武の道へのこころざし

大道塾の横須賀・湘南支部の責任者が、日々の活動に関する出来事や想いを綴っていきます。

指導者講習会に参加して

2024年02月12日 | その他の行事
2月11日(日)に東京都の新宿スポーツセンターにて、大道塾関東地区の指導者講習会が開催されました。


これまでには、選手向けの強化練習や、合宿稽古の他、各種大会と何度かの審判講習会が開催されるばかりで、いわゆる指導者講習会というものが開催されたことはなく、今回が初めての試みです。


40年以上の歴史を持つ大道塾が、指導者講習会を行ったことがなかったというのは、ある意味でとても驚きですが、良くも悪くも「屁理屈をつべこべ言わずにやってみろ!」、「戦ってみろ!」、「勝ち負けの勝負の中で見せてみろ!」というのが大道塾のスタンスであり、言い換えれば先代の東塾長の方針であったというのが私の感想です。


組織が大きくなれば理屈が増幅し、上級者、指導者、師範クラスの方々のうんちくが、幅を利かせてしまい、宗教団体宜しく、実際に通用するのかしないのか、そういった現実的な部分から乖離して、指導者を祭り上げる傾向にあるのが、こうした武道や武術といった歴史ある組織には見られるようになります。


競技スポーツや一般的な格闘競技であれば、勝って記録を出して、成績を残してなんぼの世界なので、実際の勝負の結果が大きくものを言いますが、武道団体では精神性が重要視されることもあり、指導者を奉る傾向にある為、実際に正しいのかどうか、本当に通用するのかどうか、といった実践性からかけ離れた理論が独り歩きをしてしまう傾向にあります。


実際にKOルールでの格闘経験のない(と思われる・・)空手の型競技の指導者から、「この技や、こうした体の使い方は、フルコンタクト空手でも使えるはず! この技術が身に付くまで頑張って!」的な話をされている方は、組手競技ばかりかフルコンタクト競技、もしくは格闘技経験がないのは、その人を見て、その動きを見れば一目瞭然で、どうにも白けてしまいます。


伝統派の空手の経験が長い方から、「今のはギリギリで止めたからよかったけど、本気で打ち込んでいたらこの前蹴り一発で悶絶をしていたよ!」という言葉。


打撃経験のない投げ技の選手経験者から、「間合いをグッと詰めて、組んで一気に抑え込んでしまえば、打撃競技なんて何の役にも立たない・・」などの言葉が。


打撃競技のエキスパートの選手から、「相手が組もうとしても、組む前に打撃が先に当たらるんだから、相手は中に入れず、組めるわけがないよ・・」。


これはすべて、私が若い頃に、直接聞いた言葉です。




今になってみれば、それぞれに言いたいところや意地を張りたいところは分かりますが、その多くを実地で経験した人間からすれば、何と言葉の軽い事か。




実際に見る力のあるものが、その動きを見てみれば、


多くの経験したものが、実際にその技を受けてみれば、


多くを経験し感覚的に物事がわかるようになったものが、その言葉や技術を肌で感じてみれば、


物事の正しさの真理が、はっきりと見えてくるものだと思う。




そうした意味で、理屈抜きの実体験を、実に多く積ませて頂けて、空理空論の屁理屈をぶっ潰してくれた東塾長には心から感謝をしている。


しかし、そうした部分が大きくなりすぎると、その実践経験、実体験から得られたノウハウというものを、なかなか人に伝えるのが難しくなるもの。


先人が死に物狂いで学び、会得した感覚を知るために、その人と同じ経験をすることはほぼ難しく、多くの人が学びえるものにはならない。


だからこそ、物事を整理して、安全に理論的に伝える方法が模索されてくるもので、今の大道塾は、フルコンタクト空手で作り上げた理論をぶっ潰して新しい形を作り上げた上で、その後、相当に疎かになってしまった理論や礼法、物事の考え方や心の作法的なものを新しく作り上げている時期なのだと感じている。


大道塾長として二代目にあたる長田塾長は、そうした部分にとても秀でたものを持っておられるのは、理論派だからではなく、実際の理屈をぶっ潰して作り上げてきた大道塾の技術体系をトップレベルで体現しながら、武道性の大切さを感覚的に肌感覚で感じられておられるからだと思う。


修羅場というほどの実践を数多く経験していて、今現在もその力を維持されているからこその説得力が、その言葉や体の使い方、体全体から醸し出されるインスピレーションに感じることができる。


正直なところ、長田塾長が語っておられる、少々難しい武術的な体の使い方などの理論は私には理解しかねる部分も多くあるが、「唯々、ガンガン戦ってみろ!」というこれまでの大道塾から、精神性や物事の考え方、捉え方といった、心の奥深くにある、考える力を養ううえで、とても良いきっかけを頂けていると思う。


これまでは「どうやったら強くなれるのか?」、「どうしたら試合に勝てるのか?」、といった部分ばかりを考えさせられていたところから、礼法にはどんな意味があるのか、どういう心構えで稽古に望めがいいのか、武道家として日常の心構えはどうあるべきなのか、といった精神面において、これまでにはこれほど多くの時間を割いて、大道塾の稽古に中で話を聞く機会が少なかったため、今の団体の在り方に対する、一つの存在意義を考える良いきっかけになっているような気がしています。






さてさて、前置きが長くなりましたが、今回は、姿勢や基本動作、物事の考え方に対する精神面の指導を長田塾長にご指導いただき、打撃を加藤支部長、投技を総本部の山崎指導員、寝技を能登谷支部長からご指導いただいた。


長田塾長は、団体の創成期にご活躍された方で、他団体の格闘競技も含めて幅広くご活躍されて、多くの成績を残してこられた団体の顔とも形容できる方で、その多くの経験と実力を含めて、右に出るものがいないほどの方です。


打撃指導の加藤支部長は、キックボクシングが今の世に流行る前の時代に、キックボクシングの世界タイトルを取得されており、大道塾内でも軽量級の選手でありながら、無差別選手権のタイトルを獲得されているレジェンドであり、私が直接教えを受けた師匠でもあります。


投げ技と寝技のそれぞれの指導者は、私の現役時代と重なる時期に選手として活躍をされた方々ですが、一人は柔道で学んだ技術を総合格闘技や大道塾の競技の中で存分に発揮をしてきた総本部指導員であり、一人は、大道塾としては初めての柔術と大道塾の両方の黒帯を持ち、大道塾と柔術の両方の道場の責任者として、日々稽古指導をされている支部長です。


今回の4名の指導者の方々の良さは、皆実践で十分な経験を積んでいる点であり、今現在もほぼ現役で自分の体でその技術を体現されており、上から目線でモノを言わず、色々な質問に対してもマニュアル的な回答ではなく、自分の感覚に照らし合わせながら正確な言葉を選んでいる事。


また、他の指導者の批判をせず、他の稽古方法の良さも認めつつ、自分の体の使い方であると前置きをしたうえで、背伸びをせず、自分が何でも知っていて何でもできる、と言うようなはったりを言う指導者とは対極の、実に丁寧な指導をされている点にあります。


前の世界大会で主導コーチを務めていた若手の支部長もそうですが、最近は指導者の質が実に高く、夏季合宿を含めて、総本部主催の催しには積極的に参加されることをお勧めします。




一方で教える側ではなく、学ぶ側の「学ぶ姿勢」というものが大切な視点となってきます。


今回、各支部の支部長や指導者層が参加されましたが、まだまだ人数が圧倒的に少なく、指導を受けるべきだと考えられる支部長や指導者層の参加がないのは、みなさんお忙しいところもありますが、催しに対する信頼性を上げることと合わせて、学ぶものの謙虚さの醸成も必須な点だと感じています。


一つの道場で、また一つの支部で指導的な立場に立つと、人の話を聞く力が弱くなり、忍耐力が弱くなり、慢心が生まれ、そこから抜け出す勇気がなくなるものです。


言ってみれば、自分の言うことに稽古生は何でも「押忍」と言って答えてくれて、自分の考えるとおりに物事を進めていく中で、その心は我がままになり、新しいものを学ぶ姿勢が弱くなり、独りよがりになってしまいます。


そしてその被害者は、その道場に所属する稽古生であり指導員の方々です。


そして実は、その独りよがりに陥った指導者が、ある意味で一番の弱者となり、被害者となるかもしれません。






今回、横須賀・湘南支部の中では、稽古に継続的に参加されている1級以上の方に、案内を配布しました。


支部内の稽古体系は、各道場共に、また、子供から大人まで各クラスともに、約半数は後輩の指導に当たるような指導体系を取っているため、自身の稽古以外に指導力の向上も学ぶべき技能として習得を目指していただいています。


さらに、昇段審査に臨む方にとっては、団体の指導者層から直接稽古指導を受けることで、学ぶべき必要な点が多く含まれている為、支部内では1級以上の方を対象に案内をしました。


各道場の指導者クラスと言えども、稽古場所では支部責任者の話を事細かく聞かねばならず、ある意味で若手に稽古指導を施しながらも、人から指導を受ける心の姿勢がしっかりと出来上がっているのは、やはり1級以上の上級者でもあり、今回の指導者セミナーでも、皆さん、今回の指導コーチからの話をしっかりと聞く姿勢が出来ていた点はとても評価ができます。


今回、横須賀湘南支部からは私を除いて7名が参加しましたが、ちょっと計算してみたところ、今回のメンバーは、経験年数が9年から38年の方々で、平均でみると21年の経験年数を有している我が支部の指導者層です。


今回の他支部からの参加者の中には、失礼ながらちょっと場違いな雰囲気の方も見られ、指導者としての資質に問題がありそうな雰囲気を持った方もおられたように感じましたが、概して、多くの支部長や指導者の方々は、聞きたいことにはしっかりと質問を投げて、積極的に質疑を行っていた様子です。


私と横須賀支部の湯川師範は、ある意味で支部の指導員メンバーの応援役という形での参加となりましたが、一人でも多くの指導者層がこうしたセミナーに参加することは、セミナー指導者の指導経験の積み重ねにもつながる為、古参の支部長や指導者の方々も、セミナーの受講者としての立場での参加をしていただく事も、大切な事だと思います。


武道家は謙虚でなければ、精神的な向上は望めなくなる気がします。




そうした意味でも、湯川師範や他の古参の支部長さん方には、自分の後輩にあたるセミナー講師の方々にも、積極的に質問を投げかけて、他の受講者が聞きたい細かい点に視点を充てることで、質疑の幅を膨らませる役割を担っていただけていたのは、他の指導者の方々も見習うべき点であると思いました。


今後こうしたセミナーは、昇段審査での基本や移動、投げ技や寝技の技能が基準に達していなかった方に向けての、基礎を学ぶセミナーとしての役割も担った形で、年に1,2回開催されることを望んでいます。指導者も定期的に実力のある方々で交代しながら行うのも良いかもしれません。セミナーでの指導を通して、他支部の指導者層に指導を施すことは、指導レベルの向上につながる気がします。


何はともあれ、今回は実りある良いセミナーだった思います。


最近は、新宿西支部の支部長さんがとても頑張って色々と企画をなされており、私としても応援していきたいと考えています。


今回参加されなかった方も、また機会があれば、ご参加いただければと思います。


参加された皆さん、関係者の皆様、大変お疲れさまでした。






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