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音楽の話題を日々徒然に。

優駿

2013-01-18 21:24:33 | 小田和正/鈴木康博




私にとって特別な思い入れのある作家、宮本輝の不朽の名作『優駿』。
もう20年以上前に書かれたものですが、JRAの新CM用に小田さんが書き下ろした曲を聴いてこの小説を思い出し、本棚から引っ張り出しました。

ブランドCM「エマズウィッシュ物語」(歌・小田和正)



お正月にこのCMを観た瞬間、「これって『優駿』やん」と思いました。
もちろんストーリーは同じではありません。
CMの設定では、主人公は牝馬で、桜花賞を勝ったけれど3歳の有馬記念で古馬に負けて、翌年の有馬で雪辱する・・・といった内容でしょうか?(私が見た限りですので、詳細は違ってるかもしれません
対して小説の方は、小さな牧場で産まれた牡馬。スペイン語で’祈り(オラシオン)’と名付けられた仔馬がダービーを目指す物語を縦軸にして、その仔馬に関わる周囲の人間たちの人生を描いてます。

多種多彩な登場人物の人生を鮮やかに展開して魅せる、稀代のストーリーテラー・宮本輝の長編としては私的最高傑作です
今も年間で30冊くらい本を買いますが、その全て置いておけるスペースのない我が家では、ほとんどの本は年末に古本屋行きになり、「これは!」と思う本のみ「殿堂入り」と称して本棚に残します。この小説は平成元年に殿堂入りして以降、折に触れては何度か読み返している私の大事な物語です。(宮本作品の大半は殿堂入りしてますケド)

久しぶりに手に取ったら、こんなに黄ばんでました
(いちばん上の最近買った文庫本は真っ白です)





もう何度目かの再読でしたが、感動は色褪せませんね。
終盤の皐月賞のレースの描写は圧巻で手に汗握ります。芥川賞作家でありながら、エンターティメント性も兼ね備えている宮本輝の凄さがいかんなく発揮されてます。そして舞台はダービーへ。登場人物全ての”祈り”を背負ったオラシオンは・・・。このラストにはもう、「やられた!」って感じでした。

宮本小説の全てに言えることですが、物語の底に流れているのは、個々の人間が持っている”業”というものに対する峻厳さ。
なので、登場する人物は皆、それぞれ嫌な部分を持っていますし、世間に対する負い目を抱えてます。
そしてその不完全な人間たちを観る輝さんの眼差しはどこまでも優しい。まるで小田さんの歌詞そのものです。

♪僕らを越えて 別れを越えて
 悲しみを越えて 心を越えて
 命を越えて 時さえも越えて♪
 
聴けば聴くほど「小田さん、この小説を読んだに違いない!」と、勝手に確信しております(笑)
いつか、フルコーラスでこの曲を聴ける日が来たなら、その時にまた手に取るかもしれません。

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2 コメント

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Unknown (けーすけ)
2013-01-22 20:04:07
紹介ありがとうございます。

是非読んでみたいです。
図書館の予約枠いっぱいですが、次に予約入れます。
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けーすけさん (nanori)
2013-01-22 20:26:54
我が街ゆかりの作家ですので是非♪
図書館て予約枠があるんですね。知りませんでした(笑)
今読めるものしか借りない主義なので(←いらちで待てない)
返信する

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