えられる人間はどれだけいるんだろう。起業家の世界は、色んなコンサルタントの人がいたり、起業家仲間のコミュニティがあったり、経営学者もわんさかいる。けれど、新参者のNPOやソーシャルビジネスの世界には、ビジネスの世界ほど潤沢にノウハウ本やリソースパーソンがうろついているわけでもなく、ともすれば精神論が跋扈(ばっこ)し、「働けど働けど我が経営楽にならず」という石川啄木的な情景が広がってしまうことになる。
- <noscript></noscript>病気で外に出られない子供の保育に使う風船(高梨義之撮影)
これを何とかしたい、と思った。10年近く前にNPOをたちあげ、それなりに潰れずに何とかやってきたおっさんの自分が、次世代のNPO経営者に残せるとしたら、たくさんの失敗談と、ほんの少しの成功話、そしてそこから抽出できる普遍的なフレームワークの数々だ。
そんなわけで、日本で類例のない、NPO・ソーシャルビジネスの起業と経営に関する実践的なノウハウの公開を行ってきたいと思う。マニアック過ぎて誰も読まないかもしれないが、どこかにバトンを渡す相手がいないとも限らない。そのまだ見ぬ後輩達に向け、精一杯僕の闘いの軌跡とそこから得た教訓達を綴(つづ)っていきたい。
- <noscript></noscript>病気で外に出られない子供の保育に使う風船(高梨義之撮影)