武の道へのこころざし

大道塾の横須賀・湘南支部の責任者が、日々の活動に関する出来事や想いを綴っていきます。

フランス柔道会の魅力

2019年08月17日 | 武道の心


強さを目指す武道団体。


「武」の修行をする中で、継続的に稽古を行い、技を競い合う仲間達と切磋琢磨し、上に習い下の者を教え導き、人の輪の中で互いに強さを求めていく道場の中で、人としての道の大切さを一緒に学び、身に付けていくための学びの場として、「武道」というものが生まれたと思われます。


「武」を大切にするか、「道」を大切にするかで、その道場の在り方が問われると思いますが、単なる武術や格闘技ではなく、はたまた座学で道徳教育を教える場と異なり、稽古の実技の中で、武の道を通して多くの物事を学んでいくのが「武道」であり、一部の格闘技愛好家の集まりではなく、また先輩後輩の序列や段位やライセンス、自分の立場における優位な地位にふんぞり返って、威張り散らすような人の居場所でもなく、万人に必要な、万人が学ぶ価値があるものとしての「武道」の存在を、私は求めています。


一般スポーツ競技が盛んな現代において、目先の勝ち負けに一喜一憂したり、「誰が強い?」、「どっちが強い?」、とばかりに、興味本位で選手同士を戦わせて、その結果がまるでその人間の価値を決めるかのような感覚の競技性は、武道団体にはあまり似つかわしくない部分があるようにも感じています。

もちろん競技を通して得るものも多く、強い目標を持つことで、前向きな意欲を掻き立てることができ、技術を向上させていけるといったプラスの面が多くある事も事実ではありますが、全員がその競技にどっぷりとはまり込むことは必ずしも正しい事とは言えないと思います。



もし、


現役選手達ではなく、各武道団体の指導的立場に立つ皆さんが、毎年、もしくは一定期間ごとに大会に出場し、それぞれの方々の今の実力に優劣を付けられて評価されるようなことを強要されたとしたら?

もしくは団体ごとに、違う競技団体の方々と定期的に戦わされて、どっちが勝った、今度はこっちが勝ったと、自分自身が戦いの中に身を置いた状態で周りに評価されるとしたら、、、

果たしてそれほど楽しみながら戦い抜けるものでしょうか?




逆に言えば、子供であったなら、



まだ技も覚えていないあどけなさの残る幼い子供たちに、ただただ激しい攻防をさせて、疲弊する子供たちを尻目に、個人ごとに、また団体ごとに、どっちが勝った、負けたと、一喜一憂している姿を見てどのように思われますか?


文章でこのように書くと、「いやこれはちょっと可哀そうではないか??」

と思われるかもしれませんが、


しかしこれは、今の日本のスポーツ界や武道団体で現実に行われている事実です。



ちなみにフランス柔道界も、もともとは子供の全国大会も行われていたそうですが、現在では15歳以下の全国的な大会は行われていないそうです。


その理由は、

「指導者が試合に勝たせることに一生懸命になりすぎ、大人と同じように子供を訓練するようになってしまったため、肉体的、精神的に発展途上のこどもにとってマイナスであるということで、現在は行われなくなった」

という事だそうです。


逆に、年齢に応じた様々なカリキュラムが設けられ、子供たちの発育を考えた様々な取り組みがなされている様子です。


いくつかのフランス柔道の事情を掲載しているサイトをご紹介します。


■ 「フランスにおける柔道は、もはや国技である」――ミッシェル・ブルースさんの講演会を聞いて(その2) フランスの少年柔道


■ フランスで柔道が人気な理由は? 厳しい中にもヤワな部分アリ!


そんなフランス柔道界では、現在60万人の人が柔道を学んでおり、その中でも、11歳未満の子供たちが50%を占めているそうです。



フランス国内にも多くの人気スポーツがありますが、2016年の統計では、一番人気のサッカー、そしてテニス、乗馬に続いて、4番目に競技人口の多いスポーツが柔道だということです。

青少年に向けての誰もが学ぶ価値のある武道の実戦がなされているように感じます。

それでいて、フランス柔道界のトップ選手には、重量級の絶対王者と言われるリネール選手を始め、世界のトップクラスの選手がゴロゴロしています。

青少年の教育的な要素も実力も兼ね備え、それでいてしっかりとした、そして成熟した考えのもとに運営がなされていることがうかがえますが、翻って武道の母国である日本では、どのようなことが試みられているでしょうか?


いくつか、そうした試みを持って取り組まれている団体があり、私自身もそうした考えをまとめられた方々の書物にもいくつか目を通していますが、まだまだ大きなうねりにはなってはいないようです。


自分の団体、自分の道場、自分の生徒や、自分自身や自分の子供の事など、小さく小さく考えてしまいがちなところが日本武道の未成熟な部分かもしれません。


どんどん分裂を繰り返し、他団体との交流が行われない各種の空手団体などの様子を見ると、実に悲しいばかりですが、日本でもより成熟した試みがなされることを望んでいます。






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