5月14日のよく晴れた土曜日。会社でちょっと仕事をしてから抜け出し、バスに揺られて南津守のグラウンドにやってきた。なでしこリーグ2部の第9節「セレッソ大阪堺レディース」対「ノジマステラ神奈川相模原(以下、ノジマ)」を観戦するためである。セレッソは数年前に中学生のチームで結成され、基本的には高校生のチームである(今春より卒業した選手が5名アマチュア契約を結んでいる)。ノジマは親会社のノジマの資金力のバックアップを得て1部を目指すべく補強に着手し、昨シーズンはINAC神戸から田中陽子(2012年に日本で行われたU-20W杯で3位になった際に大活躍したMF。容姿が可愛いことでも人気。)らを獲得したが、1部入りを賭けた入替戦で後半の最後の最後に「これが決まれば昇格」というフリーキックを蹴ったのがその田中で、その美しい軌道は無情にもクロスバーを叩き、昇格を逃す結果となった。今年はその雪辱を果たすべく仙台からMF川島や浦和からDF和田を獲得して開幕から7勝1分の勝ち点22(しかも無失点)で首位を独走している強豪チームである。
「首位相手」「人気選手」「晴れた土曜の午後」「トップチームの試合日とかぶらない」という好条件がそろい、南津守の観客席(無料)には公式発表では500名超の観客がつめかけた。前半は辛うじて互角の戦いを見せていたセレッソだったが、数少ない好機をノジマの大型外国人GKに防がれて得点できず、後半になるとノジマの攻勢に防戦一方の戦いを強いられることになる。セットプレーから立て続けに失点し、0-2での敗戦となった。セレッソは上手なんだけど、やっぱりフィジカル勝負になると勝てないし、終盤になって足が止まってしまった。基礎体力のもんだいなのかどうかは素人の私にはわからないことであるが。
田中陽子は決して2部リーグに甘んじる選手じゃない、ということは少しプレーを見てよくわかった。背番号8を背負った彼女は相手に囲まれても動じないし、むしろドリブルでガンガン勝負していく。相手が集まってきたら川島(背番号7のMF。田中とはJFAアカデミー同期)ら周囲の選手に対してパスをさばき、どんどん前線に飛び出していく見ていてすがすがしいサッカースタイル。いろんなチームを見ていればわかるが、ボールを奪ったら誰に預けることが多いかというので中心選手が誰なのかが自然に分るものだが、今日の田中がそれであった。アイドル的なルックスに注目するまでもなく、非常に存在感のある選手になっていたと思う。
田中のプレーを見るのはU-20W杯以来であるが、あの大会のスイス戦で、国立のピッチで左右両足から1本ずつのFKを叩きこんだシーンはいまでも鮮烈に記憶している。彼女は現在U-23のカテゴリで代表に入っているようで、今後さらなる成長を遂げて「なでしこジャパン」に名を連ねてほしい選手の一人である。(ちなみに、個人的には現U-20代表の長谷川唯(日テレベレーザ)が近未来の「なでしこ」で輝く逸材だと思っている。)