人材育成テクニックを語るカリスマ塾講師の坪田さん
偏差値30だった金髪ギャルが慶應大学に現役合格するまでの軌跡を綴った著書『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA)が話題のカリスマ塾講師・坪田信貴さん。これまで1200人以上の子供達を個別指導し、心理学を使った学習指導法で短期間で偏差値20~40アップを実現してきた。そんな坪田さんに、会社でも使える人材育成のテクニックを伝授してもらった。
――まず、部下を育てるにあたっていちばん大事なポイントとは?
坪田:指導において最も重要なのは「ビジョンの共有」です。一般的に上司は必ずといっていいほど「勝手に動いてはだめ」と組織のルールに縛り、ビジョンの共有をせずに一方的に指示し、部下を駒のように動かして次々と仕事を与えて、やる気を削いだり疲弊させたりしています。
そうではなく、“こういう世の中にするために貢献したい。そのための私たちの役割はこういうことで、まずこの段階からやらないといけないよね”とビジョンを細かく具体化して認識し合えば、大きな“絵”が見えるので、それぞれがそれに向かって自分の力を発揮できます。今がどれだけ大変であっても、自分がやるべきことだと認識できるのです。
――坪田先生は、信頼関係が成り立った後には厳しい指導もするということですが、上司が部下との信頼を築くためのテクニックとは?
坪田:【相談をする】、【長く見つめる】、【心の中で抱きしめる】です。相談する、つまり弱みを見せることによって、相手を認めていることになります。そして相手を長く見つめる、よく見るというのは信頼を築く上での基本です。会社では多くの場合、結果や報告書などをその場でやりとりするだけで、それまでその人がどう動いているかなどには目が向いていないですが、普段からその部下のことをよく見ているということを示すことで、信頼が得られます。
また、話している時に相手を“心の中で抱きしめる”ことによって、たとえ苦手な上司・部下でも自分の中から悪意は出しようがなくなります。そのためには、相手のいいところを20個書き出す作業をするといいです。ぼくは生徒に対する指導において、最初の3か月はとにかく相手と信頼関係を築くことに注力します。築いた上でなら、厳しいことを言ってもどれだけ叱っても、相手が愛情だと受け止めてくれるからです。
――上司が部下に相談するというのは具体的にどういうことでしょうか?
坪田:人と信頼関係を築くためにいちばん簡単な方法が、相談することです。相談するということは、相手の方に知見や経験がありますよということを暗黙のメッセージとして伝えているわけです。例えば、「釣りのことは君詳しいよね」と、趣味では部下を師匠にするというのは、部下も上司に認められていると思えますから関係を築く上でいいことです。年下の人や部下に相談すれば、その人はより能動的に動いてくれます。
――それがやる気につながるということですね。
坪田:上司が信頼してくれていると思うことができれば、部下も上司を信頼できるわけですよね。それも“好意の返報性”のひとつです。
――新入社員に対しては、今の若者は叱るとすぐ落ち込んで軟弱だとか昔はもっと厳しかったなどと言いがち。叱るのではなくて、褒めてあげるほうが効果的?
坪田:短期的に見るなら、どちらも変わらないと思います。叱ったら、部下は「はい!」と即座に動きますから。でも、しょっちゅう怒鳴っていると短期的にはすぐ動いてくれても、長期的には“あの上司は苦手”となり、上司が発する情報も拒絶するようになるので、聞いたことが頭に入らず、どんどんポカをやる部下になってしまう。しかも勝手にやると怒鳴られると思って、いちいち指示を仰がないと動けなくなる。
一方、長期的に見るならメリットが大きいのは叱らないほうです。最初に部下との信頼関係を築いて育成に力を注げば、それからあとは彼らが能動的にやってくれます。
――他に気をつけるべきポイントは?
坪田:指導する時には、『やってみせ、言って聞かせてさせてみせ、褒めてやらねば人は動かじ』がポイントです。これを気をつけるだけでガラリと変わります。「ビジュアル化」してあげることです。口で言うだけでは相手にイメージが湧かないので、その人の経験や常識によっては意図が全く伝わっていないことも。まず自分が先にやり方を見せた上で、ポイントを言って聞かせて、やってごらんと言うほうが相手もわかる。それをひとりでやらせてみて、できたら褒める、もっとやらせるというサイクルを作ることが大切です。
――部下を伸ばすには、厳しくしないほうがいいんですね。
坪田:自分の価値観を押しつけないほうがいいですね。叱られている状態では委縮して能力も活かされません。前提として信頼関係がなければいけませんが。だから信頼関係を築く最初の3か月は手間がかかります。それができていれば、叱ろうが言葉足らずでもあまり大きな問題ではない。あ・うんの呼吸になってきます。いざという時でも、部下はちゃんと力を発揮して乗りきってくれますよ。
【坪田信貴(つぼた・のぶたか)】
愛知県名古屋市にある青藍義塾代表取締役・塾長。IT企業など複数社の経営者、企業家でもある。TOEICは990点(満点)でネイティブ並みの英会話力を持つ。海外留学中に学んだ心理学を駆使した学習指導法により、生徒の偏差値を短期間で急激に上げることに定評がある。教え子には「偏差値40から東京大学に合格」「学年ビリから医学部進学」など異例のエピソード多数。夢は「世界的に有名になった教え子達の自伝に名前が載ること」。
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