筑波峯(TUKUBANE)

奈良学友会(奈良大学文学部文化財歴史学科同窓会)関東支部報

「纒向遺跡発見の大型建物が語るもの」講演会

2010-12-25 09:45:22 | 日記
 12月21日、さいたま市民会館うらわ において、桜井市教育委員会文化財課 橋本輝彦先生による講演会が、
奈良歴史地理の会主催で行われました。「纒向遺跡に発見の大型建物が語るも」というテーマで行われた講演は、
実際に遺跡を調査した者しか語れない迫力のある内容でした。



 講演の内容をまとめると次のようになります。
 纒向遺跡は、奈良県桜井市にある弥生時代後期の大型遺跡です。時代は、AD200年から300年ほど、約100年間に
わたり突然出現し、突然消えてしまった遺跡です。遺跡の規模は、藤原京が出現するまでは、奈良地方では最大の
遺跡です。また、纒向遺跡には日本最古の前方後円墳である箸墓古墳があります。
 箸墓古墳は、最初の前方後円墳だけでなく、数々の特徴があります。それは、それ以前の纒向型の古墳のかぎ型の形を
受け継いでいること。埴輪など埋葬品が岡山県など他地域の特色を引き継ぐなど、各地域の複合的な要素で構成されている
ことです。 
 古墳に限らず、生活に結びついた土器も、近畿地方の土器よりも、関東地方や九州地方の土器が多く出土している。また、
製鉄の跡から、九州地方にみられる特徴的なふいごが出土しているなど、近畿地方の中で発展した住居跡と考えるより
各地から様々な文化や技術が集合して作られた集落と考えるほうがよい遺跡である。
 さらに、纒向遺跡の特徴として、農耕に係る鋤や鍬がほとんど発掘されていない。逆に土木工事にかかわるものが
9割以上発掘されているとのことです。
 また、最近発掘した大型建造物にも特徴があります。

 

 大型建造物は、東西方向に4棟が計画的に配置され建てられていることです。建物Aの両端を建物に沿って伸ばしていくと、
建物Bを囲む塀、建物Cの両端、さらには最大の建造物Dの中側の柱の線と結びつくのです。
 このことから、橋本先生は、纒向遺跡は多くの地域を集合してできた巨大権力に係る遺跡だと推論されていました。
 しかし、箸墓古墳は卑弥呼の墓とは言及されませんでした。
 私見を述べるなら、卑弥呼が活躍した時代に奈良地方に九州から関東まで広大な支配関係をもった連合国家が成立をしていた。
纒向遺跡は、その連合国家の都であった。さらに、中国の風水の影響を受け、東西を基軸として計画に作られた計画都市と言えるでしょう。
 現在、箸墓古墳の調査による新たな発見があるなど、古代の歴史に多くの方が関心や興味を持ってきています。このような
雰囲気の中で行われた橋本先生の講演は、発掘という現実的な考古資料から着実な歴史像を構築する面白さや楽しさを感じることができた
素晴らしい講演でした。
 橋本先生の講演のあと、橋本輝彦先生、奈良歴史地理の会代表 野崎清孝 奈良大学名誉教授を来賓に迎え、奈良学友会と奈良歴史地理の会
共催の懇親会を行いました。平日にもかかわらず参加者は48名でしたが、楽しい一時を過ごすことができました。ありがとうございました。


懇親会での橋本先生

※連絡

奈良歴史地理の会では、平成23年度講演会を「歴史が見えてくる・シリーズ」とし、下記のように行います。
是非ご参加ください。

平成23年4月17日(土)
「銘文・金石文にみる古代の人々のいのり」
 西山 要一 奈良大学教授

平成23年5月21日(土)
「長屋王家木棺をめぐって」
東野 治之 奈良大学教授

平成23年7月9日(土)
「炭素年代法について」
今村 峯雄 国立歴史民族博物館名誉教授
各回、会場は さいたま市民会館うらわ、2時から4時(開場は1時15分)
参加費1000円で行います。

なお、存知の方が多いと思いますが東野治之先生が学士院の会員になられましたことをお伝えいたします。
おめでとうございます。

本部の行事

平成23年3月14日(月)
第10回「悠歩の会」を実施します。
今回は、岐阜県教育委員会の協力、坂井秀弥教授との共催ー『天下布武』の史跡を訪ねるー
「岐阜城跡」「信長館発掘現場」の見学を予定しています。

平成23年5月14日(土)平成23年度第4回総会を奈良大学で行います。
なお、5月13日には水野正好名誉教授と、16日には酒井龍一教授による「悠歩の会」を計画しています。
合わせてご参加ください。

奈良学友会関東支部でも、平成23年度の活動として、懇親会や「悠歩の会」を計画しています。是非ご参加ください。