筑波峯(TUKUBANE)

奈良学友会(奈良大学文学部文化財歴史学科同窓会)関東支部報

西山 要一先生の講演会

2014-10-25 14:53:27 | 日記
10月24日、さいたま市民会館うらわ で奈良歴史地理の会主催 西山 要一先生の講演会が行われました。



西山先生は、さいたまでの講演会は4回目ということで、今までと違った角度から「稲荷山古墳鉄剣」についてお話しくださいました。

稲荷山鉄剣が発見された年には、全国で古墳を中心とした遺跡を保存する活動が行われました。
埼玉古墳群も、このような公園整備の一環として保存作業が行が行われました。
公園整備を行うにあたり、埼玉古墳群の資料的価値を探るため、一部破壊されていた稲荷山古墳を発掘したそうです。
当初は石室が見つからず、作業は難航したようですが、調査のため後円墳部の縦にトレンチを入れたところ、盗掘に合わなかった石室が見つかり、その発掘の中で
鉄剣が発見されたそうです。
発掘から10年後、鉄剣のさびがひどくなり、より長期的保存をするために、当時西山先生が勤務されていた元興寺文化財研究所に持ちこまれました。
保存作業の下準備をしている時、どうも金で象嵌している部分があるようだということがわかりました。
そこで、当時ようやく使い始めたレントゲンで鉄剣を調べてみると、文字が刻まれていることがわかりました。
研究所では、文字の解析と読み下しを行いました。報道関係に発表する時間的猶予は約1週刊と考え、あわただしく準備をしたそうです。
しかし、手違いからか、ある新聞が夕刊で特ダネとして報道し、当初予定していた記者会見の一部は中止となってしまったそうです。
その後、西山先生は、当時最先端のアクリルによる鉄剣の固定作業、鉄剣から文字を読み取るためのさびの処理と細かい作業をされ、
今日われわれが目できるようにされたとのことです。



当初は数文字だけの作業を考えられていたようですが、学術的な価値があるということで、全文字復元をしたそうです。



その後、各地ですでに発掘されていた鉄剣、その後発見された鉄剣からも象嵌で細工された文字が見つかりましたが、稲荷山古墳の鉄剣ほど、
文字数や内容が豊かなものは少ないそうです。



また、鉄の成分を調べてみると、稲荷山古墳の鉄剣は中国で作られた鉄を用い、日本で象嵌細工されたことがわかりました。

稲荷山古墳鉄剣の保存作業は、その後の遺物保存技術の向上をの指針となり、遺物としても日本の古墳時代の地方勢力の在り方を知る有力な資料となったとのことでした。
実は、今回の西山先生の公園は、稲荷山古墳鉄剣の保存にかかわる裏話として、楽しく聞くことができました。
2時間あまりの講演がとても短く感じた楽しい講演会でした。


次回、奈良歴史地理の会の講演会は、
12月10日(水)
白市 太一郎先生
「前方後円墳終焉の意味するもの」
場所 さいたま市民会館うらわ 開場1時15分、開演2時の予定で行われます。
ぜひ、ご参加ください。